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緑癒の悪夢 前編

 僕は眠りにつくと前にみた教皇と呼ばれる男の夢を見ました。


 彼は教会の祈祷室の青年の石像にお祈りをしていました。ですが、前見た時よりも彼は成長して幼さが無くなっているように僕には見えました。


「神よ。何故、勇者をこの世界に呼んだのでしょうか」


「えぇ、貴方様は私が話しかけても応えてくれないのは分かっています。貴方様が話しかけてくる時はいつも私に世界の脅威を知らせる時と愚痴を言いたい時だけ、なのに、どうして、今! 私達にとっての脅威には何も話して下さらないのでしょうか! 私達は貴方様を信仰してきました。私は、僕は! いつも! 貴方様は言いたい事を言って何も僕の話を聞いてくれない。僕の側近は勇者教によって殺され、僕達は邪教信者として弾圧され、皆は今、勇者教と戦っている! 聖騎士団長カーライル様は勇者教の兵と1人で戦っている。こんな僕を守るために、もう、僕には魔力が残ってません。もう、皆を癒す事ができない。魔力水も底をついてしまった。僕達はどうすれば良いのでしょうか、僕はどうして、貴方様の声が聞こえてしまったのでしょうか。僕は、もう」


 彼は涙を流していました。そして、僕に彼の感情が流れ込み怒り、憎しみ、後悔、そして、死への恐怖。


 どうして、この様な事が起こっているのでしょうか。僕には分かりませんでした。


 彼が涙を拭き取り、もう一度石像に祈りを捧げていました。


「僕はもう貴方様、いや、お前を信仰なんてしない。僕は自由に生きたかった。好きな子を見つけて恋がしたかった。みんなと一緒に追いかけっこして遊んでみたかった。剣を振ってみたかった。そもそも、僕はかっこいい剣士になりたかった。お前の声が聴こえるってだけで、僕の人生はお前に縛られ続けられた。僕はもう死ぬしかない、でも、最後に僕は全てを呪うことにする。貴方様を、勇者教の信者をそして、僕達を裏切った王国を全てが腐り切ったこの世界を。僕の生命力を使って呪おう。もう、大好きな人達は死んだ。僕にはもう何も残ってない」


「ちょっと!? 僕が仕事でいない間に何があったのさ!」


 急に頭の中に若い男の声が響き渡った。


「何があったかですか、私達の現状を見れば分かることでしょう!!! 貴方様はいつもそうだ、仕事が忙しい、だからこれやっといて、この世界を滅ぼす病が現れたからそれを浄化してほしい。とか、詳しいことを知らせずに調べ上げるのがどれだけ大変か分かっていますか!!!」


「待ってね。ちょっと確認するから、えっ、なんでこうなっているの? 僕が邪神? こいつら何言っているんだ? まって、僕病なんて作った覚えないし、勇者がこの世界に来れたのは僕のおかげなんだけど、勇者の力も僕のおかげだよ。なのに、どうして、僕が他の仕事で忙しかっただけでこんな事になっているんだい?」


「勇者教はいつしかゼス神なんて居ない、この世界を救ったのは勇者様。勇者様は私達を救った神と言い始めたのですよ。それで、私が神がいるなんて嘘をついていると噂が広まり、ゼスレス教は国からも弾劾され、私が助けてきた人々は助けた恩を忘れ、貴方様の信者を見つけ次第、殺そうとするほど凶暴化し、改宗したとしても、奴隷になり、人間ではなく道具として扱われ、私が他国で逃した者達もまた、同じ末路を辿っています。私はこの教会内に結界を張り、今まで勇者教の攻撃から耐え忍んできました。ですが、もう、魔力が底をつき結界が崩れかけています。私を守ろうと聖騎士達は皆、命をかけています。私はもう、死ぬのでしょうか」


「こんな事になっているなんて予想外だな。勇者取り違えたけど、無事に世界を救ってくれたから、まぁ救ってくれたからいいか程度しか考えていなかったけど、これは、流石に酷いな」


「勇者取り違えた? それは、初耳ですか」


「よし! 君は新たな勇者のパーティになる為に一回死んでくれないかい? そしたら、君が望む生活がおくれる様にしてあげるね」


 彼は崇めていた神に死んでくれと言われ絶望しました。


 何ですかこの神は!!! クソすぎる!!! 主人様だったらそんなこと言いませんし、僕達と共に戦ってくれます!昨日なんて僕達を守る為に1人で強敵と戦い、勝利、ましてや、敵だった者達を受け入れ、仲間を増やすと言う、主人様はとても懐が深いのです。僕はお前のためなんかに死んでたまるかって思いますよ!!! こいつの声聞くと、イライラしてきますね。


「貴方様は僕が死ぬことを望むのですね」


「死んでもすぐに他の生物に転生する様に手配しとくから、大丈夫だよ。そうだ、君は空を飛びたいって考えていたよね。それなら、空を飛べる生物を転生先に考えておくよ」


「僕は、死にたくなんてない! お前のせいで僕の人生はめちゃくちゃだ!!! 家族に売られ、友達なんていない、そんな僕を助けてくれた聖騎士、カーライルは1人で大勢と対峙しているの言うのに、僕は、なんで、彼に守られてばかりなんだ。僕は、ぼくはみんなが平和で楽しく暮らせる世界を望んでいただけなのに!!!」


「そんな事を言われても、今僕がこの世界に干渉したとしても勇者教を止めることはできないしな。僕だってこんな事を言いたくないさ、僕の声を聞ける人間なんてとても貴重だし、僕の愚痴を他の神達に聴かれない最高な話し相手な訳で、その、僕にとって君は友達みたいな存在なんだ。だから、これからの君の人生は君が自由に選択できる様にしてあげる」


「友達なのによく死んでくれなんて言えますね」


「怒らないでくれよ、僕だって出来る事なら君を助けてあげたいさ、でも出来ないんだ。雷を勇者教全員に落とすのかい? そんな事をしたら、僕はまさしく邪神になるじゃないか、それとも、君がよければなんだけど神界へ来るかい? 仕事は多いが、娯楽が沢山あって楽しいよ」


「貴方の愚痴を聞いていしまっているので、神界なんて行きたくないです」


「それなら、一つしかないだろ」


「分かりました。僕は死にます。ですが、命を賭ける分、転生した僕の願いを何でも聞いてください!」


「いいよ。僕と話す事ができたら、君の願いを叶えられるだけ叶えてあげるよ」


 神と話さえできれば、神の力を使って願いを叶えられるのですよね? この夢の方が僕の前世なのでしたら、人間となり主人様の夫になれると言う事なのではないですか!!!


 腹が立ちますが、僕が主人様と結ばれる為には主人様と同じ種族になる事が必須。そして、この神は全ての願いを叶えてくれると言っています。死にたくないけど、死んであげるのですからそのぐらいはやってもらわないと困りますね。


 あっ、でも、神と話をするのはどうしたら良いのでしょうか?

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