凪さんからの贈り物
私は、ネルガル君とライネル君に特別任務をお願いし、現在、凪さんにお別れの挨拶をしに向かっているところなのですが、凪さんと離れたくない! まだ、2日しか会っていないのですよ! なんで、離れないといけないのでしょうか。はぁ、こういう事になるなら早めに魔王軍を辞めておけば良かった。でも、魔王様には恩がありますし、友人もいます。それに、私がいなくなれば下の者達が過労で死んでしまう可能性もありますし。それを考えると、辞めたくても辞められなくなってしまっているのですよね。はぁ、でも、辞めたい。
魔蟲の洞窟の入り口に着くと凪さんはクティスの頭を撫でていた。なんで、クティスばっかり凪さんに甘えられているのでしょうか。私とクティスは同一の存在。私を撫でてくれたっていいじゃないですか! クティスに嫉妬なんてする必要がありません。クティスが仲良くなればこの私と仲良くなったいう事。クティスどんどん凪さんに甘えなさい! でも、やっぱり凄く羨ましい。
「凪さん、クティスばかり撫でるのではなく私も撫でて欲しいのでますが」
変態的な行動を反省したばかりですが、こればっかりは黙っていられません。
「はいはい、これでいいですか」
凪さんは暖かく柔らかい手で私の頭を撫でてくれました。やはり、凪さんは私にとって心の癒しになる方なのですね。はぁー、癒される。
凪さんに頭を撫でてもらっている最中に一人の兵士が駆け寄ってきました。
「イデア様! 帰還準備が整いました!」
「え? もう終わったのですか?」
「はい! いつでも帰還できます!」
「1時間ほど休憩してから帰る事にしましょう」
「承知いたしました。皆にそのように伝えてきます」
兵士は他の兵士に伝えに向かいました。
皆は早く家に帰りたいのですね。その気持ちわかりますが、それでも、準備早すぎませんかね!
「あと1時間しか凪さんに甘えられないなんて」
「いや、1時間も甘えられたら私が困るんだけど」
「凪さん! 仕事が終わり次第すぐに貴方の元へ戻りますので私を待っていてくださいね!」
「ちょっと聞いてもいいかしら?」
「はい! どうかなさいましたか? ハグしますか?」
「ハグしないわよ。その、魔王軍って遠くの人との連絡手段ってどうしているのかしら?」
「それは伝書鳩を使って手紙のやり取りをしています」
「伝書鳩ね。それって、手紙が来るまでどのぐらい時間がかかるのかしら?」
「ここから、魔族の国だと5日程度でしょうか」
「そうなのね。それじゃあ、貴方にこれをあげるわ」
凪さんはそういうと、懐中時計を私に渡しました。懐中時計のケースには三日月が描かれ、月の周りには7つの魔石が散りばめられていました。まさかの、凪さんからのプレゼント! なんという事でしょうか、私が凪さんにプレゼントを贈ろうと考えていたのに、凪さんから私が渡すよりも先にプレゼントをもらってしまいました!!! つまり、凪さんは私の事が好きなのですね! それなら、凪さんに今渡せるプレゼントは私の体のみ、凪さんに私を受け取ってもらいましょう!!!
「凪さん、ありがとうございます。代わりにこの私を貴方にプレゼントをします!!! 受け取ってください!!!」
「いらないわよ。これは通信機よ。あっ、時計としても使えるから安心してね」
「通信機? とはなんでしょうか?」
「遠くにいる人と話す事ができるわ」
「それって、私が魔王軍に戻ったとしても凪さんと話す事ができるのですか? 伝書鳩で手紙を書かずに?」
「えぇ、そうよ。試しに一回使ってみようか」
凪さんはそういうと私の懐中時計のケースに描かれた三日月を指で押すと半透明の白い絵が出現したのです。
「これは、どういう事でしょうか?」
凪さんは魔石を作り出すと私から100歩ほど離れました。
「凪さんどうして、私から離れるのですか!」
「イデアさん、そこでじっとしてて」
凪さんはそういうと魔石から私と同じ半透明の白い絵を出していました。これは、どういう事なのでしょうか? 私は半透明の白い絵を見つめていると、急に白い絵から凪さんの愛らしい顔が現れたのです。
「凪さんの顔がでた!!!」
私が驚くとクティスが走ってきました。
「ガウガ?(どうしたの?)」
「クティス見てください、懐中時計から凪さんの顔が現れているのですよ」
「ガルガ!(本当だ!)」
すると、凪さんの絵の口が動きだし、凪さんの声が懐中時計から聞こえてきました。
「どう、私の声聞こえてる?」
凪さんの絵は手を振っていました。
「えっ、はい! 聞こえています!!! あの、これはどのような魔法いや、魔道具なのですか!!!」
「だから、言ったじゃない、遠くにいても話せす事ができるって」
「これを使えば凪さんとの話し放題という事ですね!」
「それじゃあ、一回止めてみるからそっちから連絡してきて」
「えっ!? 凪さん! 連絡してとは」
凪さんの顔の絵が無くなり、白い絵も出なくなりました。
「凪さんはさっき、三日月の絵をこう、指で押して」
懐中時計のケースに描かれている三日月を押してみました。すると、三日月の周りに散らばっている魔石が光だし、さっき現れた白い絵が出現しました。そして、白い絵からまた凪さんの顔の絵が現れたのです。
「ちゃんと動いているわね。懐中時計の使い方これでわかったかしら?」
「はい! 三日月を押せばいいのですね!」
「私の声も聞こえやすいかしら?」
「はい! 凪さんの美声が時計から聞こえてきます!」
凪さんは私の元へ戻ってきました。
「連絡するのに魔力が必要なので、この三日月の魔石が7つ光ったら私にいつでも連絡できるようになります。あと、緊急時にどうしても私に何か伝えたい場合は文字盤の真ん中を押してください。そしたら、魔石が7つ光ってなくても連絡できるようになりますから」
「7つの魔石が光れば凪さんと話せるのですね!」
「1日に1つ魔石が光るので7日経ったら連絡できるようになりますよ」
「毎日連絡したい場合は文字盤の真ん中を押せばいいのですね!」
「それは緊急時の用なので、毎日は連絡できませんよ」
「でも、凪さんなら毎日連絡する事だって出来るはずです。なのに、どうして7日待たないといけないのでしょうか」
「それは、その、遠くに行けば行くほど連絡が難しくなるので仕方ない事なんです。文字盤の真ん中は緊急の時でしか使わないでくださいね!!!」
「そう言われましても、私は毎日凪さんとお話ししたいです」
「それなら、この懐中時計は返してもらいましょうか」
「返したくありません! 分かりました。我慢します!」
「大切に使ってくださいね」
「はい! ありがとうございます! それにしても、この魔道具は素晴らし道具ですね。ドーレーラムさんが見たら仕組みを知りたいと、面倒な事になりそうですね」
「ドーレーラムさんって確か、八翼の最後の人よね?」
「はい、魔道具管理局の局長なので珍しい魔道具には目がなく、人形集めが趣味の変わったドラゴンですね」
「そうなのね。まぁ、これで何かあったら連絡してください」
「はい! こんな素敵なプレゼントを貰えてとても嬉しいです! やはり、今私が渡せるプレゼントは私の体しかないのでさぁ! 凪さん! 私を受け取ってください!!!」
「クティス私を守って!」
「ガウル!(はーい!)」
クティスは私の頭に噛みつき、頭から大量の血が流れてきました。
「クティス痛いですって!!!」
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