朝ご飯
小屋の中から魔王軍の兵士達の悲鳴が響き渡っていた。
私はというと、大きな机と人数分の椅子作っていた。
「よし、これでいいわよね」
家から紫水が眠たそうに歩いてきた。
「起きたら主人様が居なくなってて〜、俺びっくりしたよ〜」
「紫水ごめんね」
「謝らなくていいよ〜。それにしても〜、机と椅子どうしたの〜?」
「これから、魔王軍の人達と話し合いをするのよ」
「分かった〜、俺も参加してもいい〜?」
「えぇ、皆んなで参加してほしいわよね。灰土は無理だけど、紅姫にも来て欲しいわよね」
「母さんに言って紅姫さんに思念送ってもらおうか〜」
「お願いしてもいいかしら」
「了解〜。灰土はいつになったら羽化するんだろうね〜。まぁ〜、蛹の状態の灰土面白いんだけどさ〜」
「そうよね。本人も早くでたそうにしているのだけどね」
「母さんに話してくるね〜」
「よろしく」
紫水は家でまだ寝ている黄結姫の所に向かった。
魔王軍の人達が泊まった小屋からゾロゾロとまだ眠たそうな魔王軍の人達が出てきた。ライネルは緑癒に引っ張られながら小屋から出てきた。
「ほら、話し合いするみたいなので、シャッキとしてください!」
「お前は俺のオカンかよ! なぁ、俺まだ毒状態なんだけどよ、いつになったら治してくれるんだよ」
「貴方の場合は自然治癒ですね!」
「治してくれねぇのかよ! 朝になったら治ってるって言ってたじゃねぇかよ!」
「貴方の身体の治癒力が私が予想していたよりも弱かったっていう事ですね」
「魔人さんおはよう!」
「おう、花茶って言ったか、昨日は俺の分まで食べてくれてありがとうな」
「どういたしまして! 緑癒お兄ちゃん、魔人さん治してあげてよ」
「仕方ないですね。ライネルさん、花茶ちゃんに感謝してくださいね」
緑癒は緑色の鱗粉をライネルに振りかけた。
「まじかよ、もう気持ち悪くねぇ。しかも、身体のだるさもなくなりやがった」
「ほら、花茶ちゃんにお礼言って下さい」
「花茶、本当にありがとうな。あと、緑癒も俺を治してくれてありがとう」
「どういたしまして」
「うんうん! これから、話し合いするのに気分悪かったら参加できないからね!」
「お前も話し合い参加するのかよ」
「花茶、難しい話よく分からないけど、みんな参加するみたいだから参加するの!」
「俺も難しい話には入りたくねぇな」
小屋から1番最後に出てきたのはイデアとクティスだった。
「凪さん! 全員起しましたよ! 褒めてください!」
イデアは私を見るなり、飛びついてきた。
「はいはい、ありがとうございます」
なんだろう、彼に抱き付かれるの慣れてきたわ。
「すみません、まだ私達の方が集まりきれてないので椅子に座って寛いでいてください」
魔王軍の人達は各々椅子に座った。
『ねぇ、藍介、紅姫が来るまで時間がかかると思うから朝ごはん用意してあげましょうよ』
『えっ、それは、自分達でやらせればいいのでは?』
『そうだけど、これから仲良くなる為にはこっちから歩み寄りをするべきだと思うのよ。それに、恩を受けた相手に横柄な態度はしないと思うのよね。恩を仇で返してきたら叩き潰してやればいいのよ』
『主人様、分かりました。こういうことになるかと思い、朝方、花茶と一緒にお米をとりに戻って良かったです。おにぎりでしたらすぐにお出しできますよ』
『藍介は本当に頼りになるわね! 藍介偉いわよ!』
『あっちょっと、主人様、そんなに撫でなくても、お米持ってきますね。花茶、すみませんがお米を運ぶの手伝ってくれませんか』
『はーい! 花茶おにぎり作るー!』
『二人ともいってらっしゃい』
私は椅子に座っている魔王軍の人達に朝ご飯が欲しいか聞いてみた。
「えーと、朝起きてお腹減っていると思うので、こちらで、朝ご飯を提供します」
「朝飯が食えるってことかよ」
ライネルが食い気味で反応した。
「でも、昨日のスープなんじゃ」
ネルガルはスープのあの味を思い出し顔が真っ青になっていた。
「あれは、もう、食べたくない」
兵士達も昨日のムカデスープなんじゃないかと疑っていた。
「食べたくないなら食べなくて結構なので」
「私は凪さんの手料理が食べたいです!」
イデアは相変わらずだった。まぁ、藍介1人に全員分のおにぎり作るのは大変だから、私も手伝ってあげようかな。
10分程度で花茶と紫水が大きな米びつを背中に乗せて戻ってきた。その後ろを藍介と黄結姫が歩いていた。
「お米を2升炊いたのですが、足りますかね?」
「それぐらい、あれば足りるんじゃない?」
私は米びつを新しく作った机に置き、私と藍介、花茶はおにぎりを作り始めた。
藍介は、お椀二つを使いお米を入れてフリフリしながら丸いおにぎりを作り、花茶もそれを真似をしていた。私は、水の魔石を出して手を洗い、熱々のお米を両手で握った。
お皿には沢山のおにぎり、魔王軍の人達は今すぐにでも食べたそうにしていた。
「凪さん、私もお手伝いしましょうか?」
私がおにぎりを握っている時にイデアが背後からやってきた。
「先に一個食べます?」
「よろしいのですか! それでは! いただ‥‥はぐぅ」
私は握りたての熱いおにぎりをイデアの口に押し込んだ。
「凪さんの手料理、しかも、凪さんが私に食べさせてくれるなんて、はぁ、凪さん、私と結婚」
熱々のおにぎり攻撃、効かなかったか。
「しません」
私は黙々とおにぎりを握った。
おにぎりを作り終え、魔王軍の人達におにぎりを振舞った。
魔王軍の人達は一斉にいただきますと言っておにぎりを頬張り始めた。
「それ、花茶が作ったおにぎりだよ」
「花茶うめぇじゃねぇか! めちゃくちゃ、うめぇ!!!」
ライネルは半泣き状態で丸いおにぎりを食べていた。他の人達も嬉しそうにおにぎりを食べてくれた。
「ねぇ〜、魚君〜、水槍出してよ〜」
「俺はネルガルだって! たっく仕方ないな水槍」
ネルガルは手から水で出来た槍を作り出して紫水に渡した。
「ありがとう〜、それじゃあ〜、いただきま〜す〜」
紫水は水槍を食べ始めた。
みんながお腹いっぱいになった頃に紅姫と白桜、青雷が来た。
これで、揃ったわね。よし! 話し合いをしましょうか!
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