野宿は嫌よね
イデアの奇行から逃げることに成功した私は、焚き木の前で寛いでいる藍介達に話をした。
「イデアという人はとてつもない変態なのですね。主人様、あの男には気をつけてください! それか、私がお側にいましょうか?」
「いやいや〜、藍介じゃあ〜、獣君から主人様を守れないから俺が〜、主人様の側にいるよ〜。主人様〜、今日は一緒に寝ようね〜♡」
「花茶も主人様守りたい!!!」
「私も今日は主人様のお側にいたいです」
「僕はまだ回復しきれていない人達の看病があるので、皆さんに主人様の護衛お願いします」
「家に戻るのも面倒だし、ここに新しい家でも建てましょうか」
私が藍介達と話していると、真っ青な顔をしたライネルが這いつくばりながら私達の会話に入ってきた。
「おい、家を建てるってどういう、げぼぇ」
「魔人さん大丈夫!? 起きろー!!! 緑癒お兄ちゃん、もうそろそろ治してあげたら?」
花茶はライネルの頭をベシベシと叩いていた。
「彼はたった1杯しか食べていないので、1番長く苦しんでもらわないと他の方達に示しがつきません。そうそう、彼は体が丈夫なので死にはしませんからご安心を。彼をこのまま放置したら、もしかしたら、毒耐性が身につく可能性がありますね。だから、ファイト!」
「は、はやく、治して、くれ」
「緑癒さん、お願いだライネルを助けてください」
ネルガルは緑癒に頭を下げたが、緑癒は拒否した。
「嫌です。まだ、彼は苦しむべきです」
「ライネル、すまん、がんばれ!」
「くそぉがぁ」
「魔人さんファイトォー!!!」
あらあら、普段の緑癒ならすぐに治してくれそうだけど、相当怒っているわね。まぁ、怒られて当然の事をしたから自業自得よね。でも、外で野宿は可哀想よね。魔王軍の人達にも家を建ててあげようかな? 人数多いし、旅館作ってみる? そしたら、温泉も作ってもいいわよね! 露天風呂、いいかも知れないわ! よし! 旅館を建てましょう!!!
私は洞窟の入り口の左側に瓦屋根の家を建てた。もちもん、魔王軍の人達は驚いていた。
「はぁあ!? 家!? えっ!? はぁっ!? えー!?」
ネルガルは突如現れた家を見てとてつもなく驚いていた。他の魔王軍の人達は驚きすぎて口がポカンと開いていた。
「まじかよ。あのよ、いつまで俺の頭叩くんだ?」
地面に倒れて花茶に未だにベシベシと叩かれているライネルも驚いていた。
「あっ、魔人さん気が付いたんだ。よかったー!」
「いや、あまり痛くねぇがダメージが蓄積されてるんだよ。だから、叩くのやめろよ!」
「はーい! 魔人さん起きててよかったー」
花茶はライネルの事が気に入ったのね。多分、ご飯くれたからだと思うけど、ライネルは花茶に感謝しないといけないわよね。
「私達はここで一泊するわよ!」
「やったー!」
「流石主人様ですね!」
「一緒に寝ようね〜♡」
「今日は皆さんと一緒に寝たいですぅ」
「黄結姫の頭なら入れるぐらい大きくしたから一緒に寝ましょうね」
「はい!」
「それで、貴方達はこっちで寝泊まりしてね」
私は魔王軍の人達用の大きめの小屋を建ててあげた。
「まさか、私達の為に小屋を建ててくれるとは、凪さんは慈悲深くとても優しい方です! 素晴らしすぎます! より一層貴方への愛が深く深く」
クティスがイデアの頭に噛み付いている状態で歩いてきた。
もちもん、彼の頭からは大量の血が流れていた。
「あの、痛くないの」
「もちろんとっても痛いです! 凪さんに優しく撫でて欲しいですね」
イデアは頭にまだクティスが噛み付いているのに私に抱きつこうと飛んできた。
「はい、獣君はこっちね〜」
紫水は私に向かって飛んできたイデアとクティスを水で包み込むと私が建てた小屋に送った。
「イデア様ってあーゆう、変なキャラだったか?」
「冷静、沈着、仕事人って感じだよな?」
「でも、イデア様って確か、魔王軍一の愛妻家って言う噂がありましたよね?」
「あれって、イデア様が自分で言ってただけじゃなかったか?」
魔王軍の兵士達は今までのイメージとは程遠い彼に困惑していた。
「紫水ありがとうね」
私は助けてくれた紫水の頭を撫でてあげた。
「そんな〜、当然の事をしたまでだよ〜」
すると、小屋からクティスが出てきた。
「ガルルガウルガウルゥ(イデアは寝かしつけたから大丈夫だよ)」
「さっきは助けてくれてありがとうね」
私に近寄ってくるクティスにも頭を撫でてあげた。クティスは嬉しそうに尻尾を振っていた。
「クティスは私達と一緒に寝ましょうか」
「えっ!? なんで〜、獣なんかと一緒に寝ないといけないの〜? 主人様〜、こいつら敵だよ〜」
「クティスはイデアから助けてくれているからよ。それに、なんか可愛いなって」
「獣が可愛い〜? 主人様〜、獣に心開いちゃダメだって〜。何するか分からないんだよ〜」
「何かあったらとっても強い紫水が助けてくれるじゃない」
「え〜、まぁ〜、主人様を助けるのが俺の仕事だけどさ〜」
「クティス暴れない事を約束してくれたら私達の家に招待するわよ」
「ガウ! ガウウガ!(分かった! 約束する!)」
私の手に甘えてくるクティスをみて、やっぱり目が5つあって顔が骨だけど、愛嬌があって可愛いわね!
「主人様、僕は魔王軍の方達の治療に行ってきますね」
「一人で大丈夫?」
「えぇ、僕に攻撃したらもう一生治してあげませんと言えばさすがに、何もしてきませんよ。あと、一応、あの人達の監視は必要だと思いますからね」
「何かあったらすぐに教えてね」
「はい! 行ってきます!」
「いってらっしゃい」
緑癒は小屋へと向かった。
1人で大丈夫かしら? 不安だけど、緑癒が1人で大丈夫と言ったから緑癒を信じてあげないとね。
「それじゃあ! 私達も休むわよ!」
「は〜い! お前、もし主人様に何かやったらどうなるか分かるよね〜」
「ガウル」
「花茶は主人様の隣で寝たい!」
「それでは、私は主人様の布団の中にと」
「みんなでお泊まり楽しいわ」
私達は家に入り、眠りについた。
藍介と紫水は私と一緒の布団に寝る事をかけた闘い(じゃんけん)の末、紫水が勝利し、紫水は私の抱き枕になった。
「くそぉ、またしても紫水が主人様の抱き枕に!」
「お兄ちゃん、負けちゃったから仕方ないよ」
「灯り消すわね。それじゃあ、おやすみなさい」
「主人様! おやすみなさい!」
「おやすみなさい」
「ガウアウガ!(おやすみなさい!)」
「みんな〜、おやすみ〜」
「みなさん、おやすみなさい」
私は紫水を抱きしめ、頭の上には花茶、左には藍介、右にはクティスで足元に黄結姫がいた。
私はフカフカの布団の中で死んだ様に眠りについた。
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