獣は閃いた
皆さんを殺さずに済んだのは本当に良かった。優秀な人材を失いたくないですからね。それにしても、自身の命を繋ぐ為に、死者を食べて弔う、素晴らしい考え方です。自然界の摂理といった所でしょうか? ん? 殺されたムカデ達を食べさせられるのであれば、凪さんは私を一度殺しましたよね?
それなら、ですよ、私は凪さんに食べられるべきなのではないでしょうか!?
凪さんに食べられる。
イデアは如何わしい妄想を始めた。そして、彼は行動に移した。
私が焚き木の前で座っているとイデアが話しかけてきた。
私はもうそろそろ家に帰ってお風呂入りたいと思ってたんだけどな。
「凪さん、お話がありまして、2人きりになれませんか?」
「嫌よ、ここで話して」
「凪さんにしか伝えられないことなのです」
なんか、嫌な予感するわね。でも、断れないわよね。
「なによそれ。うーん、すぐに終わるならいいわよ」
「えぇ! すぐに終わりますとも!」
「はぁー、みんなちょっと行ってくるわね」
「主人様〜、付いていくよ〜」
「すみませんが、凪さんとふたりきりで話したいので付いてこないでください」
「はぁ〜? 獣君に言われる筋合いはないよ〜」
「喧嘩はやめなさい! すぐに終わるから大丈夫よ」
「え〜、あいつ絶対に変な事するって〜」
「変なことしたら大声あげるからその時は助けて欲しいわ」
「分かったよ〜。気をつけてね〜」
私はイデアと森の中に入り、焚き木の光が少しだけ見えるところまで歩いた。
「ここまでくればいいでしょ、で、話って何ですか?」
「あのですね、凪さんは私を一度殺しましたよね」
ん? なんでそんな事言うんだろう?
「貴方は死んでないから、殺したと言わないんじゃないかしら?」
「いえ、私の内臓を内側からズタズタに切り裂いたではないですか」
「まぁ、そうだけど」
「それで、です! ムカデ達を殺した兵士達がムカデ達の弔うという事でムカデ達を食べましたよね」
「うん、そうだけど」
「なら! 凪さんは私を食べないといけませんよね!!!」
「ちょっ」
「凪さん! 私を食べてください!」
私の口の中にイデアは指を入れてきた。
これじゃあ、何も話せないっていうか、何するのよ! この変態が!!!
「凪さん、凪さん、はぁ、私を食べてくれている。もっと、もっと、私を食べてください」
イデアは私の口から指を出すと口付けをしようとしてきた。
キスなんてするわけないでしょ!!!
「このど変態がぁぁぁあああ!!!」
私は魔石をイデアの口の中にぶち込み、魔石を魔力爆発させた。
イデアは口から煙を出して倒れた。
その後、クティスがイデアではなく私に駆け寄り、尻尾を私の体に巻きつけて私を慰めてくれているみたいだった。
「クティスって言うのよね。貴方の飼い主どうにかならないかしら」
「ガウゥゥ(ごめんね)」
「はぁっ! 凪さん! 凪さんの魔力が口の中に広がり最高に美味しかったです! 魔石を食べた事は一度もなかったですか、魔力を補給すると言うのでしたら魔石を食べてみるのもいいですね」
こいつは、タフだった。えっ、何こいつ怖いんだけど。
「ガウガルルルガ! グガルガ! (何やってるんだよ! 怖がってるじゃないか!)」
「クティスそんなに怒らなくても、凪さんは私を一度殺したのです。だから、私を食べてもらおうかと」
「グガルガルルルガ!(怖がってるでしょ馬鹿なの!)」
クティスは体勢を低くしてイデアに威嚇をしているみたいだった。
「クティスも凪さんに食べて欲しいとは思わないのですか」
「ガウガル? ルルガ! ガウガルルガ!(食べて欲しい? 馬鹿! イデアの馬鹿!)」
「そこまで馬鹿と言われると傷付きますよ。凪さん、クティスが私をいじめてきます。慰めてください」
イデアは立ち上がると私に抱きつこうとしてきた。が、クティスがイデアの頭に噛み付いた。
「痛い! 痛いですってば!!!」
「グルルルルガルルル!(少し落ち着けよ馬鹿野郎!)」
私はその場から退散した。
何で、変な人に気に入られちゃったんだろう。
これが、私の人生で初めてのモテ期ってことなの?
それなら、普通の人にモテたいんだけど!!!
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