勧誘
私は洞窟の入り口に向かい、入り口を塞いでいた魔石の壁を消した。
パラパラと魔石が散っていくと、虫達が私に駆け寄ってきた。
「主人様!!! 大丈夫でしたかー!!!」
「主人様! 花茶が悪い奴やっつけるから逃げて!」
「俺が〜、皆殺しにするから〜、みんな逃げてね〜」
「主人様! お怪我はありませんか!? 僕の鱗粉使います?」
「主人様、よかった」
「大丈夫よ! それより、みんなにお願いしたいことがあるのよ」
「お願いしたいことですか?」
私は言葉ではなく思念伝達を使いお願いをした。
『ムカデ達の遺体を集めてきてほしいのよ』
「それは、どういうことでしょうか?」
「どうして集めるの? 花茶、お腹減ったから少しだけ食べちゃったよ」
花茶‥‥。お腹減ってたら仕方ないわよね。
『あの人達はムカデ達の命を奪ったのだから弔って貰うのよ』
「あー、そういうことですね! ですが、彼らは弔ってくれるのでしょうか?」
藍介は首を傾げていた。
『弔うか死ぬかどっちかを選んでもらって、結果は全員弔うと言ってくれたから大丈夫よ』
「それは、弔うしか選択肢はないですね」
「う〜ん、主人様〜、それは優しすぎない〜?」
『そう思うかも知れないけど、イデアさんとはこれ以上争いたくないのよ。それに、聞いた話によるとリリアーナが関係しているみたいなの』
「え? リリアーナが何故!?」
『それは、まだ詳しくは分からないけど、彼と同じ魔王軍の幹部になっているみたいよ』
「あの我儘女が幹部なんて、魔王軍は大変ですね」
「おや、魔法使いの貴方とは気が合いますね。男女のドロドロした関係を仕事中に持ち込まれたりされて、もう、大変なのですよ」
イデアは私の後ろから抱きついてきた。
「ちょっと、イデアさん、抱きつくのはやめてください」
「少しぐらいいいじゃないですか、はぁ、凪さんは甘く優しい香りがしますね」
「おい、獣が主人様に抱きつくんじゃねぇぞ、殺すぞ」
こんなに怒っている紫水は初めて見た。
「おや、君は、ほぉ、その怒り様は私のライバルと言った所ですかね」
「主人様〜、今すぐにそいつから離れて〜、すぐに殺すからさ〜」
「紫水、落ち着いて、怒りたい気持ちは分かるけど、我慢して頂戴」
私は紫水を宥めた。
『主人様〜、こいつは危険な獣だよ〜。獣とは関わらないほうがいいって〜』
『彼とはこれ以上戦いたくないのよ。不死だから、倒し方分からないし、ここでまた戦闘が始まれば森にいる子達が可哀想じゃない』
『主人様は、本当に優しいんだね〜。分かった〜、殺し合わないようにするね〜。でも〜、そいつから離れてほしいな〜』
『私も離れたいわよ!!! やけにベタベタと体を触ってきて嫌なのよ!』
『主人様は〜、そいつの事嫌い〜?』
『嫌いよ、初対面の相手に抱きついて、私の匂い嗅ぐのって変態じゃない!』
『変態は〜嫌い〜?』
『嫌いよ!』
『分かった〜。はぁ〜、良かった〜』
「凪さん、彼との話し合いは終わりましたか?」
「獣君〜、お前とは仲良くしたくないけど〜、今回は殺さないでおくよ〜」
「まるで、私を殺せるような言い方ですね。面白い、やはり貴方は魔王軍に入隊して欲しいですね」
「絶対に嫌だね〜、主人様から離れるなんて出来ないし、リリアーナが居るなら尚のことだよ〜」
「それでしたら、黄結姫さんでしたっけ? 貴方の攻撃はなかなか効きました。魔王軍に」
「お断りします!!! 紫水は貴方には渡しません!!!」
黄結姫は紫水を自身の体の下に隠した。
「うわぁ〜、母さん大丈夫だって〜」
「絶対に私の子は渡しません!!!」
「母さん〜、恥ずかしいよ〜」
「断られてしまいましたか、それなら、魔法使いの貴方は魔王軍どうでしょうか、貴方程の魔法の高みにいる方は久しぶりに見ました。貴方の賢さを我が魔王軍で」
「お断りします。主人様の側が心地いいのです。それに、リリアーナにはもう金輪際会いたくないので!」
「それでは、治癒の力を持つ貴方はどうでしょうか、魔王軍は治癒能力を持つ人材が常に不足していまして」
「嫌です!」
「嫌ですか、それなら、稀少な木属性魔法を扱える君は魔王軍に入ってみませんか」
「ふぇ? 花茶の事なのかな? お兄ちゃんと主人様の側に居たいから入らないよ!」
「全員、凪さんの側から離れたくないのですね。それでしたら、凪さん! 是非! 魔王軍に」
「私はダンジョンから出られないから無理よ」
「ん? 洞窟から出ているのにどうしてそのようなことを」
「この森も私のダンジョンなのよ」
「2つのダンジョンを保有している。そんな、私の人生で始めた会いましたよ!!!」
「えっ? そうなの?」
「凪さんは可愛くて、強くて、優しくて、私の心を何度貫けば気が済むんですか。なぎさーん、大好きです!!!」
イデアはさっきよりも強く私を抱きしめた。
「苦しいからやめなさい!!! もう! はぁー、抵抗しても無駄だわ。もういいや、藍介、紫水、黄結姫、緑癒、花茶! ムカデ達の弔いの準備を始めるわよ!!!」
「はーい!」
私達はムカデ達の遺体を集め始めた。
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