どっちも選びたくない2択
俺の名前はライネル、魔王軍第3先鋭部隊副隊長、獰喉のライネルって二つの名が俺にはあるんだが、カッコよく言える時がねぇんだよな。
魔王軍に入ったのは沢山暴れられるから入隊したんだけどよ、実家を継ぎたくなくて入隊した訳じゃねぇからな!
俺は暴れて暴れてつえぇ奴と血が沸騰するぐらい湧き立ちてぇんだよ。だけど、違った。俺は弱かった。
悔しかった。だから、がむしゃらに力を求めた。
なのに、俺は変な女と本を持った虫に負けた。
悔しかった。意識を取り戻した時、俺は拘束されて全てが魔石で作られた牢屋に入れられた。
イデア様とあの女の戦いを間近で見た俺は敵ながらあの女がすげぇと思った。決着がついた時、俺は目を疑った。
魔王軍最高幹部、八翼のニ翼イデア・ラヴァーズ、魔王様が恐れる程の力を持ち、人間の国を1人で滅ぼしたとか、巨人を絶滅させたなど、本当かどうかは俺にはわからないが、数々の伝説を持っている。そんな、すげぇ奴を殺したんだよあの女は。
でも、イデア様は不死。女は足がふらつき立っているのもやっとと言うぐらい体力を消耗していた。あの女は死んだな。そう思っていた。まさかの、イデア様はあの女を抱きついて甘え始めた。
なんて、運が良い女なんだって俺は思った。
その後、イデア様は俺を倒した女を抱き抱えていたが、クティス様の腹の上に置いた。女はあろう事かイデア様に抱きつき、イデア様は奇声を発していた。
「なぎさぁぁぁん!!! そんな、そんなに私の事が好きなのですねぇぇえええええええ!!! 嬉しいです。嬉しすぎて、はぁ、はぁ」
「ガウガルガ!!!」
何故か、クティス様がイデア様の手に噛み付いた。
「クティス!やめなさい! こら! これから、私は凪さんと愛し合うのですから、ちょっと、痛いです、手が千切れますって、いたたたたた。痛いですってば!!!」
「ガルルルガ!」
クティス様は女の体に尻尾を巻き付けてまるでイデア様から守っているようだった。
「分かりましたから、もう噛むのはやめて下さい! もう、凪さんの体温をもっと感じたかったのに、独占するなんて酷いですよ」
「ガウガルガガルガ!!!」
「はいはい、後片付けしますって、はぁ、あの馬鹿達を助けてあげましょうか」
イデア様は俺達が捕まっている魔石の牢屋に来ると、大鎌を振り、牢屋を破壊、俺達は解放されたが、それは、もう、地獄の始まりだった。
「 私の仕事を邪魔をした罰です。歯を食いしばりなさい」
俺とネルガルはイデア様に頭を思いっきり殴られた。俺たちの頭には大きなたんこぶができて、俺とネルガルは正座させられて説教を受けた。
空が暗くなり、眠っていた女が起きた。
俺とネルガルは焚き木の前に座っていた。
「なぁ、ネルガル、俺達はこれからどうなるか分かるか?」
「どうなるって、イデア様のあの様子じゃ、あの女が俺達を殺してほしいと言えば直ぐに俺達を殺すんじゃないか」
「こんな場所で死ぬのかよ」
「まさか、こんな事になるとは思いもしなかった。リリアーナ様はどうして、あんな化け物がいることを教えてくれなかったんだ」
「ほんと、それな」
すると、女とイチャイチャしていたイデア様が俺達の元にやってきた。
「貴方達は凪さんの大切な仲間を何人か殺しましたよね。その行いの所為で、彼女は貴方達が憎いみたいなのですが、彼女はとても優しい人。私達と和解するチャンスを下さったのです。その内容ですが、貴方達が奪った命を弔ってもらいます。それが出来たら、貴方達を殺さないと約束してくれました」
「弔うって火葬とかするのですか?」
「いえ、貴方達が殺した虫を食べてもらいます」
「え?」
ネルガルは何を言っているのが分からないと言う顔をしていた。
「嘘だろ。虫を食うのかよ」
「別に嫌がる事はありませんよ。虫を食べる文化もありますし、食べたら殺されないのですから皆さん、食事の準備をして下さい」
俺とネルガル、部下達は一斉に嫌だと抗議した。
「貴方達、自分達の立場が分からないのですか」
俺達はイデア様から向けられた殺気に怖気ついた。
そもそも、俺は何匹食べなくちゃいけないんだ!?
「分かりました。貴方達に、選択肢をあげましょう。虫を食べて生きるか、今までにない苦痛を味わいながら死ぬかどっちか良いですか?」
部下の1人は虫を食べると叫んだ。また、1人、また、1人と虫を食べる選択をした。ネルガルも虫を食べる選択をした。俺はと言うと、何匹殺したのが覚えている訳ねぇだろ!!!
やべぇ、どうする、いや、一つしか生きる道はねぇ、でもよ、キツイって、あんな見た目の奴なんか口に入れたくねぇ!!!
でも、死ぬか、食べるかと言われたら‥‥。
食べるしかねぇよな。
あー!!!!!!
本当はどっちも選びたくねぇよ!!!
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