甘えん坊な獣
私は意識が戻ったが、目を瞑っていた。
何か、もふもふな布団に少し硬めの枕で私は寝ていたみたい。あれ? 私、立ったまま寝ちゃったのに、布団の中にいるの? もしかして、今までの嫌な事は夢だったって事なのかな?
私はゆっくりと目を開けてみた。
目の前には敵だった男の顔が目の前にあった。
フカフカな布団と勘違いしていたのは、ワンちゃんの体毛、少し硬めの枕は彼の腕枕‥‥。
空は暗くなっていた。うん、目を瞑ろう。
起きて早々にイケメンの顔がドォーン! フカフカ柔らかくて温かいワンちゃんの温もりとイケメンの腕枕。
もう、なんだろうね!
彼を倒すために必死に考えて、人を殺すことを考えるなんて今までの人生で初めてのことなのに、自分自身が怖くなって、あんな嫌な光景を見たって言うのに、何なんでしょうね!
もう一回、寝ようかな。
「んん、凪さん、目が覚めましたか?」
イケメンが耳元で囁いてきた。
「凪さん、おはようございます。お腹減りましたか? ご飯にしますか? それとも、私が欲しいですか?」
「なぁにぃ言ってるんだクソイケメンがぁぁぁあああ!!!」
私は飛び起きた。
「凪さん! やはり、目覚めていたのですね」
イケメンは私が立ち上がるなり、私を抱きしめてきた。
イケメンは上半身裸で、逞しい筋肉がこんにちわをしていた。
あら、もう、すごい筋肉!!!
はい、もう無理。なんなの、どういうことなの!
31歳、彼氏無しの人生だった私に、イケメンに抱き付かれるっていうありえない出来事、メンタルやられるわ!!!
えっ? イケメンに抱き付かれているなら、ご褒美じゃないのかって? あのね、今までこの人と殺し合っていたんですけど、そもそも、イケメンでも初対面の人に抱きつかれたくないんだけど!!!! 無理! イケメンでも無理!!!
「なーぎさーん。はぁ、温かい」
イケメンはイケメンでなんか、幸せオーラが滲み出ているんだけど、なんでなのよ! 私はあんたを殺したのよ! 生きてるけどさ。それでも、この甘えっぷり、なんなのよ!!! 誰か説明してよ!!!!
あいすけぇーー! しすいーー! かぁちゃぁーー!
たーすーけーてー!!!!!!
「凪さん、結婚式は何処にしますか? ウェディングドレスはどうしますか? 出来れば、一緒に決めたいのですが」
「ん? 結婚式ってどういうことなの?」
「それは、もう、私は凪さんに妻になってくださいと告白したら、凪さんは心よく私の腕の中で眠ったではないですか。私が安心できる人だと感じてもらえてよかったです」
「いや、え? ちょっと待って、私は貴方に抱き付かれた状態で眠ってしまったのは、貴方との戦闘で疲れ切っていたからで、安心して眠ったと言うよりは、眠気が限界を達したから寝たわけで、安心したとかじゃないわよ」
「ですが、凪さんが眠っている時に私にギューっと抱きついてきてくれたではないですか」
「はい? 私が貴方に抱きついたんですか? いつまで抱きついているんですか! 離れてくださいぃぃぃ!」
私は全力で腕の拘束から逃げようとしたが、彼の方が力が上だった。
離してよぉぉぉおおおお!!!
「私が凪さんをクティスの腹の上に寝かせた時に、私から離れまいと抱きしめてくださったではないですか、もう、あの時から、私の心は貴方の可愛さで貫かれてしまい、貴方に私の一生を捧げたいと心に誓いました。ちょっと、凪さん、暴れないでください、私はまだ甘え足りないんですから」
彼は私の手を握り私の手を彼の顔に押し付けていた。
「凪さんの手はとても温かくて、柔らかく、はぁ、凪さん」
彼は私の手の平にキスをし始めた。
やめてよ!!! この変態!!! くそぉ!
「手を放しなさい!!!」
「いやです。貴方に一度殺されて痛かったので慰めて欲しいのです。はぁ、最高」
誰か!!!! この変態をどうにかしてよ!!!
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