子蜘蛛の名前
私が2人の子蜘蛛に説教をしていると、紅姫が慌てて降りてきた。
「主人様! 申し訳ございません。お勉強してから主人様に挨拶をしましょうねと伝えたのですが、本当に申し訳ございません」
紅姫は必死に頭を下げて謝ってくれた。
紅姫が悪いわけじゃないし、育児で疲れてたんだから仕方ないわよね。
「大丈夫よ。丸く収まって、2人は反省してくれたみたいだしね」
『ごめんなさい』
『ねぇちゃんを止められなくてごめんなさい』
『あんたも会いたいって言ったじゃない!』
『それは、ねぇちゃんが会いたい会いたいって言うから』
『あたしのせいにするんじゃないわよ』
『あんなに燃えたのも、ねぇちゃんのスキルのせいだし』
「もう、喧嘩はやめなさい! 主人様お見苦しい所をお見せしてしまい本当に申し訳ございません。主人様この2人は、私が今まで産んだ子供達の中でも、とても賢く同族を統率するスキルを保有していた為、他の子蜘蛛達を連れて巣から降りてしまったのです」
「まぁ、まぁ、まだ子供なんだし、これから私達が色々と教えてあげればいいのよ」
「主人様、本当にありがとうございます」
『主人様はなんて美しい心をお持ちなのかしら。それに、とても美しいわ』
『主人様はとっても面白くて優しい方なんだね』
『美しい心を持った美しい方よ』
『とっても面白くて優しい方だよ』
『美しい』
『面白くて優しい』
また、2人は喧嘩をし始めた。
喧嘩する程仲がいいと言うけど、喧嘩するの早すぎない?
この子達、紅姫がとても賢いって言ってたから、この子達に名前付けようかな?
「ねぇ、紅姫、この子達に名前付けたいんだけどいいかしら?」
「えっ!? 名前ですか! それは、早すぎるのではないでしょうか」
『名前!』
『僕に名前付けてくれるの!?』
喧嘩してきた子蜘蛛が喧嘩をやめて私の側まで駆け寄ってきた。
『あたしに本当に名前付けてくれるのですか!』
『僕、カッコいい名前がいい!』
「それは、2人が仲良くなれたら名前付けてあげようかな」
『あいつと仲良く』
『ねぇちゃんと仲良く』
2人は互いを見つめていた。
『わかりました! あたし、こいつと仲良くします!』
『僕もねぇちゃんと仲良くします!』
「本当に仲良く出来る?」
2人は同時に返事をした。
『はい!』
「それなら、そうね」
私は白色の子蜘蛛を手の上の乗せた。
産まれたばかりなのにずっしりしているわね。彼女をよく見ると、お腹には桃色の桜模様。白い桜‥‥。白桜、見た目そのままだけど、可愛い名前ね。桜、懐かしいわね。久しぶりに花見なんてしてみたいわね。桜の木って、この世界にあるのかしら?
「貴方の名前は白桜」
『白桜! なんて美しい名前なの! 主人様ありがとうございます!!! 主人様大好き!!!!!』
白桜は私の肩に糸を付けて肩によじ登り私の顔に頬擦りをしていた。
『主人様♡ 大好き♡ 大好き♡』
『あっ! ねぇちゃんだけずるいぞ!』
『ふん、主人様はあたしの事を気に入ってくれたから、美しい名前を下さったのよ! あぁ〜主人様♡』
なんだろう、白桜にやけに懐かれちゃったわね。何だろう、少しだけ、ほんの少しだけ、紫水に似ている気がする。
「それじゃあ、次は貴方の番ね」
私は青色の子蜘蛛を手の上に乗せた。
『主人様の僕重たくないですか、大丈夫ですか』
この子は綺麗な青色ね。お腹には黄色の雷マーク? 天気予報に出たら嫌な模様ね。うーん、かっこいい名前ねぇ。白桜も見た目で決めちゃったから、この子も青雷、青じゃなくて、青、雷じゃなくて、雷、青雷! 何だろう、和風の名前にしたいけど、中華風な名前ね。まぁ、緑癒も和といえば、少し違う感じするしね! 別にいっか!
「貴方の名前は青雷」
『僕の名前は青雷! かっこいい! 僕の名前は青雷!!!!』
『なかなか、かっこいい名前なんじゃない。その、おめでとう。青雷』
『ねぇちゃんの方こそ白桜可愛い名前だね!』
『美しい名前と言いなさい!』
『主人様! 名前をくれてありがとうございます! 僕! この名前に恥じない様に頑張るね!』
『あたしも、白桜に恥じないように頑張ります』
「これからは、あまり喧嘩しないのよ」
『はーい!』
白桜と青雷は名前を貰って庭ではしゃいでいた。
「主人様、名前を与えてよろしかったのですか?」
「別にいいじゃない? この子達はとても賢そうだし、いい子達じゃない」
「主人様が2人を気に入ってくださったのでしたら、主人様にお願いがありまして」
「ん? 紅姫、お願いって何?」
「主人様にあの子達を導いてくださりませんか?」
「導くねぇ。それは、私でいいの?」
「はい! 主人様だからこそお願いしているのです」
「そう言うのは藍介が適任だと思うのだけど」
「藍介さんだと多分ですが、多分ですよ、あの子達話をきちんと聞いてくれるか不安で」
「分かったわ。その気持ち少しわかる様な気がする。よし!紅姫、白桜と青雷は私に任せなさい!」
「主人様! ありがとうございます。それでしたら、白桜と青雷は主人様の家で暮らすと言う事で」
紅姫はすぐさま庭ではしゃいでいる2人にさっき話したことを伝えていた。
「えっ? 私の家にあの2人暮らすの!? あっ、ちょっ、紅姫!?」
『主人様の家で暮らせる!? あたし主人様の家で暮らせる!!!!』
『僕も主人様の家に‥‥。やったぁぁぁ!!!!』
「主人様2人をよろしくお願いします」
『主人様! あたし達をよろしくお願いします』
『主人様! 僕とおねぇちゃんをよろしくお願いします』
「えぇ、これから、うん、よろしくね」
私の家に新しい住民が2人増えた。紅姫の娘の白桜と息子の青雷。まさか、私の家で暮らすなんて、私てっきり天井の巣から通いで来るとばかり‥‥。でも、2人があんなに嬉しそうにしてくれているから、まぁ、いいっか。
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