クモクモ大パニック!? 前編
あれから一月が経った。もうそろそろ、紅姫の子供達が産まれる予定だけど。それに、灰土はいつまで蛹の姿なのよ!
「灰土〜、いつになったら羽化するの〜?」
「体がむずむずしているからもうそろそろなんだけどな。いつになったら出れるのやら、俺も知りたいぐらいだ」
「藍介お茶飲みたいわ」
「かしこまりました。少々お待ちください」
「花茶も何か飲みたい!」
「みかんジュースがあるのでそれでいいですか?」
「ジュースやったぁ!」
「俺は水で〜」
「水なら私が出してあげようか?」
「えっ!? いいの〜? それなら〜お願いしようかな〜」
私は水の魔石を作り出し、水飲み器を紫水の目の前に出した。
「主人様のお水とっても美味しいんだよね〜。魔力が濃くて〜、それでいてさっぱりしているから何杯でも食べれちゃうんだよね〜」
紫水は水を飲むじゃなくて、食べると言い換えているのよね。主食が水なのに、何でそこまで大きくなれるのかな?
「主人様、お茶のご用意できましたよ」
「藍介、ありがとう」
私は湯呑みに入った熱いお茶を飲んだ。お茶があるって素晴らしいわね。
すると、大量の思念が伝わってきた。
『主人様いた! みんなこっちに主人様いるよ!』
『主人様の巣ってかっこいいね』
『ちょっと! あたしの体の上に登らないでよ!』
『主人様に挨拶しないと』
『僕が1番!』
『あんた達! あたしが1番最初に主人様に挨拶するのよ! 抜け駆けは許さないんだから』
『アルジサマ、アルジサマ』
私は急いで庭に出て上を向いた。天井から夥しい数の子蜘蛛が降りてきていた。
「ぎゃぁぁいあああああああああああ!!!! 何!? 全員、紅姫の子供!?」
「うわ〜、すごいね〜」
藍介と花茶も私の悲鳴を聞いて庭へ出てきた。
「主人様どうかなさいましたか! これは、今年はいつもより数が多いですね」
「うわぁぁぁあ!!! お兄ちゃんいっぱい降りてくるよ!」
虫籠の中にいる蛹になった灰土は一人何が起こったのかよく分からない状態だった。
「何が起こっているのですか! 主人様大きな声出します?」
「これは、みんな! 家の中に避難よ!」
私、藍介、紫水、花茶は家の中に隠れることにした。
いや、あの数で来られたらいくら紅姫の子供でも怖いわよ!集合体恐怖症だっけ? ネットでその診断画像見たことあるんだけどさ、背筋がゾクゾクってするのよね。もう、まさにそんな状態。
紅姫の子供達は庭へ降りてくるなり、私を探し始めた。
『あれー? 主人様さっきまでいたんだけどな?』
鮮やかな青色の体でお尻に黄色い雷マークの模様の子蜘蛛が辺りを見渡していた。
青色の子蜘蛛の後について続々と子蜘蛛達が庭へ降りてきて、庭に入らない子達は家の屋根や塀に降りていた。
『あんた馬鹿ねぇ。主人様は家の中にいるのよ』
真っ白な体でお尻には桃色の桜の花びらの様な模様をしている子蜘蛛は他の子蜘蛛を指揮していた。
『ねぇちゃんには言われたくないな。そもそも、母様がまだ会いに行くなって言ってたのに、これ大丈夫なの?』
『主人様に会ってみたいって言ったのはあんたの方でしょ。それに、みんなも主人様に会ってみたいわよね!』
『アルジサマ! アルジサマ!』
私と紫水は襖の中に隠れて、藍介と花茶は子蜘蛛の様子を見に行ってくれた。まぁ、襖の中は紫水の体がギリ全て入るぐらいだったから、花茶は入れなかったのよね。それで、藍介は付き添いで行くと言ってくれたんだけど、もう少し広くした方が良かったかな。
藍介と花茶が出て行ってから5分程度経った。
「主人様〜と二人っきり〜♡ 最高〜♡」
「はいはい、それより藍介達から何も報告ないわね?」
「どうしたんだろうね〜」
藍介から送られてきた思念は弱々しいものだった。
「たすけて」
「えっ!? さっき藍介助けてって言ってなかった!?」
「藍介なら大丈夫だって〜。主人様〜、もっとこっちおいでよ〜♡」
私に巻きつこうとしてきた紫水を拒否して、私は襖から出ることにした。
「でも、この状態で出るのは怖いわね。出た瞬間、子蜘蛛達が私に抱きついてきたら‥‥。無理よ、1人ずつならまだしもあの数は無理!」
「そんなこと俺がさせないよ〜。俺は主人様の護衛だもん〜。主人様に害がある者から俺が守るよ〜」
「うーん、そうね。こうしましょうか! 紫水、体の下に入っていい?」
「ふぇっ!? バック? そうかぁ〜、主人様はその態勢が〜」
この頃、紫水が何を言っているのか分からない時があるのよね。バック? 態勢? うーん、考えないでおこう。
「私が紫水の体の下に潜り込めば上の守りは完璧でしょ。後は紫水のスキルを使って私の体を少し浮かせば紫水は動けるわよね?」
「主人様のお願いなら何でも聞くよ〜主人様を浮かせればいいんだね〜♡」
私は紫水の体の下に潜り込み、うつ伏せ状態になり、紫水の沢山ある足中で紫水の頭から近い2本の足を掴んだ。あとは、紫水が私を水を使って浮かせれば、完璧よ! 紫水の体の下に私が隠れているなんて誰も気付かないわよね!
「あふぁっ! 主人様のお尻がお尻が俺の俺の体にぃぃ〜♡」
「尻デカくてごめんなさいね!」
「いや、怒らすつもりで〜、そんなことで言ったわけじゃないよ〜」
「念の為にステルス能力を持たせた布を取り出してっと」
私は布を頭から被った。すると、紫水の体の下にいた私の姿が周りから見えなくなった。そうそう、布をかぶっても外を見れる様にしてあるわ。
「紫水、庭へ行くわよ!」
「うん〜♡ 初めての共同作業だね〜♡」
「初めてかしら? まぁ、いいわ! 紫水ゴー!」
紫水は勢いよく襖を開けた。家の中は子蜘蛛がそこらじゅうにいて一歩も歩けない感じだった。紫水はすぐさま襖を閉めた。
「ねぇ〜、主人様〜。もうここで俺と2人で暮らさない〜?」
「せめて、藍介と花茶を助けに行かないとダメでしょ」
「主人様〜、あの状況で出たいと思う〜?」
「出たいとは思わないけど、出るしかないでしょ!」
「え〜、花茶ちゃんには申し訳ないけど今回は助けられなかったという事で〜」
「ほら、紫水頑張って!」
「そう言われてもな〜。あれはなぁ〜」
「それなら、今日頑張ってくれたご褒美に今晩一緒の布団で寝ましょうよ」
紫水は毎日私の布団で一緒に寝たいと言っていたのよ。1人で寝れるでしょって言って回避してたけど、まぁ、頑張ってくれるならいっか。
「えぇ!? いいの!? 本当に〜?」
「えぇ頑張ってくれたらの話だからね」
「俺〜! 頑張る〜!」
「あっ、紅姫の子供だから潰さない様にしてね」
「あの状況でそれは難しいんだけどなぁ〜」
「紫水なら出来るわよ! さぁ!紫水!」
「分かったよ〜。頑張るぅ〜」
紫水はもう一度勢いよく襖を開けた。
ブックマーク、評価いただけると嬉しいです。