灰土の失敗
私は紫水の背中に乗り、灰土に会いに行った。
虫籠の中には巨大な蛹が入っていた。
「これって、灰土! やっと蛹になれたじゃない! 良かったわね!」
「これが〜灰土なの〜?」
「糸吹きさん!?」
「蛹になったら後は羽化して成虫になるのよ」
「あ〜、やっと灰土大人になれるってことだね〜」
「主人様、このままだと灰土さん無事に羽化できるかわからないですね」
私は紫水から降りて虫籠の中に入った。
「どうして? って! きゃーーー!!!! 灰土の顔が下に落ちてる!?」
そこには、灰土の2本の触覚の生えた可愛い顔が蛹の下に落ちていた。花茶も驚いていた。これは、誰でも驚くわよ。
「糸吹きさんの顔が転がっている!」
「蛹になる際脱皮しますからね」
「起きて早々、めっちゃびっくりした。うーん、藍介が言いたい事、私わかったような気がするわ」
「それってどういう事〜?」
「羽化するのに、ここじゃ狭すぎるのよ」
「主人様! お目覚めになられて良かった」
渋くて低い男性の声が聴こえた。
「えっ!? 今の誰!?」
「ん? もしかして、主人様俺の思念に気付いてくれたのですか!?」
「えぇ、灰土って渋い声なのね。知らなかったわ。なんで!蛹なのに思念飛ばせるのよ!」
「蛹になっても動けるものですよ。ほらどうです」
蛹姿の灰土は体をブルンブルンと体を揺らした。
蛹になったら動けないと思ってたけど、違かったのね。
一つ勉強になったわ。
「灰土〜、話せるならさ〜、どうして俺の事無視してたんだよ〜」
「いや、この間まで俺は気絶してたからな。起きたらいつの間にか蛹になっていたんだ」
「気絶しながら蛹になったってこと〜? それって〜怖くない〜?」
「あぁ、起きた時、動きづらくて驚いたからな。その、主人様にお願いしたいことがありまして」
「お願い? 蛹用の付け髭欲しいの?」
「いや、それも欲しいと言えば欲しいのですが、緑の牢をもう少し大きくしてくれませんか?」
「うーん、虫籠の中で羽化するよりも外の方がいいと思うんだけどな」
灰土がどれだけ大きくなるか分からないから、虫籠の中より外の方がいいような気がするんだけど、ほら、虫籠の中で羽化した時、羽が天井に当たってちゃいそうじゃない?
「主人様、それだと灰土さん外敵に襲われそはそうじゃ無いですか?」
「それなら、私の家の屋根にくっつけばいいじゃない!」
「確か、蝶の蛹って葉っぱとかに隠れてぶら下がっているじゃない? 屋根の下なら丁度いい高さだと思うのよ」
「灰土さん、主人様の提案を受けてもいいのではないでしょうか」
「藍介様がそうおっしゃるのなら。でも、主人様にご迷惑をおかけしそうで」
「そんな気にしないで、灰土には助けられてばっかりだしこのぐらい大したことないわよ! それじゃあ、虫籠を庭へ持って行って灰土を屋根の下にくっつけましょうか」
「主人様〜、紅姫さんには会わないの〜?」
「灰土の引越しが終わったら、紅姫に会いに行きましょう」
「了解〜」
「花茶も手伝う!」
私達は虫籠を庭へ持って行き、灰土を屋根にぶら下げようとしたが、灰土を虫籠の天井から引き剥がす事に苦戦していた。
「なんで、剥がれないのよ!」
「仕方ないですよ、簡単に剥がれたら安心して羽化できませんからね」
「灰土〜、もうそのままでいいんじゃない〜」
「やはり、虫籠を大きくしてもらって」
「これじゃあ、仕方ないわよね。虫籠を大きくしましょう」
私は虫籠に触り、虫籠の高さ6m、横幅を10mまで伸ばした。これぐらい大きくすれば大丈夫でしょ。
「ねぇ〜、灰土〜。なんで狭いの分かっているのに〜、虫籠の中で蛹になったんだよ〜」
「俺もそれが分からないんだ。そもそも、今まで蛹にならなかったのにどうして蛹になれたんだ」
「俺に言われても分からないな〜」
「私も分からないわね。藍介、何かわかる?」
「うーん、私でも分からない事はありますからね。もしかしたら、主人様が倒れたのがきっかけだったのではないでしょうか」
「あっ! そう言えば、私ねクエストクリアして報酬色々貰ったのよ」
「貰ったって誰から〜?」
「それは、分からないわよ」
「もしかしたら、そのおかげで灰土さんは蛹になれたのかもしれませんね」
「主人様、緑の牢を大きくしてくださりありがとうございます」
「緑の牢じゃなくて虫籠よ。虫籠気に入ってくれて嬉しいわ」
「この中にいるととても安心できるのです」
「主人様! 紅姫さんに会いに行こ!」
「えぇ、そうね。灰土私はこれから紅姫に会いに行ってくるわね」
「はい! 家の警備は俺に任せてください!」
「いや〜、その姿でどうやって警備するんだよ〜」
「何かあったら叫ぶ事はできるさ!」
「それは、確かにそうですね。灰土さん家の警備よろしくお願いします」
「それじゃあ! 紅姫に会いに行くわよ!」
私は紫水の背に乗ってベルトを固く締めて、紅姫がいる洞窟の天井に向かった。
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