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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
99/263

サバイバルにて(其の壱)

 小型艇を見守りながら言葉を発するパープル。


「どうざます? あのモブ信徒の勝ち目は……」


「0.001%デース。侵入者の少女とその仲間はおそらく星々の庭園……ヒトトセミコの従順なおペットさん達の勝率が非常に高いデスネー」


 パープルの背後からそっと現れたのはピヨリィだった。

 彼女はPの陣営に付くセブンシンズの1人である。


「ふふっ、やはりあてくしと同じ予想ざましたか。では、ピヨリィ……貴女なら?」


「勝率でいうなら99.999%……ヒトトセミコ以外はミーにとってクソ雑魚デース」


「大した自信ざます。では、ピヨリィ・ノースフィールドに命ずるざます! 侵入した憎き春夏秋冬美心の家臣に天誅を下すざます!」


「断りマース」


「なんでっ!?」


 パープルは意外な返事に戸惑い素を表に出してしまう。

 

「キャッハハハ、冗談デース。でも、すぐには行けまセーン。捉えた男児を楽しく処刑するのが先決デース」


「それは期待しているざます」


「捕らえた相手は子どもであろうと男デース。美味しく頂いてから惨たらしく処断しちゃいマース!」


「頂くって……ああた、まさか!?」


 ピヨリィは着ている白衣のポケットから1錠の薬を取り出す。


「これはミ―が開発した超強力精力剤デース。例え子どもであろうと陰部が炸裂しちゃうほどの効能を持ってマース。炸裂しすぎてショック死することもあるけれど、それはそれで次の研究の役に立ちマース」


「そ、そう? それは……まぁ、公開処刑として相手に恥辱感を与え素晴らしいざますね」


 満面の笑みで語るピヨリィに尻込みしてしまうパープル。

 これ以上の話は己の精神的に悪いと考えたパープルは会話を切り上げ船倉から離れていった。

 1人残ったピヨリィは船倉の奥にある錬金室へ足を運び、1つの赤い石を引き出しから取り出す。


(Pに言ったは良いが、星々の庭園の身体能力は並の子どもを圧倒的に上回りマース。それに背後にヒトトセミコが居る以上、奴らと直接的な対立はミーにとって喜ばしくないデス。だから、これを使わせてもらうデース。フフフ……これでまた新たなデータを集められそうデース)


 

 場所は移り、口永良部島。

 硫黄島の南部にあたる活火山島で、南西部にはかの有名な屋久島がある。

 筏はすでに原型を留めていないほど壊れ浜辺に打ち捨てられていた。


「カノちゃん、見てみて―――! バナナあったの。森の中だけでも食べられそうな物たくさんあるの!」


 食べ物を探し採ってくるムジカを頼りに、カノープスは砂浜で1人今後の行動について考えていた。


(この島にも小規模にゃけれど村があったにゃ。村人に説明をし船を借りることができれば本土へ戻れるけれど……悪魔教の追撃があるかもしれない以上、今は村人と接触しにゃいほうが良い。にゃろ達と関わったばかりに硫黄島の島民のような悲劇を繰り返すわけにはいかにゃいにゃ)


 カノープスはいつの間にか硫黄島での悪魔教の襲撃を自分達が居たからだと思い込んでいた。

 集中して考え込んでいるカノープスと違い、ムジカは採ってきた食べ物を美味しそうに頬張っている。


「カノちゃんも食べるの。栄養を取らないと身体は動かないし頭も回らないの」


「にゃふ」


 無理矢理、バナナをカノープスの口に突っ込むムジカ。

 カノープスは何も言わず、それを美味しく食べた。

 

(ムジカはお馬鹿さんにゃけれど、こういう時はかなり頼りになるにゃ。悪魔教相手でもムジカにゃら何とかしそうで何処か安心できるにゃ)


 ぽふ


 ムジカの膝の上に頭を乗せ目を瞑るカノープス。

 彼女を優しく見守り頭を撫でるムジカ。

 

「明日……」


「うん?」


「明日、島民に船を借りられにゃいか聞いてみるにゃ。ムジカも今は眠るにゃ」


「わかったの」


 しばしの休息に2人は深く眠りに入る。


(にゃろは間違っていにゃいにゃ。悪魔教を相手に、それがもしも多数ならムジカでも勝てないにゃ。それに最悪の想定で悪魔が出てきたら……ムジカばかりに重責を押し付けられにゃいにゃ。やはり逃げるが勝ちだにゃ)


 冷静に考え星々の庭園から救援など有り得ない状況下、2人だけで相手するにはあまりも巨悪過ぎる。

 カノープスは潜入調査の経験を活かし、例え島民を犠牲にしてでも本土に2人で戻ることを最優先に考えた。

 そして、夜間……。


「ぎゃぁぁぁ!」


「やめてぇぇぇ!」


「に、逃げろぉぉぉ!」


 島の反対側がやけに明るく何やら悲鳴らしきものが聞こえる。


「にゃふぅぅぅ、もうお魚食べられにゃいにゃ……」


「カノちゃん、起きるの! 大変なの!」


 涎を垂らし熟睡しているカノープス。

 ムジカは必死に声をかけ揺さぶってもカノープスは起きない。

 

「カノちゃん、いつもこうなの。一度、寝てしまうと全く目を覚まさないの」


 ムジカはこの状況下でカノープスならどう動くか考えた。

 だが、お馬鹿さんのムジカではカノープスのような思考などできるはずがない。

 

(カノちゃんなら……カノちゃんなら……はっ!? そういえば、カノちゃん朝には島民とお話するって言ってたの! 朝までまだ長そうだけど島の向こう側へ行くことに変わりはないの。うん、今は休んで体力を貯め込んでおくの!)


 ムジカはすぐに考えることを止め、カノープスが眠る前に言ったことを忠実に守る。

 

「うわぁぁぁ!」


「ぎゃははは、男は皆殺しにしろ! 逆らう女はねぇよ男性としてひっ捕らえろ!」


「少女は大切な金のなる木です。一滴の血を流させることなく捕らえなさい」


「「はっ!」」


 小型艇でカノープス達を追ってきた悪魔教信徒による襲撃は過激さを増し、夜明け前にはすでに全滅していた。

 ねぇよ男性扱いされた女性と少女達は1隻の小型艇に積み込まれ豪華客船へと送られていく。

 そんな中、浜辺で目が覚めたカノープスは……。

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