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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
97/263

潜入調査にて(其の肆)

 カノープスはカジノ区画を通り過ぎ、次に着いた場所はショッピング区画。

 様々なブランド店舗が所狭しと並んでいる。

 普通の女の子であれば興味をそそられ店内を見て回るところだが、星々の庭園の隊員達はブランド物に対して興味関心が無い者が多い。

 それは全世界で名を馳せる春夏秋冬財閥の下で育てられたため、欲しいものは美心に願い出れば叶ってしまうためである。


(にゃあ、ここにもムジカは居ないにゃ。あとはレストラン区画と客室区画だにゃ)


 カノープスは捜索を開始してかなりの時間が経過していることに不安を覚えていた。

 さらに船内地図を見て、残りの区画も海賊に捕まった子ども達が連れて行かされるような場所でないと考え、目標地点を再検討する。


(潜入調査で重要視すべきものの1つにタイムリミットがあるにゃ。にゃろは猫の姿で皆を化かしているけれど、ムジカはそんなことできにゃいにゃ。時間が経てば経つほど不利な状況に追い詰められていく……それが潜入調査の難しいところだにゃ。そうしたことも検討すると……やはり最も怪しい場所はここしかないにゃ)


 カノープスが手を示した場所は最上階。

 地図には怨恨の間と今までの区画と打って変わり不気味な名称が付けられている。

 

(怨恨の間……ここだけは他の場所と違い特別な何かを感じるんだにゃ。猫の姿に化けていても見つかってはいけない気がするにゃ)


 彼女は決意を新たに最上階に向かい進んでいく。

 道中で何やら屯して話をしている小母さんの集団に視線が向かってしまった。


「逃げ出したクソガキ、やっと捕まったんだってさ」


「それは良い報告ね」


「でも、どうやら男の子だったみたいでね」


「あら、メスガキだと思ってたけれど男だったの? 見た目からして女の子に見えたけれど……」


「はぁ!? キモいYカスをこの船に入れんなよ! この船は崇高な女性だけの聖域なんだぞ!」


「まぁまぁ、落ち着いて。それでね今夜、エンターテイメント区画で公開処刑があるんだってさ」


「ひゃははは、それは良い! 例えガキでもYカスはキレイに除去しないとねぇ!」


 カノープスは動きを止め盗み聞きをしていた。

 そして、再び考え込む。


(どうやら、にゃろが爆弾を渡した子どもは囚われてしまったみたいだにゃ。でも、にゃろには優先すべきことがあるから助けられないにゃ)


「それで処刑人は?」


「今、査問会議が開かれている最中だけど、私の予想ではピヨリィ様ね」


「あのロセア人女性か? 彼女は日本人では無いため陰陽術を使えないはずだが……」


「あら、知らない? 彼女はジャップストーンの精製に携わった偉大なマッドサイエンティストなのに」


「ジャップストーンの!? それなら処刑人として実に素晴らしいものを見せてくれそうね」


 小母さん達は猫の姿で近くにいるカノープスを気にすることなく会話を続ける。


(それにしてもこのおばさん連中、どう見ても海賊に見えにゃいにゃ。もしかして、硫黄島を荒らしたこの人達は海賊じゃにゃい? それに今、おばさん達ジャップストーンで言ったにゃ。その名を使うのは悪魔教関係者しかいないにゃ。ま、まさか……)


 カノープスは気付いてしまった。

 ここが海賊船ではなく悪魔教の巣窟だということに。

 そして、悪魔教に関して講堂で聞いたレグルスとカペラからの報告を思い出す。


(なんてことだにゃ……ここは海賊より恐ろしい場所だにゃ。ここはにゃろにはまだ早い領域だにゃ)


 プルプルプル


 レグルスらの報告は必要なものだったが、それは10代の少女達にはあまりにも残酷な内容であった。

 その報告を聞いた多くの隊員達は心に恐怖を刻みつけてしまっていた。

 それはカノープスも例外ではない。

 今まで出てこなかった恐怖心により身体が震える。

 

(ま、まずいにゃ……心を落ち着かせにゃいと幻術が解けてしまうにゃ)


「あら、可愛い猫ちゃん。島から入り込んだのかしら?」


「野良猫なんか放っていけ。あたいらの金に一銭にもならない」


(み、見られてるにゃ! 怖いにゃ……だ、誰か助けてにゃ!)


 身体が小刻みに震えるカノープス。

 恐怖心により幻術が解けてしまう前に走り逃げ出す。


「あ、逃げちゃった」


「だから放っておけって。ねぇよ男性が処分するさ」


 運良く見つけた通気孔の中で幻術を解くカノープス。

 深呼吸をし心を落ち着かせる。


「にゃぁぁ……ふぅぅぅ。危なかったにゃ。必死に逃げてしまったけれど、ここは何処だにゃ?」


 通気孔の中で地図を開き現在地を確認する。

 そこは甲板の近くで最上階に向かう階段とは真逆の方向であった。


(しまったにゃ。余裕がなくなって気が付かなかったにゃ……にゃぁぁ)


 誰も居ない場所に来た安心感からか若干の眠気を覚え、体力回復と精神回復のため通気口の中で少し眠ることにした。

 

 バンッバンッバンッ


 目を閉じるカノープスの耳に聞き覚えのある音が届く。

 

(なんにゃ……これは銃声? 逃げた子どもは発見されたはずにゃ。だとすると……)


 ガバッ


 飛び起きるカノープス。

 もしや、ムジカが悪魔教信徒に襲われているのではないかと彼女は考えた。

 先程までの眠気も忘れ、再び幻術で猫に化け音の聞こえる方向へ向かう。

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