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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
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消滅にて

 美心とアンバーが戦闘をしていた頃……。

 江戸のとある茶屋で1人の女性が団子を食べ終えていた。


「ふふふ、さてと……そろそろですね」


 女性は待たせてあった駕籠に乗り江戸の街に消えていく。

 その頃、美心は吹き飛ばしたアンバーを探していた。


「ん? あれは……」


 美心が見つけたのはボロボロの着物。

 それが辺り一面に散らばっている。

 それを見て美心は妄想した。


(こ、これは……まさかスラムの人達が着ていた……はっ! よく見ればアンバーが逃げ去ったであろう後にボロ着だけが残されている)


 美心の妄想が膨らんでいく。

 血痕は無くボロ着だけが残されている状況で名作漫画の某シーンが脳裏をよぎる。


(そうか……ヤツは人間を吸収するんだ。正確には生体エネ……陰陽エネルギーを。だから血痕は残らずアンバーが過ぎ去った後に残るのは、住人が着ていた衣服だけ……)


 ガクッ


 美心は膝をついて身体を震わせる。

 勿論、恐怖から来るものではない。


(す、すげぇぇぇ! アンバーにもっと人間を吸収させると俺の本気を余裕で超えるのでは……おっと、いかんいかん。さすがにそのために何十万人もの犠牲者を出すわけにはいかんよな。なんせ、江戸は俺の故郷だし。しかし、ヤツめ。溢れ出るほどの陰陽を消して俺に見つからないようにしている……くそっ、あのシーンまんまじゃねえか。これじゃ、アンバーを見つけられず被害者が増えるばかり……)


 美心はふと思い付いた。

 自分の目の届く範囲の人々は守れる自信があるが、目の届かない範囲の人々はどうしようもない。

 しかも、アンバーに吸収された後に残るのは衣服だけ。

 死体でない以上、罪悪感もそれほど感じない。

 それでいてアンバーは人々を吸収し陰陽を高めていく。


(げへっ、げへへへへ……取りあえず目視で探し続けはするが、見つからなかったら仕方ないよな。うん、そうだ。仕方ない仕方ない)


 美心は自身に言い聞かせ目視で探し始める。

 どうやら、アンバーは出会った住人をことごとく吸収しているようで、残された衣服の後を辿っていく美心。


(はぁはぁはぁ……スラムを抜けてしまったぞ。ここから先は人も多い。それに俺の住んでいた長屋も近いし。まずいな……さすがに見つけ出さないと不味いことになりそうだ)


 今更ながら事の深刻さを実感した美心。

 だが、その時であった。


 ガタッ


 近くの倉庫で物音が聞こえた。


(あの倉庫は……廃墟の? 住人が隠れているのか、それともアンバーか?)


 倉庫の中に侵入する美心。

 そこで目にしたのは派手なペインティングされた大型蒸気自動車。

 

「さてさて、早く出してください。目一杯に詰め込んだので窒息死されてしまっては困りますからね」


 大型蒸気自動車の中には裸体で気を失っているスラムの住人がいた。

 美心は驚愕する。


「なっ!?」


「おっと、見つかってしまいましたか。ここは吾輩が死守するので早く出してください」


「へ、へい……」


 ブロロロ……


 大型蒸気自動車は倉庫を出て港の方角へ去っていった。

 

「アンバー……貴様ぁぁぁ!」


 美心は怒声をアンバーに浴びせる。


「ふふふ、連れ去った人がどうなるか知っているようですね? ですが、こちらもこれが事業内容ですので……フゴッ!」


 ヒュゥゥゥ

 ズガァァァン!


 アンバーが話している最中でも関係なしに攻撃をする美心。

 物理攻撃が効かないことを知った美心は拳の周囲に陽の氣を展開しアンバーを殴りつける。

 そして、彼女は収まらない不満をアンバーにぶつけた。


「貴様ぁぁぁ、吸収して強くなったんじゃねぇのかぁぁぁ!」


「なんとっ!?」


 アンバーは驚愕した。

 美心の言っていることが理解できないためだ。

 そう、アンバーが人を吸収する能力は美心の妄想の産物に過ぎない。

 だが、それだけではなかった。


(この女性がすたぁがぁでんであることは明白! ここを発見されるのは時間の問題だと思っていたが、それだけでは無かっただと!? 奴らの情報網を侮っていたか!)


「な、何故……九州だと?」


「吸収!? だって、そりゃ衣服が残されていたから……」


 美心の言葉にアンバーは再び度肝を抜かれる。


(ば、馬鹿なっ! それだけで我らの本拠地を! すたぁがぁでん……恐るべし! 小奴らに手を出そうとしたブラックの失態……いや、今この場では吾輩のミスと言うべきか……)


 アンバーは深く後悔した。

 だが、仮にもセブンシンズの1人。

 アンバーはそのプライドを守るため倉庫奥に隠していたアームストロング砲を取り出す。


「ふふふ、本拠地が知られようともブラックの計画だけは完遂する! ミストレスの命令は絶対なのだ! この悪しき遊郭街を消滅させ……」


 カッ!


 アームストロング砲の砲身から強烈な陰の氣が放たれる。


「しまっ……」


「えっ?」


「あの光は何……こっちに来る!?」


 その光は直線上の遊郭街をすべて消滅させ江戸の街半分を飲み込んだ。

 光を高台から見て微笑む1人の女性。


「おほほほ、やりました! お見事です、墓盛。あの光で痛しの君の両親が眠る墓地も完全に消滅! これには激おこでしょう! さぁ、早く磨呂を殴りに来てください、痛しの君ぃぃぃ!」

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