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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
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査問会にて

 明治44年4月7日。

 太平洋上、日本近海に浮かぶ蒸気機関式超巨大豪華客船。

 日本悪魔教の総本山として建設されたその船にある怨恨の間にて第100回異端査問会が開かれていた。


「まずは尼僧がエゲレスのジャップファームから証拠を隠滅し無事戻ったことを祝うのですじゃ」


「おほほほ! あの状況から生きて帰ってきてくれて実に嬉しいざます、尼僧」


 尼僧は金鶴を睨み怒りを堪えて心の中で叫ぶ。


(私をはめてくれた貴様が何を言ってやがんだ! 金鶴、こいつも所詮はキモいおじさん! いつか、私が喰って腹の中で糞に変えてやるわっ)


「しかし、セブンシンズの1人を失ってしまったのですじゃ。これは大問題じゃぞ」


「またマイナス1かぁ。でも、ええんちゃう? あのおっちゃん、うちのこともいやらしい目で見てきたし、この船の中で働いている従業員の女性も大勢侵されたみたいやから、消えてくれてちょうど助かったわ」


「くくく、ヤツは所詮数合わせに過ぎなかったというだけだよ。やはり、最後に勝つのは真の理威狩を持つ者のみ! ヤツにその才能はなかった……それだけのことだ」


 一向に会議が進行しないため、ミストレスが皆に話しかける。


「居なくなった者のことなどどうでも良いでしょう。さて、話を勧めましょう。ずん……じゃなかった。ブラック、例の件を……」


「例の件?」


 尼僧が疑問に思い、つい口を開いてしまった。

 それに即座に対応したのはピヨリィであった。


「尼僧は知らないのデスカー? スラムと化した吉原遊郭を完全に焼却処分させる計画デース。ミストレスが考案された計画なのデース」


「なっ!?」


 尼僧は驚愕する。

 そして、同時に湧き上がるのは喜びの感情であった。


(あの女性搾取の街を衰退させただけでは飽き足らず、この地球上から完全に消滅させる? ……素晴らしい! なんて、素晴らしいことを計画なされるのですか。ああ、やはりミストレス様だけが私の心の支え!)


「話を進めてください、ブラック」


「了解やで。焼き払う前にあの街に居残る元遊女達はすべて捕らえセベリアへ移送。その中におる女児達は日本人牧場で良い果実になるまで尼僧……分かってるやんな?」


「はっ、健康状態が良い初潮を迎えた女児はすぐに圧縮機にかけ血液を搾り取ります」


「うむ、よろしく頼みましたよ尼僧」


「そ、そこで1つミストレスにお聞きしたいことがあるのですが……」


 尼僧は恐る恐るミストレスに声がけをする。


「尼僧、ミストレス様に直接お声掛けとは何事ですじゃ!」

 

「ホワイト、別に構いません。それでシアン。何を聞きたいのです?」


 誰かに叱責されることは分かっていた。

 だが、このことだけはミストレス自身から許可をいただきたいとの強い思いがあったのだ。

 その内容とは……。

 

「搾り取った子どもの亡骸はこちらで好きなように処分させていただいてもよろしいですか?」


「尼僧! そのような下らないことをミストレスに質問なさるおつもりか!?」


「ジャッピングフォレストでも焼却処分しとったやろ? あ、セベリアやから寒すぎて燃えへんと思っとるん? こりゃ、ウケるわ」


 人間の旨味を知ってしまった尼僧にとってこれは重要な問題であった。

 強いて言えば家畜の女児の血液も飲みたいが血液はジャップストーンの重要な原材料であるため、せめて絞り粕である亡骸だけでも食べたいという思いがあった。


「煮るなり焼くなり好きになさい。尼僧、貴女には期待していますよ」


 尼僧は感動を隠せなかった。


(あ……ああ、亡骸の肉を煮ても焼いても良いなんて何という心の広さ。ここにいる奴らはミストレスの寛大さをもう少し思い知りやがれ!)


「さて、今回の計画ですが……」


「実働部隊はすでに手配済みやで」


「流石ですねブラック。それでどなたが?」


「お……おでなんだな」


 名を挙げたのはセブンシンズの1人である墓盛坐空はかもり ざくう


(まさか、暴食の墓盛と呼ばれるキモい巨漢とその配下のキモいモブ男ども数十人だけであの吉原を焼け野原に変えるつもりか?)


 尼僧は選出されたメンバーに不安を持ちつつも、再びミストレスに声がけするのは失礼に当たると思い何も言わずそのまま見過ごした。


「墓盛、貴様には最新式ジャップストーンを搭載したアームストロング砲を貸し与えるのじゃ。弾数は1。しくじりでもすれば貴様には断食の刑20分じゃ!」


「い、嫌なんだな! 10秒でも口に咥えない時間があるなんて……そんなの耐えられないんだな!」


「だったら、その何故か出来だけは良い頭をよく使ってアームストロング砲を放ち、吉原を巨大なクレータに変えるのじゃ」


「お、おで頑張るんだな!」


 墓盛は両手に大量のポップコーンを持ちながら怨恨の間を出ていった。


「くくく、ヤツのお手並みを拝見できるとはな」


「あのぽっちゃり、いつも何か食ってるやろ。それで気になって月の食費を計算してみてん。そしたらな、あのぽっちゃりだけで査問メンバー全員の2年分くらいいっとんねんて」


「さすが暴食と言うだけのことはあるですじゃ」


「くくく、働かざる者食うべからずというわけか……それは理威狩じゃないねぇ。フードハラスメントに値する。実に不愉快だ」


 銀兵衛はそう言葉を残し怨恨の間を離れていった。


「なんやの、あいつ。訳分からんわ」


「ブラック、別に良いのです。彼には彼の思いがあるのでしょう」


「これにて第100回異端査問会を終了するですじゃ!」


 ザワザワザワ……


 全員が怨恨の間を去った後、バフォメット像から聞こえるミストレスの声。


「ふふふ、痛しの君。この悪事は貴女の逆鱗に触れることでしょう。そして、磨呂を過去一番に憎み強烈な一撃を磨呂に……ああっ、想像しただけでヨダレが……もぉぉ、我慢できないですぅぅぅ!」


 そして、場所は吉原に移る。

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