バトルにて(後編)
「はははは! オレが気持ち良くしてやんからよぉ! あまりちょこまか逃げるな!」
根音はアンセルに向けてドリルを振り回すがいとも容易く躱され続け頭にきていた。
「身体を貫かれて気持ち良いはずがありませんでございますです! 貴方様もその身をドリルで貫いてみてはいかがです?」
アンセルの反抗的な態度に根音は激昂した。
「貴様ぁ、俺は両刀使いじゃない! 掘り専をバカにすんじゃねぇ!」
アンセルは何故、根音が怒り出したのか訳が分からなかった。
(両刀使い? 江戸時代初期に2本の刀を自由自在に扱う宮尊武蔵というお侍様がいたとリゲル様から聞いたことがあるでございますです。まさか、この悪魔ももう一つ武器を隠しているでございますですか!?)
根音の言い放つ一部の言葉を聞き逃していたアンセル。
彼女は根音の攻撃を躱しながら彼の身体を隅々まで凝視する。
(どこかに武器を隠しているはずでございますです。どこでございますです?)
「アンセル、注意して! 悪魔は決して手足が2つずつとは限らない! 相手は人間で無いことを常に意識して戦うのよ!」
「はいでございますです!」
シリウスの助言が功を奏したのかアンセルは見てしまう。
レザーパンツを履いているため確認はできないが局部が異様に肥大化していることを。
そして、先程のシリウスの助言によってアンセルは一つの仮定を得る。
(ま、まさか隠し武器ではなく隠し腕があそこに生えている? 武器と違い自由自在に動かせる体の一部である限り武器より厄介な存在でございますです)
星々の庭園は美心が助けた女の子達だけで結成された秘密組織である。
デネブのように男性に興味津々の隊員も居れば、男というものを詳しく知らない隊員も多い。
そして、リゲルを除くシリウス達3名は後者である。
また家畜として飼われていたアンセルも男というものを知らずにいた。
結果、ここで悲惨な目が起こる。
ギュルンギュルンギュルン!
「げっへへへ! 取ったぁぁぁ!」
一瞬の虚を突かれアンセルの局部にドリルの先端が触れかけた、その時。
(しまったでございますです! 身体を掘られ風穴を開けられ……それって死!?)
死を意識したアンセルは我武者羅に短剣を取り出し根音に刃を向ける。
しなやかな身体をうねらせ局部に触れかけたドリルを見事に躱し、狙うは隠し腕が生えている根音の局部。
「こんなところで死ねませんでございますです!」
ザンッ!
「へっ……?」
ブシュゥゥゥゥ!
大量の血しぶきが根音の局部から吹き出す。
そして、地面に落ちるのは彼の一物。
「ぎぃぃぃやぁぁぁぁ! オレの、オレのムスコがぁぁぁぁ!」
牧場内に響き渡る根音の絶叫。
だが、これで終わりでは無かった。
「息子ですって!?」
「ごほっごほっ……はっ!? そ、そうか! 叡智の書に書かれていた! 悪魔の中には体の一部を分裂させる奴も居るって! 今すぐトドメを刺すんだ!」
「けほけほ……わちが悪魔の息子をやる!」
ドサッ
火事場の馬鹿力を出したアンセルは体力が限界に達しその場に倒れ込む。
「シ……シリウス様……後はお任せしても良いでございますですか?」
「ええ、よくやったわ。後は私に任せなさい」
アンセルの活躍により悪魔に対する恐怖心など何処かに行ったシリウスは根音のもとに歩み寄る。
もちろん、根音はそれどころではない。
出血を止めようと上着を脱ぎ捨て局部を押さえつけるが止め処なく血は流れ続ける。
「ひぃぃぃ、このままじゃ血液不足で死んでしまう! 早く早く止めねぇと……尼僧! 何やってやがんだ! 俺は先に逃げるぞ!」
ピクッ!
根音の発した言葉に4人は反応する。
「尼僧……だとっ! ごほっごほっ!」
「奴も……来て……いる?」
「シ、シリウス様……もしかして既に寺の中に?」
シリウスは冷静に言葉を放つ。
「大丈夫、中のことは六華達に任せてある。でも、リゲル……お願いできる?」
「ごほっごほっ……ふふっ、相変わらず人使いが荒いね。任せておけ」
リゲルは寺に戻っていった。
ベガは根音の一物を肉片になるまで無慈悲に踏み砕いている。
そして、シリウスは根音が落としたドリルを手に掴む。
「ひっひぃぃ! すまん、銀兵衛の命令だったんだ! 尼僧の護衛など真っ平御免だったんだがオレも守護士である以上はミストレスに逆らえなくて……」
「悪魔が命乞い? そうやって命乞いをした人間をどれだけ貪り食ってきたぁぁぁ!」
「ひぃぃぃ!」
四つん這いで逃げようとする根音。
あまりの手前勝手な理由に憤りを隠せないシリウスはドリルの先端を根音に向ける。
「貴方も掘られてあの世に逝けぇぇぇぇ!」
ズンッ!
「おぅふ! け……けつ……あな……確定……」
ドサッ!
奇跡的に突き出したドリルの先端は根音の肛門に直撃しそのまま直腸を通り抜け大腸の壁を突き破り心臓の一歩手前で停止した。
「はぁはぁはぁ……や、やった」
「悪魔を倒せた……うわぁぁぁん、マスターやったよぉぉぉ!」
「ベガちゃん、泣かないでございますです」
歓喜に震えるシリウス達。
「う……ううん? あっつ! うわっ、なんでござるか!?」
プロキオンの声が火の海の向こうから聞こえる。
蒸気自動車の爆風で吹き飛ばされた彼女は炎に包まれることなく一命を取り留めていた。
「プロキオンの声だ!」
「ぐすっ、良かった……無事だったのね」
「シリウス様、残るは尼僧だけでございますです」
「そうね、奴の言ったことが本当なら私達も急いで寺の中を探しましょう。立てる?」
「え、えへへ……さすがに動かないでございますです」
シリウスの肩を借り立ち上がるアンセル。
プロキオン・ベガと共に寺の中へと入って行った。




