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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社活動編
47/263

バトルにて(前編)

 子ども達の訓練開始から数週間が経ったある夜。

 シリウス達は自室で今後の行動について話し合っている。


「で、どうだい? あの子達の中から才能のある子は」


「そうね……7番心珠(ここみ)、24番六華(りっか)、この2人は身体能力がかなり高いわ」


「小豆色の髪の子と鶯色の髪の子だね。なるほど、その2人を選んだか……」


「プロキオンから見て能力の高い子は居る?」


「そうでござるな……3番瑠流(るる)は短剣術がかなり優れているでござる。練習試合で正面からやって2発入れられてしまったでござるよ」


「ほぅ、プロキオンに一撃だけでなく2回も当てるなんて相当な使い手になりそうだね」


「群青色の髪の子ね。あの子は確かに身体能力は飛び抜けているのだけれど、情緒面が安定しないのが玉に瑕ね」


「リゲルは学問を師範しているでござるが、頭の良い子は居るでござるか?」


 スパルタなシリウスに任せていては駄目だと言うことになり、プロキオンは個々の得意分野を生かし師範することを提案していた。

 結果、プロキオンは戦闘訓練、リゲルは一般知識や専門知識、シリウスは総合的に面倒を見る役分けをすることになった。


「ふふっ、しっかりと見定めているよ。7番心珠は身体能力だけでなく頭脳もかなり優れている。あとは……そうだね。5番穂香(ほのか)と8番古織(こおり)はカペラのように後方支援に就かせると前線で戦う僕達の助けになってもらえると思う」


「わちの報告も役に立った?」


「うん、さすがねベガ」


 ベガの役割はと言うと……。


「別に良いもん……わち、わち……小さいし……」


「ベガ、君の役割は非常に重要だ。僕達、教官の目の届かないところで子ども達が何をしているかを知り僕達に知らせる生徒になりきる。格好良く言うとスパイだ。君の報告によって僕達の指南も変える必要があるからね」


「スパイ……うん、わち頑張る!」


 ベガはリゲルの提案に目を輝かせ喜んで子ども達と共に寝食を共にすることになった。


(ベガ、そこはもう少し粘って見せないと……)


(相変わらずチョロいでござるな、ベガ)


(ふふっ、僕の手にかかればベガを手の平の上で泳がせることなど些細なこと)


 そういった経緯があり、ベガは子ども達の学友として、はたまた教官達にチクる役として今は心珠と同室で眠っている。


「それじゃ、7番心珠は明日からアンセルとして正式に星々の庭園(スターガーデン)に入隊させると言うことで良いかい?」


「マスターの叡智を直に受けていないけれど責任は私が持つわ」


「大丈夫でござるよ。マスターも喜んで受け入れてくれるでござる」


 ホーホーホー


 月夜の明かりとフクロウの声が眠気を誘う。

 既に夜も遅く子ども達は寝静まっている。


「さて、僕達もそろそろ寝よう」


「それじゃ、拙者は自分の部屋に戻るでござるよ」


「おやすみなさい」


 明かりを消しシリウス達も眠る。

 そして、数時間が経った頃……。


 ドドドドド!


 轟音が牧場の中に響き渡る。

 

「な、何だ!?」


「この音は瘴気を吐き出す車の音に似ている?」


 ダンッ!


 扉を激しく開けプロキオンが叫ぶ。


「奴らでござる! 門が解放され車らしき影が1台侵入してきたでござるよ!」


 プロキオンは夜目も効き視力も常人以上に高いため、目が覚めた直後にソレを見ることができた。

 

(いつかこの場所を取り返しに来るとは思っていたけれど……いくらなんでも早すぎる。尼僧の首の骨はプロキオンの手によって折られたのは実際に目撃していた。それなのにもう完治したっていうの?)


 シリウス達は襲撃の想定はしていたが今回のことは完全に想定外であった。

 シリウスの驚く表情を見てリゲルは声をかける。


「すまない。僕の最悪の想定を君に話しておくべきだったよ」


「最悪の……想定ですって?」


「あの車に乗っているのは尼僧本人ではない。悪魔だ、悪魔が自らここに来たんだ。ずっと姿を見せないことに安堵していたが、ここに来てまさか悪魔そのものが来るなんて……」


 当然のことながらリゲルはそんな想定はしていなかった。

 ただ、この状況でも冷静を装いたいリゲルは思い付いた設定をシリウス達に話したにすぎない。

 だが、その話を真実として受け止めるシリウスとプロキオンは表情が青ざめる。


「悪魔……遂にこの時が……」


「兎に角、食堂へ向かうでござる。襲撃時に皆には食堂に集まるよう指導しているでござる」


 3人は走って食堂に向かうと子ども達は集まっていた。


「やっと来た。シリウス達、遅い――」


「ベガ!」


 ベガは教練を受ける側であったため、日々の練習が身に付き行動をすぐに起こすことができたのが功を奏していた。

 すべての部屋を心珠と手分けで見て回り、目覚めていない者も起こし連れてくることができたのであった。


「ふふっ、さすがだね。ベガ」


「シリウス様、わたくしを含め34名ここに確認済みでございますです」


「心珠……いいえ、アンセル。貴女も一緒に来なさい。他の者はここで待機! 六華、穂香、古織ここは任せても良い?」


「は、はひ! 頑張るます、はい!」


「おけ!」


「はぅぅぅ、すみませぇぇん。完璧な私なんかを頼っていただき、他のみんなに頼りにされてすみませぇぇん」


 新たにアンセルを含めシリウス達5人は寺の外に出る。

 蒸気自動車は停車しており人の気配は無い。


「誰も乗っていないの?」


「いや、相手は悪魔だ。姿そのものが見えないのかも……」


「透明ってことでござるか!?」


「そんなの無理だよぉ」


「ベガちゃん、お願いだから泣かないでございますです」


 ジ……ジジジ……


「拙者が見てくるでござる。皆はそこを動かぬよう……」


 奇妙な音が車からかすかに聞こえる。

 不審に思ったプロキオンは他の4名に動かぬよう促し1人で車に近付く。


 カッ!

 ドォォォォン!


「爆発した!?」


「プロキオン!」


 正面が炎に包まれプロキオンの生存が確認できない。

 次の瞬間、背後の地面から何かが飛び出る。


「シリウス様、後ろ!」


 咄嗟に気付いたアンセルがリゲルを押し倒す。


「わわっ!」


 ギュルンギュルンギュルン!


「はっはぁ! あの状況下でオレに気付くなんて流石だぜ!」


 ドリルを持ちパンクロックな格好の男がシリウス達の前に立つ。


「だ、誰!?」


「人間!? 悪魔じゃない?」


「え、そうだったらなんとかなるかも……」


「ベガちゃん、油断しちゃ駄目だって」


 見たことのない侵入者を前にシリウス達は構えを取る。

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