広間にて
「俺達が爆買いしました会で入信者は何名でした? あまり増えなさそうに思えましたが……」
その会が堀の殺人衝動を満たす単なる集団リンチであることを尼僧は知っていた。
何故ならば全容は尼僧が考え出した内容であるためだ。
まず、仲睦まじい夫婦の仲を見かけたら悪魔教信者の女性が町奉行である堀に虚偽の内容を告げる。
その後、夫の方が適当な冤罪で捕らえられ特別に民衆の前で極刑に処すといった内容であった。
罪名のほとんどは強姦などの性暴力。
妻だけは最後まで信じ続けるが、悪魔教信者で男嫌いの女性達が被害者アピールを続けることで最後には妻も夫を信じきれなくさせていく。
それでも夫を信じ続ける妻は『ねぇよ男性』という烙印を押され悪魔教信者の女性達から差別され奴隷のような生活をさせられることになった。
「20名ほどだな。ねぇよ男性になった女共は俺の施設で強制労働させている。がははは、幕府には未亡人のための救済施設として申請しているから支援俸禄もたっぷりいただけたぜ」
「それは良かったです。男共、特にジャップ男性はこの世界から駆除しなければなりません。それを同じ男である堀さんが行うのですから相手にとっては皮肉なものですけどね」
暫く話した後、堀が尼僧にあるものが欲しいと願い出る。
「新型阿片? 町奉行である貴方が何に使うんです?」
「そりゃ、新たに増えたねぇよ男性共をわからせるためだぜ。なぁ、良いだろ?」
どうやってわからせるかはご想像にお任せする。
決して町奉行である堀がキメ○クをして、ねぇよ男性と言われる女性をわからせる訳では無い。
「ふふふ、なるほど……わからせるため。確かに調教は必要ですね。特に男が居ないと生きていけないねぇよ男性には。良いでしょう、後で用意させます」
「がははは、助かるぜ。んじゃな」
堀がカジノに戻っていったところで尼僧もプールのある甲板へと足を運ばせる。
視力が極端に悪いためプールに到着した頃には会議の始まる時間が目前になっていた。
(クソッ、春夏秋冬美心にやられた視力だけはどんな回復陰陽術も効果が無い。そのせいで私は不便を強いられている。クソックソックソッ!)
尼僧の表情が再び怒りに満ちていく。
その時だった。
「オゥ、Cさんデ――ス! お久しぶりデ――ス!」
驚くほど布面積の少ない水着を着た金髪の女性が尼僧に話しかける。
「はぁ……ピヨリィ。何なのよ、その格好」
ピヨリィ・ノースフィールド、尼僧と同じ悪魔教の幹部の1人である。
「問題ありまセ――ン。ここは泳ぐ場所デ――ス」
「だからといって……いえ、もうどうでもいいわ。それより私に話したいことがあるとPから聞いたけれど?」
「そうデ――ス。この間、休暇を取ったのでチャウセン観光へ行ったのデース」
「へぇ、チャウセン。素敵な所じゃない。日本が近いのは気に食わないけど……それで?」
「路頭に迷う男を大量に買イマシタ――。おかげで肌もベリーベリースムースになりましたデース。いやぁ、やっぱりリフレッシュは必要デスネ――」
不機嫌な尼僧の表情がさらに悪くなる。
(あ――、こいつはそういう奴だった。ただの自慢話に付き合うつもりなど毛頭ない。そろそろ怨恨の間へ向かうか)
信者が増えてきた悪魔教でも皆が共感してもらえる同類とは限らない。
ピヨリィは尼僧の思想に共感しつつも、欲望のままに動くことを良しとする悪魔教の教えに従い性欲が昂ぶった時は買い専をしていた。
それが気に食わない尼僧だが、いざとなったら頼りになる相手のため付き合っているに過ぎなかった。
「へ、へぇ……おっと、そろそろ会議に時間ね。ここらへんで失礼するわ」
「オゥ、もうそんな時間デスカ――。待ってくだサーイ」
足早でプールから離れようとする尼僧の後を水着のままで付いてくるピヨリィ。
一方的に話し続ける言葉を適当に聞き流し怨恨の間へ向かった。
ガコン
超豪華客船の最上階に存在する怨恨の間。
中は数本の蝋燭の火だけでかなり薄暗い。
中心部には巨大な円卓が存在し、すでにほとんどの者が座っていた。
尼僧とピヨリィも自分の席に着く。
円卓を囲む中の1人が賢者の石を円卓の中心に置き呪文を唱え始める。
(W……日本悪魔教の四天王で第壱番席を与えられている人物。あの御方の次にこの教団内で発言力を持つ奴の名は網壁蝨狂香。その手腕はあの御方も認めるほどで日本悪魔教の活動費のほとんどは奴からのお布施だという。私も資金の3分の2以上、お布施をしているがこいつのせいでいつまで経ってもあの御方に直接褒められたことがない。もっと、もっと稼いで巨額のお布施をしなければ!)
「オンキリキリケツバット、オンキリキリケツバット! ……ミストレス様、四天王を含む83名ここに集結しましたのですじゃ」
ブゥン
賢者の石が光り輝き悪魔バフォメットのホログラムが映し出される。
「これより第99回日本悪魔教異端審問会を始める」
機械で作ったような声がバフォメット像から発し怨恨の間に響き渡る。
(偉大なるミストレス様。この世で最も悪魔に近い御方だと言われているが誰もその御姿を見たことがない謎多き御方。唯一、分かるのは日本国内のどこかで欲望のままに優雅な暮らしをしており面河淳美と名乗り日本国内から俸禄をチューチューしているということだけ。しかし、私には分かる。この方はすべての女性の味方であり私の最終目標と同じところを見ていると!)
尼僧は会ったこともない面河を心の底から信奉していた。
「さて、まずはいくつかの成果報告をしてもらうのじゃ」
1人の女性が挙手をし資料を片手に話し始める。
「では、うちから報告させてもらいまひょか。吉原で抵抗を続けていた遊郭の旦那の暗殺に成功したんでこれにて日本国内の花街はほぼ全滅やで」
日本悪魔教が設立されてから江戸幕府も反対できないほどの大きな力により様々なものが規制されていった。
特にこういった類のものは目を付けられやすく撲滅対象の標的にされやすい。
結果、日本の性犯罪率は激増し女性が夜道を歩くのは危険な状況となった。
「おおっ!」
「ついにやったか」
多くの者が驚きと達成感を感じ感嘆の言葉を隠せなかった。
そしてバフォメット像から再び機械音声が流れる。
「実に素晴らしい。これで遊女達は働き口がなくなり貧困に悩まされ不幸になるでしょう。そこを我々が支援する団体を作り幕府から俸禄を吸い上げる手筈なのですね?」
「あとは性犯罪率が高まってくれたおかげで被害にあった女性を助ける団体も作り藩や幕府から俸禄チューチューするつもり計画やねん」
日本悪魔教は自身の欲望のためなら何でもする団体である。
一般人が不幸になるほど利益に繋がる不幸ビジネスを主な目的としていた。
「くくく、さらに性犯罪を犯した男共を駆除していけると……実に理威狩だ」
「せやねんけど、ミストレス。まだ懸念事項が一つ残っておまんねん」
「くくく、それは理威狩じゃないねぇ。皆の感激を削ぐようなことは理威狩に反するよ、B」
「話すことを許可します」
「京都の島原やねんけど、そこで働いていた遊女が全員春夏秋冬財閥の庇護下に入ったようでなぁ。新たな遊郭を建てようとしとるみたいなんや」
ザワザワザワ
円卓を囲む皆が声を上げる。
「せっかくの不幸を利用できる金づるをあの財閥が奪ったってのか!」
「くそっ、春夏秋冬財閥め! 女共は売り買いできるモノじゃねぇんだぞ! それは私達のモノだ!」
「春夏秋冬財閥、まるで悪魔のような団体だな!」
見事なダブスタを発揮していることに誰も気付いておらず、どの口が言うかなどと言ったツッコミはよしておこう。
そして会議は続く。




