旅立ちにて
場面は再び移り二条城。
スピカ、コペルニクス、ムジカの3名は二条城を前に違和感を覚えていた。
「いつもの重厚な警備がない……」
「ん、確かにおかしい」
「でも、これなら簡単に潜入できるの」
「ああ、そうだな。急ごう」
シュッ
堀をいとも簡単に飛び越え塀を乗り越える3人。
「「!!!」」
美しかった庭園が荒れ果て侍達の無惨な遺体を目にし驚愕する。
「こ、これは……」
「比奈乃様が言った通り。敵襲があった。ただ、それだけのこと」
「カノちゃんは……」
「探そう。2人とも警戒を怠るな」
まるで地獄のような惨劇の現場を進む。
生存者はいないか確認しながら進むが皆が皆、腹に巨大な穴を空け倒れていた。
「酷い……」
「凄い威力の……大砲なの?」
「大砲なら爆音で周辺の人々が気付いていてもおかしくない。これはおそらく……素手の攻撃だろう」
「素手? 言いえて妙……いや、真実」
「きっと音の出ない攻撃なの」
本丸御殿に差し掛かった時、ムジカが一目散に走り出す。
「カノちゃん!」
「いたか!?」
「ん、こっち」
3人が気の失ったカノープスに近寄る。
今にも死にそうな状況に困惑するムジカ。
「ああっ、カノちゃん! た、た、た、大変なの!」
「くそっ! 比奈乃様の言った通りだった!」
「ん、許せないね。これも長州藩士がやったんだと思う」
「独立宣言をした時はまだ他人事だったが、某らの仲間を傷付けたとなれば許せはせん!」
「カノちゃんをこんなにした長州藩、許せないの!」
ムジカがカノープスを背負い3人は屋敷に戻る。
今にも死にそうなカノープスをデネボラが治療している間にスピカはレグルス達待機組に説明をした。
「くっ、なんてことですの! カノープスが……」
「大老の死を探ろうとしたカノープスを消そうとしたのかな?」
「いや、二条城で働く者らを全滅させていたのだ。きっと、不運ながら偶然居合わせただけに過ぎないと思う」
「幕府の施設を襲うなんて、今の状況じゃ長州藩しか考えられないですわね」
「ああ、お義母様を派遣する必要があるほどの強敵が向こうには居る。これだけでも大きな情報だ」
「けれど、あたしらもやられた仲間の借りは返す必要がある。カノープスは大事な仲間だし潜入のスペシャリスト。この痛手は大きい」
「そうなの! ムジカがけちょんけちょんにしてやるの!」
「おいどんも同じ考えでごわす」
皆、殺る気マックスな心情で旅立ちの日を迎える。
メンバーはレグルス、スピカ、アルデバラン、コペルニクス、ムジカの5人。
そこに観光目的の比奈乃と静。
ヒーラーであるデネボラはカノープスが完治した後で一緒に来るとのことだ。
「レグルス、他のメンバーは集められなかったのか?」
「フォーマルハウトは極上の玉鋼とやらを探しに行ったきり戻ってきていませんわ。アルクトゥールスはあっしより強いやつに会いに行くと言い日本を放浪中ですし……ミモザに至っては音信不通ですの」
「くっ、あいつら……このような大事な時に」
「ん、帰ったら断罪する予定」
「リギルちゃんとケンタウルスちゃんはどうなの? きっと四国で歌を歌って周ってるの」
「ハダルの3名に手紙を送って置きましたわ。きっと、今日か明日にでも手元に届くかと……」
「ふむ、四国からなら距離もそれほど離れていないでごわすな」
「備前国辺りで合流できたら良いのだけれど……」
山陽道を西へと進むレグルス達。
1日目の夜は姫路藩にて宿を取ることにした。
………………。
「ニチャア……奴らが星々の庭園の一味だミ。若い女子で固まって動くとは我らを警戒しているのか、それとも誘い出すための罠なのか試してみるミ」
レグルス達を見て不敵な笑みを浮かべる謎の女性。