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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
第三次長州征伐編
213/263

伏見にて

 美心がコンコンへ行って数日が経ったある日。

 彼女の秘書を務めるレグルスは窮地に陥っていた。


(まずいですわ! まずいですわ! まずいですわぁぁぁ! お義母様、今日は幕府の大老、立花様との会食が控えているというのに……あああ、どうすれば!)


 立花豆恭たちばなまめゆき……数年前、美心に呪物の排除を依頼した後も将軍の補佐役として江戸幕府をまとめ上げている。

 新たな頼み事を依頼する予定で美心との会食を今夜に控えているのだった。


「レグルス殿、どうされますかな? お相手方も大変忙しい御方。ここでお会いできないとなると春夏秋冬財閥として大きな汚点となりますが……」


「ええ、信濃条さん分かっておりますわ。お義母様の顔に泥を塗るような事は決してしてはならない。こうなれば……」


 レグルスは建造中の春夏秋冬邸へと足を運ばせる。

 星々の庭園(スターガーデン)退院の寄宿舎とは同じ敷地内ながら広大な土地であるため徒歩でも10分はかかる。


「あ、レグルスちゃんなの。ここの装飾品を探しているんだけど何処にあるの?」


「ああ、それなら……ほら、あそこに」


「あったの! すぐに取り付けてくるの」


「ムジカ、カノープスは見ませんでした?」


「カノちゃん? カノちゃんなら地下室の壁紙貼りをしているところなの」


「分かりましたわ」


 建造中の春夏秋冬邸地下室へと赴くレグルス。

 今夜の会食は絶対に実行させなければならない。

 そのための解決策としてカノープスが必要不可欠なのである。


「にゃ? レグルス、どうかしたかにゃ?」


「カノープス、貴女に重要な任務がありますの」


「重要な任務? あ―――、無理だにゃ。にゃろは今日中にここを仕上げ……」


「工事なんて明日にでも出来ますわ。貴女だけにしか出来ないことが今日必要なんですの!」


「にゃ!? いきなり大きい声出して……驚いたにゃ。……分かったにゃ。話だけは聞くにゃ」


「実は今夜、幕府の大老との会食を控えておりまして……」


「にゃ? それなら主が……あっ!」


 カノープスは野生の勘でレグルスの頼み事が理解できてしまった。

 彼女は星々の庭園(スターガーデン)内でもリギルと1~2位を争うほどの陰陽術に長けた人物。

 さらに陰陽幻術は彼女だけにしか使うことが出来ない。

 レグルスの頼み事とは……。


「そうですの。お義母様がいない中、会食を成功させるには貴女がお義母様に化けていただく必要が……」


「無理だにゃ! 陰陽幻術で姿形は似ていても声でバレてしまうにゃ!」


「それなら大丈夫ですの。フォーマルハウトが作ってくれたこの蝶ネクタイ型陰陽変声機でお義母様の声も完全再現が可能! 十分騙し通せますわ!」


「大老相手に騙す気満々で何言ってるにゃ! 絶対に嫌だにゃ! もしバレたら打ち首獄門確定だにゃ! にゃろは絶対やらないにゃ!」


 断固として拒否し続けるカノープス相手にレグルスは最終手段を取る。

 

「確か今夜の会食では飛騨牛の最高級シャトーブリアンステーキが出る予定ですのに……ああ、残念ですわぁ」


 チラッ


 カノープスの手が止まり耳をピクピクと動かしている。

 彼女の大好物は肉と魚。

 幼い頃から一緒に育ってきたレグルスはカノープスを動かす手段を十二分に心得ていた。


「に……肉にゃんかで……にゃろが……動くはず……」


「ええと、今夜の会食でお魚さんは……あら、そうでしたわ。三陸海岸沖で獲れたサンマの塩焼きにアジの天ぷら、それとマグロのお・刺・身。どれも美味しそうですわぁ」


 チラッ


 カノープスの口からよだれが垂れている。

 最早、我慢の限界のようだ。

 だが、ここで屈してはならない。

 何故ならカノープスはチョロい奴だと思われることだけは是が非でも避けたいと思っているためである。


「にゃ……にゃろが……魚にゃんかで……屈してたまるかぁぁぁ!」


「そうですか、仕方がありませんわね。大食漢のお義母様のため、おかわり自由と料亭には伝えておいたのですが……」


「にゃ!? シャトーブリアンもかにゃ?」


「ええ、勿論ですわ」


「行くぅ♡」


 やはり、チョロいカノープスであった。

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