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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社再結成編1
211/263

四国にて(其の十参)

 激昂し短刀を構え五十部に突撃するリギル。

 怒りで視界が狭くなっていることを自覚できていない。


「リギル、危ないのら!」


「チッぎゅぅぅぅ!」


「!」


 ズガァァァン!


 五十部の背後に巨大な何かの影。

 体長は優に10メートルを超えているそれはゆっくりと動きリギルにパンチを繰り出す。


「な……何?」


「あれは金剛頂寺で見た巨大繭の中身かもしれないのら!」


「ぎひっ、そうかそうか。お前達もアレを見たのか。そうじゃ。これこそ、そこのチー牛共がこれから変異しようとしているチー牛の最終形態! その名もチー和牛! ぎひっぎひっぎひひひひ! さぁ、また尻尾を振って逃げるのか? それも良いぞ。すぐに追いついてボコボコにしてやるがなぁ! ぎーひっひっ!」


 とことん2人を煽り散らかす五十部。

 弱っている者を楽しく死体蹴りすることも悪魔教の教義なのであった。


「リギル、ケンタウルスはおいらに任せるのら! 五十部から笛を!」


「ええ、奪ってみせる!」


「チッぎゅぅぅぅ!」


 ブォン


 チー和牛はその巨体さ故か動きがかなり遅い。

 そこに勝機はあるとリギルは考え対処する。


「第5領域風陰陽術、鎌鼬!」


 バシュッ!


「くっ、大きすぎて切断できない!」


「ぎひっぎひっぎひひひひ! さぁ、尻を振って逃げるのじゃ! 追いかけて殺すがなぁ! ぎーひっひ!」


「このぉ! 第5領域炎陰陽術、豪炎!」


 ブアッ!


 巨大な火球がチー和牛を炎に包む。


「チッぎゅぅぅ!」


「ぎひっ! 無駄じゃ無駄じゃ。その程度の炎で倒せる呪物では無い」


「これならどうかしらね? 第5領域風陰陽術、竜巻!」


 ブワッ!


「なんじゃ!? その技は!?」


 炎と竜巻がかけ合わさり火災烈風が発生する。


「チィィィィィぎゅぅぅぅ……ぅ……ぅ……」


 パチパチパチ


 数分間、発生し続けた火災烈風によりチー和牛は焼き尽くされ炭と化していた。


「ば……馬鹿なっ! チー牛をかけ合わせた最高品質じゃぞ! あのような奇妙な術に敗れるはずがっ!」


「技のリギルと呼ばれる彼女を見誤った五十部の負けなのら。リギル、早く笛を!」


「ええっ! 臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前! 封!」


 バチッ!


「なんじゃ!? 身体が!!」


 リギルはすかさず五十部の動きを封じハダルに合図する。


「これが牛笛なのら?」


「か、返せ! それは貴様なんぞが使って良いものではないのじゃ!」


「ピィィィィィ!」


 ハダルが牛笛を大きく吹く。

 すると……。


「チぎゅ?」


「チぎゅっ」


「チィぎゅ」


「チィィぎゅっぎゅ」


 互いにチーズを吹き合うチー牛達が動きを止めハダルに向かって姿勢を低くし頭を垂れる。


「さぁ、どうしてやるのら?」


「ひっ……儂は悪くないのじゃ! 悪いのは世間のオス共じゃ!」


「何処までも残念な思考ね。貴女は万死に値すると言ったはずよ? 貴女が作り出したチー牛に痛めつけられると良いわ」


「そういうことなのら。ピィィィィ!」


 再度、ハダルが牛笛を吹くとチー牛達はゆっくりと起き上がり五十部に近付く。


「や……やめ……」


「「チィィィィィぎゅぅぅぅ!」」


「ぎゃぁぁぁ! 助けるのじゃぁぁぁぁ!」


 ドゴッバキッドゴッ!


 200を超えるチー牛にリンチされる五十部。

 それは半刻ほど続き、ハダルが牛笛を吹く。


「ピィィィ! もう、止めるのら」


「「チぎゅ」」


「た……たしゅ……け……」


 ボロボロになった五十部を見てリギルは陰陽術を解く。

 

「終わったのら」


「いいえ、まだよ。ケンタウルスやこの人達を元の姿に戻さなきゃ」


「でも、その手段がないのら」


「ここは四国よ。お遍路して弘法大師の奇跡に頼ってみるわ。ここのみんなを連れてまた1番霊場からね」


「そういうことならおいらも付き合うのら。レグルスへの報告はいつでも良いし」


「「チぎゅ」」


 そうして、200ものチー牛と共に徳島藩へ戻り霊山寺からお遍路をすること早44日目。

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