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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社再結成編1
203/263

四国にて(其の伍)

「うわぁぁぁん! お姉ちゃん! チ―――!」


「落ち着いて! 絶対に治るから! ここは弘法大師様の生まれの地、四国。お遍路すれば様々な難病や障碍も治ったと伝え聞くわ! だから……ね?」


「うん、お姉ちゃんの言う事はいつも正しいから……チ―――」


 落ち着きを取り戻したケンタウルスだが全裸のままでは外へ出せない。

 何か布がないか辺りを探るリギルはその時、薬師如来像の側に倒れている僧侶を見つけた。


「あの……大丈夫ですか?」


「う、うう……貴女は……ああっ! そうだ、変な奴らが突然押し入り……な、なんだ! この地獄の様相は!」


 その者は安楽寺の住職であった。

 変わり果てた本堂内を見て顔が青ざめていた。


「不審者は私が退治しました。私は春夏秋冬美心の使いの者。この手形を見せれば分かっていただけるかと……」


「おお、それは確かに春夏秋冬財閥の紋章。美心殿は霊場八十八ヶ所全ての寺に快適なお遍路が出来るよう支援金を出資してくださる御方。貴女のことは信じましょう。で、そこの……すみません。つい見てしまって……」


「いえ、見ての通り全裸なので何か着るものがあれば……」


「持ってきます」

 

 住職の協力で湧き出ている温泉で身体を洗い流し服を着るケンタウルス。

 醜い半身が隠れる白衣姿の彼女にリギルは頭を撫でる。

 

「私も白衣に着替えたわ。一刻も早く霊場をすべて周り元の姿に戻しましょ」


「うん、お姉ちゃん。チ―――」


「いえ、流石に夜中の参拝はご勘弁を……御朱印も日中しか出来ないので……」


 住職からお遍路の基本を聞き、この日の夜は寺の一角を借り床に就く。


「お姉ちゃん、アタシ……元に戻るよね? チ―――」


「ええ、弘法大師様のお力添えがあれば貴女に憑いた悪魔も祓えるわ」


「うん、えへへ。お姉ちゃん、近くに寄っていい? チ―――」


「うん、良いよ。おいで」


 ……翌朝。

 住職に挨拶を済ませると霊場を2つ飛ばしていたため第4番霊場大日寺まで戻る。

 そこで参拝を済ませ御朱印をもらうと次の霊場へと足を運ぶ。


「ぶひぃ? 今日はライブないのかな?」


「リギルちゃんやケンタウルスちゃんの姿が無いぶひぃ」


 ライブを楽しみに大日寺に集まるファン達。

 彼らの前に出て歌い踊りたい気持ちを堪え足早に去る2人。


「ごめんね、みんな」


「大丈夫よ、みんな優しいから許してくれるわ」


 1日で第10番霊場切幡寺まで周ると、その日は山門近くでキャンプをした。


「次の霊場まで遠いね」


「ええ、明日は13番霊場まで行ければ十分かも知れないわね」


 地図を見ながら明日の行程を話す2人。

 夜もふけ就寝している時、それは起こった。


 ピク


「何の気配? チ―――」


 眠っている姉を起こさないようにゆっくりとテント外に出るケンタウルス。

 すると遠くから3人の人影が見える。

 目深のフードや帽子を被り素顔が分からない。

 だが、怪しさだけはその姿を一目見ただけで十分であった。


「そこで止まって。チ―――」


 テント近くで戦闘になれば姉を巻き込みかねないと思い、自ら3人の人影に近付くケンタウルス。

 3人は口から大量のチーズを垂れ流しながら大きく叫ぶ。


「「チィィィィぎゅぅぅぅ!」」


 ケンタウルスの中途半端な変異がここで功を奏した。

 野生動物並みに研ぎ澄まされた感性はチー牛に寝込みを襲われること無く事前に彼女を警戒させたのである。

 

「お姉ちゃんはやらせない! チ―――!」


 目にも止まらぬ動きで牽制し1人目のチー牛の顔面をグーパンで殴る。


「チィィィィぎゅぅぅぅ……ぶへぇぇぇ!」


 ヒュゥゥゥ……

 ズガァァァン!


(えっ? 何……この力? チ―――)


 本来のケンタウルスの力はプロボクサー並みの力だが、ここでも中途半端な変異の影響が現れていた。

 そのパンチはベガの怪力に近いパワーを帯びていたのである。


「これならアタシ1人でもやれる! チ―――」

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