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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社再結成編1
187/263

辛国にて(其の伍)

「ギャオオオン! ギャオオオン!」


「小夜子!」


 隊員の1人が呟悲壮女つゐふぇみへと変異してしまう。

 天を仰ぎギャオる小夜子。

 次に狙いを付けたのはまたもや怪我をしたモブ隊員。


「こいつら! 集団で各個撃破していくつもりでござるか!」


「利には適っているわ! でも、私達はこれ以上やられるわけにはいかない!」


「シリウス、少し時間をくれないか? 僕ならなんとか出来るかもしれない」


「分かったわ!」


 そう言うとリゲルは船内へと戻っていく。

 その状況を見逃さなかったミモザは思う。


(流石に無理だと判断しリゲルがカペラを呼びに行ったネ。これでデータを取れるネ。さ、早く出てくるネ、カペラ)


 貨物船から視線を逸らさず観察し続けるミモザ。

 時間が経つ事にモブ隊員達が呟悲壮女へと化していく。


「くっ、もう10人程度が敵になってしまったでござる!」


「わぁぁぁん! リゲル、早くしてよぉぉぉ!」


「ベガ、奴らから目を逸らしては駄目!」


「えっ?」


「ギャオオオン! 人間に限らずメスは優秀で強いオスを求めるから私達はまだ求めている途中なだけぇぇぇ! ギャォォォン! 決して婚期を逃したわけではないぃぃぃ! ギャォォォン!」


「ひっ!」


 弱気になった者を躊躇なく襲う習性のある呟悲壮女達は一斉にベガへと牙を向ける。


「ベガぁぁぁ!」


 その時だった。

 

 ドサッ

 ドサドサドサッ


 突如、100を超える呟悲壮女達が倒れていく。

 皆、意識を失っているだけで額に浮き出ている恨の一文字は消えていない。


(何が起こったネ!? あれほどの数の呟悲壮女を全滅させられる人物など……はっ!? ま、まさか!?)


 ミモザは背筋が寒くなりつつもデータ収集に務める。


(こんな芸当ができるやつなんてカペラしかいないネ。彼女は最弱だと皆に思わせているネ。恐らく、唯一カペラの真の力を知ってしまったリゲルが助けを求めた結果がこれネ。なんという陰陽力……これじゃ伏魔殿パンデモニウムが瓦解してしまうかもしれないネ。一度、ピヨリィ様のもとへ戻るべきネ)


 ミモザは勘違いしたまま、その場を離れヴェクトリヤピークへと戻っていった。

 一方、シリウス達は呟悲壮女へと化した者達の手足を縛り動きを封じた後、一度船内へと戻る。


「やぁ、どうやら上手くいったようだね」


「リゲル、やっぱり君が?」


「ああ、カペラが教えてくれたんだ」


 満面の笑みでシリウスの問いに答えるリゲル。

 だが、リゲルの言葉に皆の表情は曇る。


「……そうでござったか」


「リゲル、カペラはね……その……」


 この3ヶ月の船旅の間にシリウス達は各自カペラの死を乗り越えるため独自の訓練をしていた。

 リゲルは船倉に引きこもり独り言を呟くことで自身の精神を落ち着かせていた。


『カペラ様、僕が必ず生き返らせてみせるよ。貴方様に出来たことなんだ。僕だって絶対にやれるようになるよ』


『楽しみに待っているでありんす』


『ふふっ……カペラ様♡ またブヒブヒ言わせてね♡』


 だが、その独り言も次第に酷くなっていき、やがてリゲルの中にカペラの人格を作り出してしまう。

 その事に気付いたシリウス達はリゲルにカペラが死んだことを何度も話すがリゲルが受け入れることはなく今に至る。


「しかし、シリウス物は考えようでござるよ。リゲルがカペラの虚像を追うようになったおかげで彼女自身引きこもりから脱却できたでござる」


「うん、それにわちが見たカペラしゃまの陰陽術に近いものまで再現できていたよ。さっきのもそう」


「でも……いえ、確かにそうね。リゲルの戦力が大幅に上昇しているのも事実。分かったわ。当面の間、リゲルにカペラの死を理解させることはしないようにする。みんな、いいわね?」


「了解ですます!」


「はぅぅぅ、分かりましたぁ。簡単に理解できてしまってすみませぇぇぇん」

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