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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社再結成編1
177/263

草津にて(其の伍)

(あれってレイドボスずら。オラ、面倒なことには首を突っ込まないずら。無視してオラも湯釜へ……)


 足早に女性観光客達の横を通り過ぎた時、横目に彼女らを見るアルタイル。


(ずらっ!? 怖い顔して血の涙を流している……額には恨の一文字。怖いずら! もしかして悪魔ずらか!?)


「「ギャオオオン……ギャオオオン……子持ち女性は脳みそに精子が詰まっている……ギャオオオン」」


 女性観光客は百合子が源泉に流した呟憤怒女つゐふぇみ化促進剤T型に触れ感染した者達である。

 その数も徐々に増え草津の温泉街からぽつりぽつりと殺生河原に集結してきている。


「ギャォォォン!」


「ギャオオオン!」


 呟憤怒女達の咆哮を耳にするたび頭に何やら記憶のない光景がフラッシュバックする。

 アルタイルも汚染された源泉に先ほどまで浸かっていたため、呟憤怒女の咆哮が鍵となり呪物が活性化してしまったのである。


(何ずら? 頭の中に映像が……ひっ! 嫌ずらっ! オラは……オラは……ずらぁぁぁぁぁ!)


「ギャオオオン! ギャォォォン! 男叩きの最先端! 男児なら反撃してこないから好き放題叩けるずら! ギャォォォン!」

  

 必死の抵抗にも屈し呟憤怒女と化してしまうアルタイルは他の観光客の並びに加わりレイドボスの後ろを付いて歩く。

 一方、その頃美心はというと……。


「んはぁ、やっぱ万座の姥湯もやっぱ捨てがたいぜぇ」


 1人で万座温泉を満喫していた。

 彼女は湯の中で目を閉じ思考を巡らせる。

 幾度となく婚約破棄する困った娘のアルタイル。

 アラサーであるとこの時代には売れ残りルートまっしぐらなことをまるで気にしていない彼女にどうやったら結婚してもらえるかを考える。

 既に草津村村長の息子とのお見合いは用意したものの、また逃げられることも想定してコペルニクスを連れてきた。

 

(コペルニクスの前じゃ、あいつも下手な真似はできないだろ。なんせ俺より厳しい断罪のコペルニクスなのだから。そう言えばコペルニクスは昨晩、こっそりと帰ってきていたな。セカンドレイドボスとやらは今朝の湯畑前には出現していなかった。おそらく、コペルニクスの断罪の前に屈したのだろう。くくく、馬鹿な奴らだ。レイドボスの爺さんは放っときゃ良いし……)


「ギャォォォン! ギャオオオン!」


 呟憤怒女の咆哮が万座温泉にまで響き渡る。

 聞き覚えのある如何にも残念なその雄叫びに温泉を満喫していた美心のご機嫌ゲージは下降していく。


「ギャォォォン! 男は女を殴るな! その逆はオーケーです。男児であろうが関係なしに殴ります! ギャオオオン!」


「うるせぇぇぇぇ!」


 裸だろうが構わず露天風呂から外へ出て声のする方向へ飛んでいく美心。

 場所は再び湯釜付近。

 レイドボスの爺さんを先頭に呟憤怒女が行列を成している。

 

「なんじゃ、さっきから儂の後ろをゾロゾロと鬱陶しい!」


「ギャオオオン! 男は女の退化した劣化版人間! ギャオオオン!」


 一斉にレイドボスに襲いかかる呟憤怒女達。

 源泉に混入した呟憤怒女化促進剤T型は突然変異を起こし、レイドボスを自ずと最大の敵として認識するようになっていたのだ。

 その中には勿論、アルタイルの姿もあった。


「儂の入浴を邪魔する不逞な輩共め! 蹴散らしてくれる!」


「ギャオオオン! 私達は待たない! 誰が股無しか! ギャォォォン!」


 数十人の呟憤怒女に爺さんはリンチされ、最後には湯釜の中に放り込まれ、ゆっくりと沈んでいく。


「ギャオオオン! 老化小便棒に勝ったどぉぉぉ!」


「「ギャォォォン! ギャオオオン! 私達は勝われた! ギャオオオン」」


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