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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社再結成編1
176/263

草津にて(其の肆)

 翌日、宿に戻ったコペルニクスはアルタイルと共に温泉を楽しんでいた。

 逃がしてしまったピヨリィや百合子はいくら探しても発見できず、反面セカンドレイドも発生することはなかったため事件は収束したと見なし美心の下へ戻ったのだった。


「はふぅ……ずらぁ」


「ん、姉様。あたし見えないけれど傷は綺麗に消えたの?」


「ずらぁ、草津温泉の効能凄く凄いずらぁ」


「良かった。これで姉様もお嫁に行けるね」


「ずらっ!?」


 コペルニクスの突然の言葉に驚くアルタイル。

 星々の庭園(スターガーデン)内で最も古株であるアルタイルも今や28歳。

 本来なら二十歳までには美心の用意した見合い相手と結婚し春夏秋冬邸を出ていく者が多い中、アルタイルは尽く美心の用意した見合い相手との結婚を反故にしていた。


(しまったずら! ここで傷を完治させたら、またお義母様にお見合いさせられてしまうずら! 今の贅沢な暮らしを手放すなんて愚の骨頂ずら! 絶対に出ていきたくないずら! なんとか……なんとかして今の怠惰な生活を守り通さねばならないずら!)


 そう、彼女は典型的な子供部屋おばさんになる資質のある女性だった。

 任務での大怪我も実は嘘。

 今回の怪我はお見合いしたくない一心で崖から飛び降り出来た傷である。

 少々の傷ではカペラやデネボラの回復陰陽術で治療され完治してしまう。

 アルタイルは怠惰な生活を守りたい想いだけで瀕死の重体を負ったのだ。

 結果として約10年近く、星々の庭園の諜報活動休止。

 これ以上無いほどの怠惰な生活を送ることができていた。


「姉様と離れてしまうの寂しいけれど、あたし達に任せて立派な奥さんになってね」


「……コペルニクス、お義母様が今居ないのは?」


「村長の家に行っている。多分だけど姉様のお婿さんに相応しい人がいないか聞きに行ったんだと思う」


「ずらっ!?」


 アルタイルは心に決めた。

 再び瀕死の重傷を負おうと。

 丁度、ヒーラーであるカペラもデネボラもここには居ない。

 怪我の痛みより結婚し夫と共に一生懸命働き生活していく方が辛い!

 アルタイルは今の悠々自適な生活を守り抜くため風呂場から出ると浴衣の姿で温泉街へ向かう。


(ずらっずらっ……大怪我しそうな方法はないずらか?)


 温泉街をキョロキョロしながら辺りを見回すアルタイル。

 すぐにでも瀕死の重傷を終えそうなものが無いか探し始める。


(身投げはもう無理ずら。オラは一度体験した方法では二度と傷付けない特殊体質。刀で斬られることも棍棒で強打することも既に体験済み。今のオラが瀕死になれる方法は極めて少ないずら)


 アルタイルが最強の隊員と呼ばれ皆から一目置かれる所以である。

 彼女こそ最強のタンクであり数々の死闘《ごっこ遊び》から隊員達を守った功績を買われ美心からの信頼も厚い。

 だが、それは表の顔であり裏の顔は怠惰を極める怠け者なのである。

 西の河原付近を歩いている時だった。


「熱っ!」


「あはは、源泉って凄く熱いね」


「当たり前じゃん。なんたってマグマに温められているんだから。火傷じゃ済まないよ」


 観光客の言葉が偶然、耳に入る。

 運が良いのか悪いのかアルタイルは重傷を負える方法を思いつく。


(源泉に飛び込み全身大火傷! まだ経験したことない傷付き方ずら! これしかないずら!)


 全身が浸かりそうな深さの源泉を探すアルタイル。

 あちらこちらから温泉が湧き出しているが全身が浸かってしまうほどの深い場所は無い。

 だが、彼女は諦めず探し回る。

 草津を離れ殺生河原にまで来てしまったアルタイルは1人の老人を見かける。

 老人の周りには観光客だろうか。

 数人の女性が彼の後をついて行っている。

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