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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社再結成編1
172/263

草津にて(其の弐)

 美心とアルタイルは浴場へ行き温泉に浸かる。

 勿論、身体を洗った後で。


「ふ、ふ、ふわぁぁぁ。最高ずらぁ」


「う、うぇぇぇぇ。くっくっく、やはり草津の湯は身に沁みるぜぇ」


 2人はコペルニクスのことを心配することもなく温泉を満喫していた。


(ん、この感覚……湯畑前に数人が一列に並んでいる? 何かあったのかな?)


 一方、その頃コペルニクスは湯畑前で旗を掲げている連中を発見する。

 目の見えない彼女は第6感が非常に優れており感覚だけでその人の身なりまで理解できる。

 セカンドレイドの町草津を許すなと書かれている紙を持ち、ただ立っているだけの老婆や中年女性に何をしているのかと尋ねるコペルニクス。

 

 ギロッ


 その連中は鋭い視線をコペルニクスに向けるだけで何も答えない。

 目の見えない少女など相手にしている時間は無いかのように睨みつけた後、視線を逸らし近くを通り過ぎた観光客に声を上げる。


「セカンドレイドの町草津を許すな―――!」


「許すな―――!」


「草津村村長は責任を取って腹を切れ―――!」


「腹を切れ―――!」


 突如、大きな声で言葉を発する連中。

 コペルニクスは自身など相手にされていないと理解すると湯畑前にある足湯に入り連中の行動を観察する。

 観光客や温泉街の従業員が連中の前を通り過ぎようとするたびに言葉を放っている。

 しかも温泉街従業員には唾を吐きかけたり暴力を振るったりする始末。

 特に注意しに来た従業員には容赦せず集団でリンチをする。

 観光客はそれを見て逃げるかのように草津村を離れていく。


「くそっ、セカンドレイド……なんて厄介な連中なんだ!」


「草津温泉を潰すつもりか、あいつら!」


(ん、これは迷惑客というレベルでは無い。最早モンスタークレーマーの域、いやそれ以上と言っても過言ではない。でも、相手はたかが人間。あたしが制裁を下すまでもない。それに何故こんなことをするのか背後を調べなければ……)


「草津村村長に正義の鉄槌を―――!」


「正義の鉄槌を―――!」


 コペルニクスはこの者らと村長に何やら因縁があると疑い村長の家に伺うことにした。

 有名な温泉で資金も潤沢なはずなのに他の村民と同じような小ぢんまりとした家。  

 ただ数人の浪人が家の周辺を警備していた。

 

(ん、凄い警備。セカンドレイドボスに命を狙われていたら当然だよね。顔も知らないあたしが訪ねたところで門前払いされるのは目に見えている。でもマスターなら顔も効くはず。何故ならマスターは日本全国の温泉街に膨大な投資をしているから。でも、今は姉様の治療に付き合ってあげてほしい。だから、あたしは1人で任務をまっとうする)


 昼間にはとても忍び込めるはずもなく一旦その場を離れるコペルニクス。

 夜になるまで温泉街で情報収集をし時間を潰す。

 村長に関してはとても評判が良く悪い話は耳にすることはなかった。

 何故、命を狙われているのかさえ分からない。

 

(聞き込みだけじゃまったく分からなかった。やはり当事者に直接聞くしか無いか)


 日が暮れ再び村長の家に行くコペルニクス。

 警備の浪人は更に増え10人近くの侍が村長の家の周囲を囲っていた。


(夜は殺しをする上で最も最適な時間。村長もそれを理解しているのだろう。ん、でもこれじゃあたしも忍び込めない。下手に侍を倒し警戒網に穴を作ると村長が危険に晒されるし……)


 暫く身を潜め村長の家を監視するも何も起こることなく朝を迎える。

 

「ふ、ふわぁぁぁ……眠い。昨晩は何もなかったな」


 グゥゥゥ


 お腹の音に今になって気付くコペルニクス。


(そう言えば昨日のお昼から何も食べていないんだった。マスターの勅命に熱心になりすぎて自分のことを疎かにしてしまっていた)


 一度、宿に戻ろうとした時だった。

 1台の馬車が村長の玄関前に停車し1人の女性が馬車に乗り込む。


「か、考え直してはくれんか!? 百合子」


「これ以上は限界です! 実家に帰らせていただきます!」


(あの人が村長? やっとお目にかかれた。優しそうなお爺さんだ。馬車に乗ったおばさんは誰だろう。言葉からして村長の奥さん? もしかして離婚の危機? ん、あたしには関係ないけど……あのおばさん、なんか気にかかるな? 村長は後にして馬車を追ってみよう)


 走り出す馬車の屋根に飛び乗るコペルニクス。

 殺生河原を過ぎ山道を登り白根山湯釜へと向かっていく。

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