邪道にて
シリウス達一行はカペラを埋葬後、モンドン港へ行きコンコン行きの貨物船に密航する。
これから3ヶ月ほどは再び船の中で忍びとして生活を送ることとなった。
船が出港して1週間後……。
ジャッピングフォレスト前の草原に彼女達が現れる。
ブンッ
「このあたりざます」
「ミストレス様、ほんまにええのん?」
「パープルは自身の身体を犠牲に星々の庭園の危険さを証明してくれたのです。これくらい良いでしょう」
「あったざます。おそらく、自身のことを雌豚と言った頭のおかしな女の墓! ここを掘るざます」
「へいっ!」
悪魔教信徒数人に墓を掘り返させる金鶴。
暫くすると土の中から出てきたのはカペラの遺体。
その遺体を見て金鶴は驚きを隠せなかった。
「な、何故!? 雌豚の代わりに何故、こいつがここに!?」
その遺体を見てミストレスこと舞香は違和感を覚え察する。
「その者、蘇生術を使いましたね」
「蘇生術って死者を蘇らせる? そんなことができる人間っておるん?」
「ええ、そうです。本来なら神にしか許されない禁忌を人間の……それも少年が」
ドスッ!
ガスッ!
「この! この! この! ああたのせいであてくしはこんな化け物の姿に!」
カペラの死体を何度も何度も蹴り続ける金鶴。
死体蹴りを見て気分を悪くするコードネーム、ブラックことずんは舞香に尋ねる。
「ミストレス様、なんか気になることでもあるん?」
「え、ええ……この遺体使えそうだと思いましてね。蘇生術を使えるほど陰陽術に通じた肉体なら……パープル」
「は、はい! なんざましょ?」
「貴方の魂を移し替え人間に戻して差し上げます。若い男の肉体なら文句はないでしょう?」
その言葉を聞いて歓喜する金鶴。
若い男と言えば眼の前で倒れているカペラ以外には無い。
死者であろうと奇跡を起こせる舞香の言葉に疑う余地はなかった。
「おっほほほ! ええ! ええ! 喜んで! あてくしを痛めてくれたほどの陰陽術を使える肉体ならあてくしは更に強くなれるざます!」
その言葉を聞くやいなや両手で印を結び陰陽術を発する舞香。
「転身の術! はっ!」
ブォン
化け物の姿である金鶴の肉体が溶け落ち、魂魄と呪物であった獅子口の能面だけが残る。
そして、空中を漂う魂魄を舞香が両手で拾い上げるとカペラの肉体の中へと入れる。
数分後……。
ドクン!
ドクン!
「おほっ! おほほほ! おーほっほっほ! さすがはミストレス様! まさか、こんな奇跡が!」
「へぇ、凄いやん。パープル、感謝しぃや」
「ええ! ええ! このお代はたんまりと後で支払わせていただくざんす」
カペラの肉体に移り人間の姿に戻れたことを歓喜する金鶴。
守銭奴である金鶴もこの時だけは最大のお布施を悪魔教にしたという。
「パープル、一つ言っておくことがあります。その肉体はかなり貴重です。蘇生陰陽術が使えるように自身の陰陽力を鍛えてください。それまでは春夏秋冬財閥との接触は禁止。復讐するチャンスは必ず与えます。なので……」
「ええ、もちろん! この肉体から溢れ出すほどの圧倒的なパワー! これを自在に操れるようになるまで復讐などいたしませんざます!」
「では、戻るとしましょう」
ブォン
舞香の瞬間移動により豪華客船へ戻る3人と悪魔教信徒数人。
金鶴はすぐさま陰陽術の特訓に明け暮れた。
「なぁ、舞香様。あんな守銭奴にあの美少年顔ってなんか嫌やわ。なんというか……いい男のくせにお金の面だけが残念! って感じがひしひしとすんねんけど」
「ずん、パープルとピヨリィを引き合わせないよう注意していてください」
「ああ、せやな。ピヨリィに見つかってもうたらパープルも搾り取られてしまうわ。でも、安心してええで。今、ピヨリィは辛国のコンコンに滞在してるはずや」
「そうですか。では、例の計画も?」
「未だに多いアヘン中毒者。実験体としては最適やからな―――」
不気味な笑みを浮かべる舞香とずん。
例の計画とやらに巻き込まれることも今はまだ知らないシリウス達はカペラの死から未だ立ち直れずにいた。