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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
168/263

カペラ⑯

 森に火が回り激しく燃えています。

 あと数分遅れていれば拙も危なかったです。

 パープルはどうなったのでしょうか?

 死んではいないはずです。

 あの程度の攻撃で死ぬはずがありません。

 何と言っても悪魔なのですから。

 

「…………リゲル」


 彼女の身体が物凄く冷たい。

 体温は完全に失われています。

 拙の蘇生陰陽術で生き返らせることはできますが、そのためには生者数人の命が必要です。

 ですが、大事な仲間の命は使えません。

 そこでターゲットにしたのが悪魔であるパープルです。

 常人以上のパワーを持つ者は生命力も強い。

 言い換えれば1人で数人分の命を持っていることと同等なのです。

 問題はパープルの命1人で事足りれば良いのですが……。


「とにかく陰陽陣を描かないと……」


 拙は早速、儀式の準備に入りました。

 シリウス達を巻き込まないよう離してと……。

 そう言えばシリウス達は目覚めると治っているのでしょうか?

 もし、あのままならまた気を失わせる以外にどうすれば……。

 

 ボゥ!


 激しく燃える炎の中から何者かが出てきました。

 パープル以外にはありえませんが……最早、人の形さえしていません。


「キモい……キモい……ああああ! この世の全てがキモくてキモすぎるぅぅぅ!」


 何をあんなに怒っているのでしょう?

 身体は全身が悪趣味な金色。

 形は鶴のような首が長く翼を持ち足が細いです。

 お尻の部分からウネウネと金色の蔓が伸びています。

 顔は怒った獅子のような鶴のような……悪魔ならどんな形をしていようと違和感はありません。


「来たでありんすね」


「ギャォォォン!」


 蘇生陰陽術を行うためパープルを陰陽陣の中に誘い入れる必要があります。

 しかし、戦いでは何が起こるかわかりません。

 簡単にいけば良いのですが……。


 バサッバサッ


「!」


 翼で羽ばたき空高く舞い上がるパープル。

 上空で静止し、こちらを睨んでいます。

 

「ギャォォォン! オスの下半身に屈した女は全員女性差別主義者! ギャォォォン!」


 ドゴォォォン!


 ぐぅ!

 こ、これは……超音波!?

 それとも重力?

 全身に物凄い圧がかかります。


「ギャォォォン! お隣の国は最高! ギャォォォン!」


 キィィィン


 かはっ!

 脳が震え……これはいけません。

 ……意識が……飛ぶ……。


 パンッ!


 拙は今にも意識が飛びそうな中で第5境地陰陽術「迅雷」を放ちました。


 ドゴォォォン!


「ギャォォォ!?」


 強烈な雷鳴と共にパープルに雷撃を浴びせます。

 すると、気を失ったのかそのまま草原に落ちていきました。

 しかも、丁度運良く陰陽陣を描いた場所です。

 拙は蘇生陰陽術の印を結び両手を合掌させ発動させました。


「おほっ? あてくしは……こ、この身体は何ざますか!? いやぁぁぁぁ!」


 パープルの意識が戻ったのでしょうか?

 でも、拙には何の関係もありません。

 陣が淡い光を放ちます。


「な、何ざます? うっ……ぐがぁぁぁぁ!」


 苦しんでいる?

 おかしいです。

 蘇生陰陽術を発動させればパープルは即死し、その生命をリゲルへと渡すはず……。


「ぐっ、こ、このままでは……」


 バサッバサッ!


 翼を再び羽ばたかせ空高く飛び上がります。

 まさか……!?


「に……逃げるなぁぁぁ! 卑怯者がぁぁぁ逃げるなぁぁぁ!」


「今はああたなどに構っていられないざます! あてくしは……あてくしは……ぐっ! 人間の姿に……ぐぉぉ!」


 ああっ!

 パープルとの距離がどんどん離れていきます。

 追いつけない……早すぎます。

 ……逃げ……られた……?

 えっ……それってリゲルは……もう……。


「う、うわぁぁぁ! どうすれば!? どうすれば!?」


 拙は焦りと恐怖とで頭がいっぱいになりつつも考えました。

 隊員の命は使えない。

 だからといって何も関係のない人を巻き込むわけにはいかない。

 そもそも付近に誰もいない。

 モンドンに行って誰か悪そうな人を捕まえて……いいえ、時間がありません。

 蘇生陰陽術で生き返らせることができるのは死後3時間ほど。

 それ以降は失敗率が高くなり拙にも大きな反動がやってきます。

 その反動で拙は生死の狭間を何度か彷徨ったことがあります。

 おそらく失敗した場合、自分の命も持っていかれるのでしょう。

 ……うん?

 もしかして……いいえ、でも……しかし……。


『何ヲ考エテイル?』


「貴方ですか。えっと、拙の命を使ってリゲルを生き返らせることができるのかなって……でも馬鹿ですよね? 自分の命を投げ出して仲間を助けるなんて」


『クッククク! イイジャネェカ! ソレデコソ男ダ! 惚レタ雌豚ノタメニ命ヲカケル。俺ハ賛成ダゼ』


 そういうものでしょうか?

 でも、何やら熱いパトスを感じます。

 それに冷静に考えてリゲルは星々の庭園の中で発足当初から居る重要な人物です。

 シリウスに次ぐほどのリーダーシップを取れる彼女にお義母様も最大の信頼を寄せています。

 さらに彼女の頭脳にはまだまだ伸び代がある。

 一緒に研究をしていて分かりました。

 いずれは拙以上に仲間へ貢献できることでしょう。


「……拙よりもみんなのためになるリゲルをこんなところで失うわけにはいきません。死ぬのは怖いけどリゲルが居なくなることのほうがもっと怖いです……やります!」


『ヨクゾ言ッタ! 俺、男ヲミセロ!』


 蘇生陰陽陣の真ん中に立ち術を発動します。

 その瞬間、視界が真っ暗になりました。

 みんな、怒るでしょうか?

 でも、こうするしかないのです。

 お義母様、褒めてくれるかな?

 ごめんね、拙は先に逝きます。

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