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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
167/263

窮地にて(其の漆)

 空中で姿勢を整え焼ける木の上に着地するカペラ。

 瀕死のリゲルを抱えた状態では金鶴と戦えない。

 

(それだけではありません。火の広がりと煙の流れに気を付けていなければ逃げ道を失ってしまう)


「ひゅーひゅー……けほっ」


 いつ呼吸が止まってもおかしくないリゲルの状態を見て焦るカペラ。

 

「ほぅら、よそ見はいけないざますよ」


 バキバキバキッ!


 森の木をいとも簡単に抜き振り払う金鶴。

 柔の武道である合気道とは似ても似つかないパワーで攻めてくる。

 彼は柔と剛の術を自在に使い分けることに長けていた。


(パープルに近付いてはいけません。距離を取り森の外へ……)


 金鶴はカペラの後方10メートルほどの場所に位置し大木を振り回し追ってきている。


(あと少しで森の外……外に出てしまえばリゲルを休ませ拙はこの男に制裁を下せます)


「考えが甘いざます」


 カペラは後方確認を終わり前方を向いた時、眼の前で立ちはだかる金鶴。


「えっ? いつの間に!?」


 ドゴッ!


 手に持った大木を大きく薙ぎ払いリゲルを抱えたカペラを吹き飛ばす。

 あまりの勢いにリゲルを離してしまう。


「くっ、四天王とはこれほどの……」


「さぁて、まずはゴミ掃除からざますね」


 ガシッ


 地面に倒れているリゲルの頭を掴み持ち上げる金鶴。

 

「………………」


「や、やめるでありんす!」


 カペラは金鶴の表情を見て察する。

 リゲルにとどめを刺すつもりであることは確実。

 急いで金鶴のもとに駆け寄るカペラ。


「おほっ! おほほほほほほほ! 既に死んでるざます。もしかして今の一撃で? おっほほほほ! 本当に僅かな寿命だったざますね!」


「えっ?」


 ブンッ!


 カペラの虚を衝くかのように彼のもとにリゲルを投げ飛ばす金鶴。


 ガシッ


 投げられたリゲルを体全身で受け止めるとすぐに呼吸を確認するカペラ。


「………………」


「息をしていない……駄目、駄目、駄目! リゲル、逝っちゃ駄目でありんす!」


 冷静に蘇生術を行うカペラ。

 陰陽術の「電」で電気ショックを与えたり、心臓マッサージを行ったりする。

 だが、リゲルは息を吹き返すことはない。


「うぅぅぅ……リゲル……リゲル……」


「おほほほ、もう諦めるざます。でも、安心するざますよ。今すぐにああたも同じ場所に送っってあげるからぁ!」


 ゴウッ!

 ドゴォォォン!


 リゲルの亡骸ごと押し潰そうと大木を振り下ろす金鶴。

 

「彼女の身体に傷を付けるな!」


 大木を全身で受け止めるカペラ。

 陰陽術で一瞬にして大木を炭に変える。

 

 パラッ……


「ほぅ? ああた、あの大木を瞬く間に炭化させるなんて……」


 グッ

 パンッ!


 カペラは何も答えることなく両手を合掌させ陰陽術を発する。


「こ、これは……凍気? 陰陽術『凍』ざますね。それもかなり強力な。でも、それで一体、何をしたいざます?」


 パキッ


「!!! あてくしの両足が凍っている?」


 グッ

 パンッ!


 再び印を結んだ後、両手を合掌させ陰陽術を発動させる。


 スパンッ

 

「えっ?」


 金鶴は何かが近くに落ちた気がし視線を移す。

 地面に落ちていたのは腕だった。

 それも自身の。

 

「……ぐぁぁぁぁ! あて、あてくしの左腕がもげたぁぁぁ! 陰陽術『斬』!? いいや、まさか……!」


「………………」


 カペラは何も答えない。

 口を開くことなく冷酷非情に印を結び、次々と陰陽術で金鶴を甚振っていく。


「そ、そんな……あてくしが……何もできないなんて! そんなことが……そんなことがあってたまるかぁぁぁぁ!」


 金鶴は右手で懐に手を入れ獅子口の能面を取り出す。

 その能面を臆することなく顔に取り付ける。


『キモいキモいキモいキモいキモォォォい! お前の身体を儂に貸せぇぇぇ!』


「お、おほほほほ……あてくしだってまだまだ……まだまだまだまだまだ……まだまだぁぁぁぁぁ! おぼっ! ぐ、ぐわぁぁぁぁ!」


 バシュウ


 金鶴の身体が金ピカな繭に覆われる。

 カペラは何が起ころうと関係なしに陰陽術で攻撃するがまるで効いている様子が無い。

 森林火災も広がり、このままでは巻き込まれると悟ったカペラはリゲルの遺体を抱きかかえ森の外へ出ていく。

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