窮地にて(其の肆)
ブン
「ギャォォォン?」
ドゴォォォン!
襲いかかる隊員達を一本背負いで地面に激突させ気を失わせていくカペラ。
身体を強打することにはなるがこの後の移動のことも考え、隊員達に不要な傷は与えない彼なりの配慮である。
「ギャォォォン! オスが女を見て心で勃起している! ギャォォォン!」
襲い来るシリウスを前にカペラは懐かしい記憶が蘇る。
(そういえば、幼い頃の格闘訓練でシリウスには何度も投げられたっけ。ですが、今は拙がお兄ちゃんです!)
呟憤怒女と化したシリウスは思考が低下しているのか格闘経験がまるで無いような単純な突撃をしてくるのみ。
隙だらけの懐に入り込み再び一本背負いをするカペラ。
だが、ここで予想外の出来事が起こった。
ムニュ
(!!! 迂闊でした。シリウスのおっぱいはこの中で誰よりも大きいです。拙の背中に強く当たるなんて……また大きくなってる!? 彼女の体内にある核融合炉に強い衝撃を与えて大丈夫でしょうか? ああ、怖い……怖いです! もう無理!)
彼の心にあるおっぱいへの恐怖心がすぐに限界へと達し地面に激突する前にシリウスの腕を離してしまった。
そのおかげかシリウスは気を失うことはなく再びカペラに襲いかかる。
「ギャォォォン! 私達オバサンもかつては女の子だった! ギャォォォン!」
カペラは心穏やかではなくなっていた。
襲い来るシリウス……いや、襲い来るたわわな胸が彼を冷静にはさせなかった。
(ひ、ひlぇぇぇ! 物凄く揺れています! あんなに揺らして核融合炉に悪影響はないのでしょうか? 怖い……怖い……正気を失っているとはいえ流石はシリウスです。拙では一生勝てないのでしょうか?)
『カテル! 俺ナラカテル! 心ヲ開放シロ! 欲望ノママニ男ヲミセルノダ!』
カペラの頭の中にまた謎の声が響き渡る。
ドクン!
(何でしょう? 拙の聖剣が疼きます。ああ、いけません! この状況で聖剣の柄が大きくなると……くっ、なんですか? 抑えられません。大きくなって……あれっ? 意識が……)
カペラは眼の前が暗くなり徐々に意識を失っていく。
「ああっ、カペラ様が本気を出された!」
「カペラしゃまぁぁぁ!」
どれほどの時間が経ったのだろうか。
声や音は聞こえるものの身体は動かず眼前は暗闇のまま。
話すこともできずカペラは冷静に今の状況を分析する。
(これもパープルの攻撃なのでしょうか? 慌てふためいてはいけません。心を落ち着かせるのが先決です。でも、さっきから身体がやけに熱いです。風邪でも引いたのでしょうか? いいえ、この熱は身体の防衛反応による熱ではありません。なんというか、心地よいスポーツしている時のような感覚です)
「なんてことざます! ことごとく呟憤怒女が無力化されるなんて……ああた! ああたは一体、何ざます!?」
金鶴のひどく怯える声が聞こえる。
「ふふん、カペラ様にかかれば僕達なんて単なる雌豚! パープル、貴様もカペラ様の雌豚になるかい?」
「め……雌豚? ああたは何を言っているざますか!?」
「カペラしゃま、失礼します」
近くにリゲルとベガがいることを気配で感じ取るカペラ。
気配から彼女達が無事なことに安堵する。
だが、身体は動かず眼前は暗いまま。
心を落ち着かせたいが何故か身体は熱く思考がうまくまとまらないでいた。
「!!! ば、馬鹿な! 春夏秋冬美心が結成した星々の庭園は全員が女児から組織されていたはずざます!? な、何故……男が!」
「ふふっ、僕達もカペラ様のご寵愛を受けるまで気が付かなかったさ。でもね、カペラ様のおかげで気付いたんだ。承認欲求などカペラ様の前ではなんてことのない下らない感情だとね。カペラ様のご寵愛の前では承認欲求で満たされる快感なんて微細なもの……ああっ、カペラ様。愛しております」
「わちだってカペラしゃまが大好きだもん!」
「な、なるほど……その男を愛しているからああた達2人はいつまでも呟憤怒女に変異しなかったざますね。納得ざます。呟憤怒女とは男を金蔓にしか見ていない哀れな女の末路に過ぎない。愛を知っているああた達に呪物が反応しないのも事実。しかし……なんて逞しい……もしかして、あてくし以上? っていつまでも出してないでさっさとしまうざます!」
聞こえてくる声だけで状況を理解しようにも状況分析が捗らないカペラ。
さらに下半身が妙に涼しい感じにも違和感を感じながら心を落ち着かせることを最優先する。