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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
160/263

旅立ちにて

「身体を鍛えることに夢中になるのも良いけれど、時間は決めておくべきでござるよ」


「ああ、すまない。僕とベガがカペラに稽古を付けていたんだ」


「カペラしゃ……カペラもまだまだ弱いから」


「ごめんなさい……」


 カペラはシリウスとプロキオンを目の前に頭を下げる。

 リゲルとベガが上手く誤魔化してくれた。

 その思いを無駄にできまいと謝罪をしたのであった。


「ふぅ……ま、良いわ。リゲルの意見無しでも良い会議が行えたから良しとしましょう」


「ふふっ、僕の意見がみんなを惑わせてしまうのは自覚しているよ。それでここに残るのか、我らが祖国へ戻るのか、どっちなんだい?」


 カペラは心の底から願う。

 制裁戦争はあまりにも卑劣極まりない。

 日本へ戻り美心の救援を請いたい思いで一心だった。


「初めに言っておくわ。これはみんなの総意。既に決定し明日から準備期間に入る予定よ」


「ふっ、もったいぶるね。ま、昨日の僕の意見が全てだと思うけど……」


 カペラもそうあってほしいと願った。

 だが、結果は違った。


「ここを廃棄し辛国へ向かうわ」


(へっ?)


(なっ!?)


(辛国って何処だっけ?)


 3人は唖然とした。

 カペラとリゲルはすぐに脳内で地理的状況を考え1つの解答を想定する。


「まさか……そんな手をもってくるとはね」


「流石、リゲルね。理解が早くて助かるわ」


 カペラは無能を演じるためにも黙ってシリウスの話を聞く。


「地図を見て。祖国と距離が近く北上すればロセアに侵入できる。それに辛国のコンコンは現在エゲレスの領土となっている。エゲレスが裏で悪魔との関係がある以上、辛国にも魔の手が及んでいる可能性がある。援軍の到着を待つ間、私達はコンコンを中心に活動することにする」


「阿片戦争も悪魔が考えそうな下劣な侵略行為だったと聞いたでござるよ。おそらく、エゲレスの領土になったコンコンにも何らかの悪魔が居る可能性がある。リゲル、納得いかないといった顔でござるが……」


「拙は良いと思うでありんし。コンコンなら舞鶴から3週間もあれば到着できるでありんすえ。先に手紙を送り、レグルス達に待っていてもらうことも可能でありんし」


「「!!!」」


 シリウスとリゲルはカペラの何気ない返答に驚く。


「確かに……先に手紙を送っておけばレグルス達の方が早く到着するわね?」


「さすが、カペラさ……ごほん。ふふっ、カペラ。僕と同じ考えを得るだなんて、君もできるようになってきたじゃないか」


「今すぐに手紙を書くわ。プロキオン、モンドン港へ行って協力者に渡してくれる?」


「任せるでござるよ」


「それじゃ、3人も出立の準備をしていて頂戴」


「ふふっ、分かったよ」


「了解でありんすえ」


「うん、分かった」


 屋敷の中がいつもと比べ慌ただしい。

 日本で生まれながらも悪魔教に拉致され、ここで飼育された経歴のある隊員達は新天地へ向かうことに胸を躍らせている。

 

(お義母様、どうかシリウス達が拙の聖剣を奪おうとする制裁戦争を起こさずコンコンまで無事で辿り着けるよう見守っていてください)


 それから3日後……。


「みんな、準備ができたわね。それじゃ、良いわね?」


 コクリ


 皆がシリウスの言葉に頷く。

 シリウスは指先から火を放ち寺屋敷に火を付けたのだった。

 

「ここへはもう戻ることも無い。私達が居た痕跡は残さず消さなければならない」


「ええ、分かっておりますです。尼僧に拉致られ、ここで賢者の石の素材として飼育されたわたくし達にとっては悪夢のような場所。最終的には廃棄されなければならない忌み地ですます」


「アンセル……」


 隊列を整え激しく燃える寺屋敷を背に森の中へと消えていくシリウス一行。

 まずはモンドン港へ向かいコンコン行きの船に忍び込むこと。

 だが、森を出たところで想定外の出来事が待ち構えていることなど誰も知らない。

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