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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
154/263

カペラ⑫

「カペラ?」


 なんということでしょう。

 頭を下げた時に拙は股間に違和感を感じました。

 精神を集中させると聖剣の鞘が勝手に大きくなっていることが確認できました。

 何故?

 いつの間に!?

 リゲルの胸は洗濯板のため核融合炉が拙の聖剣に反応を起こしたとは思えません。


「カペラ、頭を上げてくれ。扉を開けたままにしていた僕も悪かったし……」


 しまった!

 リゲルを不安にさせてしまいました。

 謝るべきこちら側が逆に謝られるとは滑稽なことです。

 頭を上げリゲルを安心させてあげたいところですが今はマズいです。

 この聖剣の状況をリゲルにマジマジと見せつけることになってしまいます。

 拙は心を落ち着かせ何故、聖剣の鞘が大きくなったのか考えます。

 頭を下げたまま部屋の中を見渡します。

 どれかが拙の瞳に映り、直接聖剣に反応を起こしたことは確実。

 

 ピク……


 !!!

 拙の聖剣がまた一段と大きくなった!?

 今、拙の瞳に映るのはリゲルが脱ぎ捨てた下着。

 まさか……拙は1つの仮定を導き出しました。

 あの下着からは尿臭がしない。

 それどころか拙の聖剣を反応させる甘美な匂いがするよう感じます。

 まるで一輪の花に吸い寄せられるかのような蜜蜂の如く拙も吸い寄せられた?

 迂闊でした。

 胸が洗濯板だからといって聖剣を奪えないとは言い切れません。

 まさか、視覚でなく嗅覚で拙の聖剣を呼び出そうとするとは……。

 制裁戦争は無慈悲な戦いの連続です。

 マスターの仰った通りでした。

 仲間であろうと決して油断してはならない。

 拙はリゲルの掌の上で泳がされていたのです。

 ロセアに行きたいと言えば拙が1人で周囲に誰も居ない状態のリゲルに接触してくることを予測していたのでしょう。

 あとは甘い香りで室内を満たし拙の思考を奪うだけ……見事にしてやられました。

 やはり、リゲルの頭脳は誰よりも飛び抜けている。

 最後の最後で気付けたことは幸いです。

 マスターが拙に能ある鷹は爪を隠すことを徹底させたのか理解できました。

 リゲルは拙の本当の力を知らない。

 それどころか星々の庭園で最弱だとさえ思っている。

 つまり、油断しまくっているということです。

 この聖剣でリゲルをわからせれば潔く諦めてくれるでしょう。

 思考を奪われつつある状態でも拙には分かります。

 早く、早く、この聖剣をリゲルに……。

 ………………。


 …………!!!

 拙は今、何を!?

 一瞬ですが気を失っていたようです。

 聖剣をコントロール出来なくなってきているのでしょうか?

 気が付くとベッドの上で横になり隣にリゲルがいます。

 リゲルは眠っているのでしょうか?

 顔が紅潮し少し可愛い……ん?

 わわっ、全裸!?

 なんて破廉恥な格好で眠っているのでしょう。

 シーツをリゲルに被し拙は起き上がります。

 聖剣は……いつの間にか小さくなり拙の中に収まってくれたようです。

 というか拙も全裸になっていました。

 いつの間に脱いだのだろう?

 

「ん……んん」


「リゲル、起きたでありんすね。まだ打ち合わせも途中。そろそろ再開する頃でありんす」


「そ、そうだね……えっと……」


 頬を赤らめてどうしたのでしょう。

 リゲルはいそいそと服を着た後、拙の手を握りました。


「ほら、一緒に行こう。カペラ様♡」


 ???

 一体、どうしたことでしょう。

 リゲルの様子が先程とは異なります。

 食堂に戻った時、既に打ち合わせは再開していました。


「リゲル、遅いわよ」


「カペラも! めっ!」


「ああ、悪い悪い。少しカペラと話していてね。さて、何処まで話したかな?」


 そうでした、リゲルに話すことをいつの間にか忘れていました。

 このままではロセア帝国へ向かうことが決定してしまう。

 どうしたものでしょう。

 

「その件だけれど姉様と合流することが何より先決されるわ。手紙を送り、姉様がこちらに来てくれるまでドケチ氏を……」


「ああ、その件だが無しだ。僕達は日本へ戻ろう」


「「えっ!?」」


 拙も驚きました。

 あれほどロセアに行きたがっていたリゲルが考えを変えるとは……いいえ、日本とロセアは地理的にここよりも近い。

 もしかして、日本へ戻ってから行くという計画を考えているのでしょうか?


「日本へ戻るって……リゲル、まさか臆病風に吹かれたのではござらぬか!?」


「リゲル、どうして……どうしてなの?」


「ふふっ、悪魔狩りを効率的に考えるとね……僕も早計だったよ。先程までの話は無しだ。みんなも戸惑うだろうが聞いてほしい」


 拙が伝えたいことをリゲルがみんなに話してくれました。

 拙はリゲルにまだ伝えた覚えは無いのですが……ここまで拙の考えていることを話してくれるとはどういうことでしょう。

 

「日本へ戻れる……」


「わたくしは日本へ戻ることに反対は致しませんですます。けれど、それより先に尼僧をこの手で葬らなければ……瑠流の敵を討たなければ笑って日本へ戻れないと思っていますです」


「それなら問題は無い。尼僧は必ず倒すよ。星々の庭園全員の力を借りてね」


「「!!!」」


 星々の庭園の基本戦術は忍びと同じ隠密を主軸としています。

 拙達は相対して戦うことよりも相手に気取られず暗殺する方が得意なのです。

 そして、決して相手1味方1にはならず相手1に対し複数で襲撃する神撰組と同じ手段を用います。


「僕達は戦術を基本に戻す必要がある。誰も危害を加えさせず悪魔を狩り続けるなら尚更そこを特化する必要があるとは思わないかい?」


 そう、それが正解でありんす。

 拙が目の届く者しか助けられない以上、下手に散らずまとまって行動してくれるほうが助かります。

 けれど、リゲルにそこまで話した覚えはありません。

 リゲルも初めから拙と同じ考え方だったのでしょうか?

お読みいただき、ありがとうございます。


続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。


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