カペラ⑪
今後の目標に付いての話はまだ終わりそうにありません。
それに何だか良くない方向へ向かっているように思えます。
リゲルを上手く誘導しみんなで日本へ帰国することが拙の考えだったのですが、今までの話の流れではロセアに向かうことになってしまいそうです。
「あら? リゲルは……」
「自室に戻ったようでござるな」
……今、リゲルは1人のようです。
彼女と話しておく必要がありそうなので拙も食堂から離れ2階へ向かいました。
「ふんふんふ―――ん♪」
鼻歌がリゲルとシリウスの相部屋から聞こえます。
彼女はどうやらご機嫌なようです。
それほどまでにロセアに向かいたい理由が彼女にはある?
それとも危険を顧みず悪魔を狩ることに悦びを感じているだけ?
リゲルってそんなにバトルな人では無かったと拙は記憶しています。
話せばロセアへ向かうことが如何に危険なことなのか自覚してくれるはずです。
拙にとってリゲルは大切な仲間。
いいえ、彼女だけではありません。
誰一人として星々の庭園の隊員を失わせない……それが拙をここに留まらせている理由の1つです。
拙はここへ来て思い知りました。
シリウスを筆頭にここの隊員達は自ら戦禍の中へ飛び込もうとしています。
悪魔狩りはマスターから言い渡された拙達の生きる目標であることは事実です。
ですが、危険であることに変わりありません。
放っておけば死人が出る可能性は非情に高いです。
いいえ、実際に出ている。
拙の蘇生陰陽術も万能ではありません。
エゲレス陸軍の強襲時は拙が近くにいたので蘇生術で隊員を助けられましたが死後の時間が経過すると共に蘇生成功率も下がってしまいますし、修復不可能なほど肉体が欠損してしまうと蘇生が出来ません。
オカブこと瑠流は尼僧という悪魔に頭部を握り潰され即死。
しかも、拙がエゲレスに来る数年前の出来事です。
ここに来て間もない頃、シリウス達に見つからぬよう墓を掘り返し確認しましたが肉体は朽ち果て白骨化しており蘇生術は発動すらしませんでした。
その日に改めて決心しました。
新入隊員を含め彼女達は何が何でも護る。
ですが彼女達は悪魔狩りにご執心なようで引き止めることも難しい。
拙は1つの答えに辿り着きました。
1人で護り切れないならマスターの加護が届く場所に居れば良い。
つまり彼女達を連れ日本に戻るということです。
ですが、それを拙の口から言うわけにはいきません。
拙はマスターの言いつけで最弱を演じなければならない。
その状態で彼女達に伝えても最弱な拙が弱腰を吐いている程度にしか受け取られないでしょう。
それならばリゲルを懐柔し彼女の口から日本へ戻ることをシリウス達に伝えさせる。
何故、リゲルなのか。
4人の中では最も話が通じやすいため……つまり、チョロいからです。
プロキオンは脳筋なため拙の想定外の行動をしてしまう不安があることから除外。
ベガは拙に懐いていますが口が軽く秘密を守れないので除外。
そして、シリウス……本来なら彼女に伝えたいところです。
しかし、今彼女と2人きりになるわけにはいきません。
彼女は拙の聖剣を奪い取るため拙が入浴中に入ってきたことがありました。
あの時は上手く逃げ出せましたが、次も逃げられるとは限りません。
シリウスの胸を見るだけで彼女の聖欲が如何に高いかが分かります。
あの日以来、襲ってきたことはありませんが拙には分かります。
彼女も聖剣を奪えなかったため機会を伺っているのでしょう。
拙と視線が合うと頬を赤くし目を逸らす時があります。
何故、赤くなるのか……きっと胸に搭載された核融合炉が拙の聖剣に反応し熱を帯びるのでしょう。
一刻も早く乳トロンジャマーを完成させ彼女の核融合炉を機能停止させなければ……おっと、今はリゲルと話をすることが先決です。
「リゲル」
扉が空いたままなので拙は声をかけリゲルの部屋に入りました。
「あ……」
「なっ!」
なんということでしょう。
リゲルが下着を着替えるところに入ってしまいました。
「あ……あ……きゃ」
!!!
ここで叫ばれてしまうと拙がリゲルを襲ったのかと疑われてしまいます。
拙は瞬速の動きでリゲルの背後に周り彼女の口を手で塞ぎました。
「しっ、静かにするでありんす」
「むぐ!」
彼女の脱ぎ捨てた下着は何故か濡れています。
なんということでしょう。
拙は愕然としました。
この年でお漏らしをしてしまうなんて……余程、今回の打ち合わせでロセアに行きたいことを伝えたいがため襲い来る尿意を耐えたのでしょう。
拙は理解できる子です。
無言になりゆっくりと彼女から離れます。
リゲルも無言でいそいそと新しい下着に履き替えます。
タイミングが悪かったとはいえ恥ずかしい思いをさせてしまいました。
謝罪しなければなりませんがリゲルはプライドが高いです。
下手に会話として持ち出すと怒りを買うかもしれません。
何も見なかったことにして打ち合わせのことを話すべきなのかな?
「ふっ、僕とシリウスの部屋に最弱である君がやって来るとは何か話すことでもあるのかい?」
リゲルが話を切り出してくれました。
なるほど、今の出来事は無かったことにするということなのでしょう。
拙は視線をゆっくりとリゲルの方に向け……あれ?
「ど、どうしたのかな?」
リゲルのお顔がお猿さんのように真っ赤です。
これは顔面皮膚血管に大量の血液が流れ込んでいるため……もしかして核融合炉が聖剣に反応して!?
拙は視線をリゲルの胸に向けました。
まるで草原のように平たくシリウスのような高低差はほとんどありません。
お義母様の言葉を借りると洗濯板と言うらしいです。
そこから推察するに核融合炉が反応しているものでは無いのは確かです。
となると羞恥心から来る血液量の変化?
相当恥ずかしい思いをしたのでしょう。
やはり謝罪は必要なようです。
拙は頭を下げ謝ろうとしました。
!!!
その時、拙の身体に大きな変化が起きていました。
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