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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
150/263

リゲル③

「三国協商ってなぁに?」


 きた!

 無知なベガの唐突な質問。


「エゲレスとフニャンス、それにロセアの各国で締結された同盟の総称よ」


 ちっ、シリウスに先を越されたか。

 だが、僕もうっすらとしか理解していなかったし助かったよ。


「リゲル、カペラに昨晩話した内容を聞かせてくれぬか?」


「そうね、カペラが話した内容は興味をそそられたわ。事前に貴女がカペラに聞かせていたのなら全て納得できる」


「わたくしもリゲルさんから尼僧の居場所を聞きたいですます!」


「「私も!」」


 みんなの期待値がかなり高い。

 ここで全員を納得させることができる話をすれば、僕の承認欲求は満たされ最高な愉悦を得られるだろう。

 だが、失敗すれば僕の評判はガタ落ち……。

 くっ、僕の承認欲求が愉悦を求めている!

 もはや嘘でも何でも良い!

 みんなに注目されている今、僕の言葉に僕の未来が全て懸かっているんだ!


「ふふっ、カペラ。僕が話した内容をみんなに晒して……他言無用だと伝えたはずだよ?」


「「おおっ!」」


「や、やはり……リゲルが?」


 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!

 やってしまったぁぁぁ!

 これで僕への注目は更に急増!

 もう、嘘を付いてでも僕の承認欲求を満たすしか無い!

 

「リゲル、みんなに伝えるべきでありんす。3国の裏には悪魔教が大きく関わっており世界大戦の火蓋が切られようとしていると」


「世界……大戦……えっ、どういうこと!?」


「世界大戦ってなぁに?」


 僕はカペラが話を持っていこうとしている方向が全く掴めなかった。

 世界大戦……お義母様が書かれた叡智の書に載っていた言葉だ。

 世界規模で行われる大きな戦争を表すことは字面を見るだけで分かる。

 しかし、尼僧を探し倒す目的からどうして世界大戦に?


「三国協商と世界大戦……はっ!?」


 シリウスがまた何か気付いたようだ。

 これ以上、僕の理解が及ばない範疇まで話を広げられてしまうと僕の承認欲求が満たせなくなる!

 早く……早く何でもいいから言葉を放つんだ僕!


「三国協商って確かアイツとオーストピャ、エタルワの間で締結された三国同盟に対抗するための軍事同盟よね? 今、この欧州は二分している状態。その2つの勢力が衝突してしまえば……」


 えっ、そこまで海外情勢に着いて調べていなかった。

 真面目なシリウスがしてくれると思って油断していた!

 くっ、ここじゃ僕は何も言えない。


「周囲の小国に飛び火し大規模な戦争が起こるでござるな」


 プロキオンもある程度理解できている?

 なんてことだ、僕も早く口を開かないと!


「大規模な戦争となると数千……いいえ、数万の人々が犠牲に? そんな!」


 ここだ!

 僕は自信満々にアンセルの後に続いて口を開く。


「ふふっ、悪魔にとっては喜ばしいことだろうね。好物の人間を大量に摂取できるのだから。そして、尼僧にとっても稼ぎ時……兵器として利用される日本人少女の血液が常に求められるからね」


「「!!!」」


 みんなは僕の一言にぐぅの音も出ないようだ。


「悪魔教も当然、動くでしょうね。確かにリゲルの言うようにベルゼブブを探っている状況なんてなかった」


「世界大戦になれば日本もただでは済まないですます」


「うわぁぁぁん! マスター達が危ないよぉぉぉ!」


 ふふっ、みんなの不安を煽ってしまっただけのようだ。

 これでは僕の承認欲求を満たせない。

 何とかしてみんなから褒められるような事を言わないと……。


「もしや、リゲルがウェストミンスター寺院の潜入調査に付いてきた理由ってドケチの顔を確認するためではなく……」


 !!!

 ふふっ、プロキオン良いところに話を持ってくるじゃないか。


「僕じゃなければ出来ないことだったからね」


「な、なんでありますです!?」


「リゲル、早く教えてよぉぉぉ」


 僕は自信満々に話す。


「ドケチの指輪を見て理解したよ。奴の背後にいるであろう悪魔ベルゼブブ。いくら蝿の王と言ったところで所詮はハエ。ふふっ、僕はピンときたね。その正体はブユだと……」


 勿論、全て嘘だ。

 嘘と言うより僕の高性能な知能を持って導き出した想定と言ったほうが良いかもしれない。


「ブユ!? ブユってあの渓流によく居る鬱陶しい虫でござるか?」


「ハエの仲間で吸血するんだよ。わち、知ってる―――」


「吸血するハエ……なんてこと! 私達は悪魔と言うだけでもっと凶悪なものだと思い込んでしまっていた!?」


「ふっ、そういうことさ。ブユなど雑魚中の雑魚。いつでも殺れる……だろ」


「「!!!」」


「ふぅ……相変わらずね、リゲル。つまり、あの潜入調査で私達は貴女のお守りをさせられただけ。貴女が無理を言って付いてきた理由が納得できたわ」


「シリウス、リゲルは敢えて黙ってありんした。ベルゼブブの眷属は何も残念な性格の人間だけではない。仲間のハエをここに侵入させ何処で聞き耳を立てられるか分からないから今まで話せなかったでありんすよ」


 ふふっ、カペラ良い援護射撃だ。

 きっと何の了承も無しに僕に話を振ったことへの謝罪のつもりなのだろう。

 ありがたく受け取らせてもらおう。


「流石、僕の助手をしているだけのことはあるねカペラ。慎重に慎重を重ね事を運んでいたつもりだったのけれど……」


「そこまでのことを考えていたなんて……リゲル、貴女の頭脳にはいつも感心させられるわ」


「す、凄いですます! ベルゼブブの正体が既に判明していたなんて!」


「ベルゼブブなど大した脅威では無い。リゲルのおかげでみんなの取るべき道が改めて確定したでござるな!」


「「リゲルさん、凄すぎます!」」

 

 やったぞ、僕はやり遂げたんだ!

 僕の……僕の承認欲求が満たされていくのを感じる!

 んふぅ、ぎもぢいいいいいぃぃぃぃぃ!

 僕は仲間達からの評価をその身に受け一時の愉悦を味わった。

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