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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
143/263

謀反にて(其の肆)

「なっ!?」


 隊員のみんながムジカに視線を集中させる。

 

「ち、違うの! ムジカじゃないの!」


「そうだにゃ! 主からのシークレットミッションはレグルスを探し言葉を伝えるだけだったにゃ!」


 当然のようにムジカは全否定し、カノープスもムジカを庇うようにシークレットミッションの内容を自ら言ってしまう。

 だが、それは悪手である。


「みんな、カノープスは悪魔に魅了されている状態よ! 眷属が庇うのは主とその仲間。耳を貸してはダメよ!」


「ちな、比奈乃様。なんで、ムジカがレグルスを殺したと!?」


「2人の先の任務は薩摩藩での悪魔教調査。その報告書がまだ上がっていないの。隊員が任務から帰還したら真っ先にすべきことは任務の完了報告。2人はまだ出していないの。私はそれが怪しくてね……2人の居た薩摩に調査隊を派遣したわ」


「にゃ!?」


 勿論、比奈乃の作り話である。

 面白い展開のためなら何でもする比奈乃にとって隊員は駒に過ぎない。


「そして、私は知ったの。カノープス、ムジカ、共に悪魔教に捕らわれ洗脳を受けた。賢いカノープスでも抗えないほどの洗脳、頭の悪いムジカはあっという間に悪魔教の忠実な信者となったらしいわ」


「う、嘘だにゃ! デタラメを言うなにゃ!」


「比奈乃様、ムジカは頭悪くないの! ちょっと忘れっぽいだけなの! それにムジカ、レグルスちゃんが居なかったから報告できなかっただけなの」


「にゃろが見つけた際に報告したにゃ! レグルスが戻っていにゃいから比奈乃様にまで伝わっていないだけだにゃ!」


「へぇ? 何故、私に直接報告しなかったの?」


「そ、そこまで思い至らなかったの」


「比奈乃様に直接、報告する程度のものじゃ無かったからにゃ! にゃんにゃら、今から任務報告するかにゃ!?」


「悪魔に操られている貴女の言葉を真に受けろと?」


 容赦なき作り話はまだ続く。


「ふふっ、調査隊の報告を続けるわよ。帰還の際、悪魔教が2人に命じたのは星々の庭園を内部から崩壊させること。2人はどうすれば硬い絆で結ばれた皆をバラバラにできるか考えた」


「ま!?」


 デネボラも他の隊員も比奈乃の話を信じ切っている。

 そして、デネボラは最悪の想定をする。


「ちょ……カノープス、ムジカ、あんた達……まさか!?」


「そう、それはレグルスを亡き者にすること。レグルスは星々の庭園を支える大事な役を担っていると同時にお婆ちゃんの側近でもある。そして、2人がかりなら確実に殺れるほど彼女は戦闘能力に優れていない。問題はあまり屋敷から出ないレグルスをどうやって暗殺するか。お婆ちゃんのシークレットミッションは正に千載一遇の好機だったでしょうね」


「比奈乃様、でも……何故、マスターは2人にレグルスの捜索を?」


「マ、マスターの考えなど誰にも分からないわ。孫の私でさえも……」


 比奈乃は適当にはぐらかした。

 

「そんなの有りかにゃ!? 滅茶苦茶だにゃ!」


「遺体がいつまでも発見されないことが不信感を抱くきっかけだったのよ。まさか、悪魔教に引き渡していたなんて……」


「レグルスはそれで悪魔が宿るための器にされた……あ、あんた達ぃぃぃ!」


「酷い、酷いよ……」


「悪魔の所業だね」


「皆、こんな話を信じるのかにゃ! 比奈乃様が嘘を言っていると気付くにゃ!」


「カノープス、比奈乃様がそんなことをして何の得があるわけ?」


「そうだよ、比奈乃様はマスターの血を受け継ぐ第二のマスターなんだよ」


「比奈乃様を悪く言うなんて……許さない!」


 どんなことを言っても比奈乃を信じ切っている皆を分からせることなど不可能だと気付くカノープス。

 隊員達は恨みを込めた眼差しで2人を睨みつける。

 

(くっ! もう、どうしようもにゃいにゃ! ここからムジカと共に逃げるかにゃ? でも、追手が怖いにゃ。スピカやコペルニクスに追って来られたら絶対に逃げ切れにゃいにゃ。それに逃げたとしても……にゃろ達の居場所はここだけだにゃ! そうにゃ、主を見つけて真実を告げるにゃ! 主なら絶対に信じてくれるにゃ!)


 カノープスは皆の追求で塞ぎ込むムジカの耳元で小さく言葉を放つ。


「ムジカ、ここは一旦逃げるにゃ。みんな、まともじゃなくなってるにゃ」


「で、でも……レグルスちゃんを殺したのはムジカ達なの。逃げるのはいけないことなの」


「にゃ!?」


 カノープスはムジカのその言葉で呆れ果ててしまった。


「このアホォォォ!」


 純粋過ぎる彼女は疑うということを知らず比奈乃の言葉を全て信じ込んでしまった。

 結果、この短時間でムジカの脳内では奉行所へ行ったは良いがレグルスを見つけられなかったという事実から、奉行所でレグルスを暗殺した記憶へと思考が切り替わっていく。

 カノープスはムジカを見捨てることも出来ず比奈乃に尋ねる。

 

「にゃろ達はこの後、どうなるにゃ?」 


「2人は洗脳を受けているだけ。みんな、元凶は全て悪魔教よ! 2人を悪く言うことはこの私が許さない! 憎むべき対象は悪魔!」


「そ、そうじゃん! 2人は全く悪くないって! 2人はうちが全力で元に戻すって!」


「「うぉぉぉ! そうだ、悪いのは悪魔教!」」


 比奈乃の言葉に皆が熱くなり悪魔教に憎悪を込める。

 カノープスやムジカを非難していた隊員達もすぐに悪魔教への罵詈雑言を放つ。


(こ、こいつら……単純過ぎるにゃ! ムジカ並みにおつむが弱すぎるにゃ!)


 星々の庭園の未来に不安を感じてしまうカノープスであった。


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