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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
126/263

虚無にて

 四条河原町で男性の亡骸を発見するレグルス。

 先程と同じように悪魔教徒による集団暴行から止めを参加者に刺させたようだ。

 証拠として持ち帰るため、男性の部分が切り落とされている。


「酷いですわね。最後は心臓にナイフで一突き……如何にも素人の刺し方ですわ」


 その傷口から参加者が自ら望まず行ったことが見て伺える。

 僅かながらに反発した痕跡が残されていたためである。

 

(参加者は妾を含めて12名。1人はすでに解放したけれど……妾1人だけではとても時間が足りない)


 屋根伝いに移動しながら参加者を探すレグルス。

 美心から受け取った陰陽術式無線機から通信が入る。


「悪魔教徒を発見。一般人を救出し解放に成功」


「某も一般人女性を解放したところだ。それより何なのだ。このぬるい任務は……」


「うちも2人解放~。超楽勝じゃん」


 参加者の救出に出動した星々の庭園隊員の人数は3名。

 深夜遅くという事もあり幼い隊員達は出動していない。


(多くの隊員は日本各地の悪魔教拠点を潰すため京都には居ない。今、京都にはスピカとデネボラに加えコペルニクスの古参3名。参加者の救助は彼女達に任せて大丈夫そうですわね。妾は攫われた参加者2名を最優先させていただきますわ)


 レグルスは再び花見小路通に足を運び、悪魔教が入信者を集っていた会場へ潜入する。


「いつまでもたついている!? たかがキモいおじさんを殺し、ち◯こを持ち帰ってくるだけの簡単なお仕事も成せないなんて!? まったく、今回の新規入信者は0名……こんなの報告できるはずないでしょう!」


「多くの女性が今の男尊女卑の日本に甘んじていることがよく分かりますね」


「いいえ、日本人女性の多くは真実を知らないだけ。アップデェトできていない彼女達はいわゆる脳みそがおばさんなのです。それを若返らせるため男のキモさを伝えているというのに……理解できない女性が多すぎるわ!」


 物陰から佛問と信徒の会話を盗み聞きをしていたレグルスは呆れ果てる。

 

(太巻きや鉛筆を男性器に見立て下らない思想を伝えるのがアップデート!? この方達、どこまでも残念な……はぁ、同じ女性として情けないですわ)


 フッ


 レグルスは話に夢中になっている佛問と教徒に気付かれないよう奥の扉へ進む。 

 その部屋でレグルスはおぞましいものを見る。

 ねぇよ男性として連れ去られたはずの女性2人は首を裂かれ血抜きをするかのように天井から逆さに吊るされていた。

 床には大きな桶が設置されており、大量の血液が今にも溢れそうな位置まで溜まっている。


「うぷっ……ひ、酷い」


 悪魔教と異なる思想を持つだけでこのような目に遭うのはあまりにも理不尽。

 レグルスは沸々と怒りがこみ上げてくる。

 だが、ここで悪魔教信者らを抹殺することは奴らとしていることは同じ。

 今までの彼女ならば、すぐにでも相手の生命を奪い余計な争いが生まれぬよう終わらせていただろう。

 嫉妬によって暴走する無惨な相手には、奉行所にて厳格な裁判にかけられ罰を受けてもらう。

 それこそが悪魔教と同質でないことを証明できる唯一の方法である。

 プライドの高いレグルスだからこそ絶対に譲れぬものがそこにはあった。


 ガチャ


「あら? あらあらあら……いつの間に侵入者が」


 扉を開け入ってきたのは信徒数人と佛問。

 信徒らを引き連れている佛問にレグルスは問う。


「この方達の命を奪ったのは何故ですの?」


「んあぁ? ああ、そこの雌豚はねぇよ男性になることも拒んだためよ」


「そこの雌豚ですって? もはや貴女達にとってこの方達は人間とさえ見ていないとでも言うんですの?」


「え~人間? 何処にいるのかしらぁ? わたくしとこの者達はサタン様の忠実な眷属だし……下地処理中の雌豚2匹のことでもないだろうし……あららぁ!? もしかして、あんたのことかなぁ? ぷひっ、ぷひひひ!」


「ぎゃはははは!」


「ウケるぅ!」


 佛問と信徒達は突然、哄笑し始める。

 

「ぷひっ、何処から忍び込んだかは知らないけれどあんたはもう終わりさね。そこの雌豚と同じように血を抜き取ってサタン様の供え物にしてやんよ!」


 相手が1人だけということもあり早くも勝ち確を誇る佛問。

 だが、レグルスは至って冷製である。


(どうしてですの? いつもの妾なら……ああ、そうか。そういうことですのね)

 

 レグルスは他人に馬鹿にされることが苦手である。

 プライドの高さが少しのイジられにも耐性を付けることを阻害していた。

 だが、この者達に何を言われても心に響くものがない。

 それは悪魔教が見下げるほど哀れな存在であることを物語っていた。

 

「はぁ、殺さずしてここを制圧するのは骨が折れそうですわね」


「1人で何ができるってんだ! このアバズレ糞ビッチがぁぁぁ!」


 佛問の指示で一斉に信徒達がレグルスに襲いかかる。

 ある者は鎌を手に、ある者はボウガンを手に、またある者は大盾を手に武装している。

 レグルスの得意な武具は暗器と鞭。

 中距離の位置を保ちながら信徒達の意識を奪っていく。


(この者達は溜まりに溜まった嫉妬だけでどうしてここまでの悪行が出来るんですの? 妾だってお義母様に異常に愛されている比奈乃様にはいつも嫉妬していた。けれど、自分の胸の内にその醜い感情を留め生きている。こんな虚しい戦いは初めてですわ)


 ドサドサドサッ……


 信徒達が次々と倒され鉄線で拘束されていく。

 それをただ見ていた佛問の心には恐怖の感情が芽生え始める。


(な、なんだと言うの……この娘っ子、只者では無い!? はっ、もしやこいつが春夏秋冬美心が私設部隊星々の庭園(スターガーデン)か!? あの尼僧様でさえ圧倒した化け物子女共にわたくしの勝率は……0%!)


「さて、残るは貴女1人ですわね」


「そのようですね。ここは大人しく投降します。きちんと奉行所に知らせて下さる?」


 佛問の意外な諦めの良さに驚くもレグルスは佛問を拘束し答える。


「ええ、勿論。暫く牢の中で頭を冷やすことをおすすめしますわ」


 ニチャア……


 佛問は不気味な笑みを浮かべ、やってきた岡っ引きに信徒達と共に連行されていく。


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