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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
124/263

演説にて

 演説台に立った佛問が演説を始めた。

 

「さて、貴女達は男がキモいと思ったことはありませんか? おかしいことではありません。男がキモいそのものが真実なのだから、決して自分が異常なのではありません」


 レグルスは佛問の言葉で違和感を覚える。


(なぜ、何の脈絡も無く男性の話から始まりますの?)


「さて、ここで何故男がキモいのかいくつか例を挙げてみましょう。まずは貴女達も食したことのある巻き寿司です。節分には切り分けられていない太巻きを食しますが、ここにも男のキモさが存分に込められています」


 レグルスは首を傾げる。

 太巻きと男性に何の因果関係も無い。

 それは講演に参加している皆が思うことだった。

 だが、ここで衝撃的な言葉が放たれる。


「この太巻きをまるでちん◯を掴むように手に取り、そして先端から丸かじりを……」


「いやぁぁぁ! ひ、卑猥よぉぉぉ!」


 後方から見ていた悪魔教の1人が突如叫ぶ。

 

「分かりましたか。太巻きは男性器を模しているのです。貴女達はこれからも太巻きを丸かじりできますか? いいえ、出来るはずがありません! なにせ、太巻きはちん◯なのですから!」


 レグルスは思った。


(ええっ……男性の話だと思ったら太巻きの話!? もう、訳が分からないですわ。そもそも、太巻きをアレに見立てるなんて欲求不満なだけじゃ……はっ!? もしかして、少しでも口に入れたくない食べ物を増やし人類を飢えさせる印象操作!? なんて下劣な手口を……悪魔教なら有り得そうですわね)


 そして、参加者の1人が反論するように突如声を上げる。


「私の家は寿司職人なのですが太巻きを男性器に見立てて夫は作っていませんし、注文した方々も普通に食べていましたが……」


 何気ない一言だが佛問は機嫌を損ねたかのように参加者を睨みつける。


「貴女、結婚しているの?」


「えっ? は、はぁ……夫と息子・娘の4人家族ですが」


「う、うらやま……ごほん! ねぇよ男性だぁぁぁ! ひっ捕らえろ!」


「えっ? きゃぁぁぁ!」


 参加者の1人は衣服を剥ぎ取られ何処かへ連れ去られていった。

 レグルスは開いた口が塞がらない。


(反論することさえ許さない!? こ、こいつら……流石は悪魔の眷属。性根が腐ってやがりますわ)


 実際には違っていた。

 寿司職人を夫に持つ先程の参加者は既婚というだけでねぇよ男性扱いにされてしまい悪魔教の家畜として飼われることになったのである。

 ただ結婚している……それだけ悪魔教内では大罪なのだ。

 それは若い女性がいない構成員を知れば理解できるであろう。


「こほん、先程の方は悲しいですがねぇよ男性となりました。悪魔教は自らの欲望に従い堕落な生活を善とします。そのため、掃除・洗濯など家事を代わりに行う者が常に足りていません。ねぇよ男性とは女性でも男性でも無い単なる家畜です。今、入信すればねぇよ男性を1人特典としてお付けしましょう」


(少女達は金の成る果実のように商品として扱い、淑女達は奴隷扱い? もしかして、こいつらって自分達以外の女性はすべてモノとして見ている? お義母様が仰っておりましたわ。女の敵は女だと……)


 レグルスは佛問に目を付けられぬよう気配を消し講演を聞き続ける。


「男のキモさですが、太巻きだけではありません。日常の様々な場所に潜んでいます。次にお見せするのはカカシマヤで独占販売されている鉛筆という墨を必要としない筆です。わたくしはこれを見た時、絶望に打ち震えました。あまりの恐ろしさに食事が喉を通らぬ日々が3年ほど続いたことは言うまでもありません」


(3年も食事しなかったら栄養失調で亡くなるのでは? ……って、つい突っ込みたくなってしまいましたわ)


 佛問は鉛筆と鉛筆削りを取り出し公園を続ける。


「皆さん、決して目を離さず御覧ください。鉛筆を鉛筆削りの穴に挿入し、くるくると回します!」


「きゃぁぁぁ! な、なんて卑猥なっ!」


 再び、後部に居る悪魔教信者が声を高らかに上げる。

 だが、参加者は誰もなんとも思わない。

 レグルスも同様だった。


(え……何が卑猥? ただ鉛筆を削っているだけでは……)


「あの……すみません。意味が分かりません」


 参加者の1人が佛問に質問する。

 佛問は大きく溜息をつき口を開く。


「他の方々も同じようですね。残念です。これのキモさが理解できないなんて……鉛筆は男性器、鉛筆削りは女性器を模しているのです。そして、鉛筆を削ったあとの木くずこそ女性の子宮に残された精液……どうですか!? こんなキモいモノが販売されているなんて、それこそ女性蔑視の代表的商品だと思いませんか!」


(思いませんわね……ってか、貴女の脳内が如何に破廉恥か理解できただけですわ)


「あ、あの……帰っていいですか? 私が期待した教えでは無いようなので……」


 参加者の1人が佛問に問いかける。

 

「なるほど、悪魔教に興味など無いと?」


「あくまで私個人がですが……」


「ねぇよ男性だぁぁぁ!」


「えっ!? ど、どうして……いやぁぁぁ!」


 再び参加者の1人は着ぐるみを剥がされ何処かに連れ去られていく。

 悪魔教の教義に賛同しない女性はすべてねぇよ男性化されるのも悪魔教の大切な教義である。


(こ、こいつら……あまりにも横暴で自己中心的すぎますわ。この会も恐らく目的は布教ではなく利用できそうな女性を攫うため? だとしたら失策でしたわ。妾1人なら強行突破して逃れられるけれど、他の参加者を見殺しにはできないですし……困りましたわね)

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