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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
123/263

パパ活にて?

 カペラがエゲレスに向かうため、京都から去って約半年。

 今日もレグルスは美心の側仕えとして働いている。


「レグルス、この着物に似合う帯が見当たらないのだが……」


「お義母様、今夜もパパ渇ですの? あのようなみっともない真似はもうお止め下さいませ」


「くくっ、他人の金で食う飯ほど美味いものは無いからな。それに情報収集にはもってこいだ」


「それでもです! 老婆の姿でパパ渇ならともかく……その美しいかぐや姫のようなお姿がオジサマ達に乳繰られる姿はもう見るに堪えられないですの!」


 レグルスは美心の側仕えとなってすでに5年以上の経験がある。

 今まで見ることの叶わなかった美心の私生活に関わることで知りたくなかった事実も多く知ることになる。

 今回の出来事もその内の1つである。


「まぁ、案ずるな。俺は奴らをATMとしか見ていない。それに奴らに大金を使わせることで経済が回る。それはつまり、この日本がより豊かになるということだ。日本の経済が良くなるということは……レグルス、お前の給料も良くなるということだ」


(えっ? それって……妾のために乳繰られているってことですの!? あ、ああ……お義母様! 妾のために自らの御身を犠牲に……心からお慕いしておりますわ!)


 レグルスは解釈を大きく誤解し美心の慈悲深さに感涙する。

 だが、美心にとっては単なる言い訳の1つに過ぎない。


(ふぅ、今回は何とかうまく説得できたぜ)


「そ、そうだったのですわね? お義母様、妾もお義母様に見習いパパ渇というものをやってみとうございますわ!」


(な……ん……だと? レグルスがパパ渇に興味を持つとは……も、もしや好きな男を落とすためのテクを得ようと? 確かにパパ渇はコミュニケーションの修行としても最良。それにレグルスに嫁の貰い手が付いてここを出て行ってくれれば……げっへへへ、俺も自由にしたい放題できるってことじゃん!)


「ふふっ、お前も日本経済のため生贄となる道を選ぶか……良いだろう! まずは立ちんぼからだ! 俺のおすすめスポットは祇園! 今から手本を見せてやる。付いて来い」


「はいっ!」


 おめかしをし祇園に向かう2人。

 二寧坂で間隔を開け立ちんぼをし紳士(ATM)がかかるのを待つ美心とレグルス。

 

(ここでオジサマが釣れるまで待つと言っても……ただ立っているだけで本当に良いんですの?)


「おやおや、こんな時間に娘っ子が1人で。はよ、帰りなさい」


「……えっと……わ、私……お腹が空いて……動けなくて……」


 立ってものの数分だった。

 美心が身なりの良い商人に声をかけられている。


(流石はお義母様。もう、何処ぞのオジサマを虜にしている。相手に大金を使わせ日本経済を回すのが目的と仰っていたけれど……でも、やっぱり偉大なお義母様がオジサマに媚びを売るお姿を見るのは苦痛すぎますわ!)


「そうかいそうかい。それじゃ、ワシが飯を食わせてあげよう」


 美心はその商人の腕を掴み近くの宿場に入っていった。


(大丈夫。お義母様はオジサマと一緒にお食事をするだけ……それ以上の関係を迫ってきた場合は慈悲も与えずにこの世から消滅させると仰っていた。妾も釣れたら同じことをすれば良いだけですわ。そのための暗器もいくつか仕込んできているし……)


「おや? お嬢さん、こんなところに1人で居ると危険だよ」

 

 レグルスの前に姿を現したのは羽織袴を身に纏う侍。

 顔も凛としていて好印象な青年である。

 レグルスは勇気を出して美心に教わった演技をする。


「その……旅の途中でスリに遭ってしまって……」


「なるほど、一銭も無くなってしまい今晩の宿も無いということか。それは大変だ」


「はい、それでお腹も空いてきて……どうしようか悩んでいたんですの」


「ふむ……この近くに寺がある。そこの住職とは顔見知りでね。良ければ君を泊めてくれるよう話をつけてあげるけれど……」


 レグルスは悩んだ。

 相手の侍は善良な人間で嘘を付き食事を奢らせようとしている自身が惨めに感じた。

 プライドの高いレグルスはようやく理解した。


(妾にパパ渇は無理ですわね。妾はお義母様の側仕えだけで満足。今日は帰って休むとしましょう)


「えっと、スミマセン。嘘を付いてしまいました。本当は旅の途中なんかではなくてお腹も空いていませんの」


 レグルスは叱られることを覚悟して侍に真実を話す。

 

「ほっ、それなら安心だ。家はこの近くなのかな? 夜道は危険だし送っていこう」


「ありがたいお言葉ですが1人で大丈夫ですわ。本当にすぐ近くですので」


 レグルスは軽くお辞儀を済ませた後、侍と別れ春夏秋冬邸へと足を運ぶ。

 花見小路通の歓楽街を歩いている時、数人の淑女が女性に声掛けをし路地裏に案内している。

 

(この辺りの路地裏に店なんて無かったはず。客が女性ばかりだというのも怪しいですわね。もしかして、カノープスの報告にあった悪魔教? 悪魔教はそのほとんどが淑女だけで構成された……いいえ、悪魔教信者が淑女なんて気品の良い女性ばかりではありませんわね。頭のおかしいおばさん集団が適切ですわ。もしかして、新たに信者を獲得するための呼び込みをしている?)


 レグルスは少しでも悪魔教の情報を得ようと路地裏の扉に入る。

 扉の先は地下に続いていた。

 階段をゆっくりと降り辿り着いたのはバフォメット像が置かれた部屋。

 信者らしき者は2人で、それ以外は歓楽街で声掛けを受けた一般女性ばかり。

 数分後、1人の信者が演説台に置かれていた陰陽術式拡声器で挨拶をする。


「これより悪魔教入信説明会を開催します。本日の講演はわたくし、佛問茎子ぶっといくきこが行います」


 佛問はセブンシンズの1人である。

 彼女の仕事は悪魔教信者数を増やすこと。

 あらゆる手段で信者数を獲得する悪魔教だが、今回は最も平和的な行動で入信者を増やすつもりのようだ。


 カチャ


 入ってきた扉が閉じ裏から鍵をかける音をレグルスは聞き逃さなかった。


(なるほど……流石は悪魔の眷属共。入信を断ることすら許されないってことですわね?)

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