カペラ⑧
「お客様、現在は関係者以外立ち入り禁止で……」
「比奈音は何処に居る?」
「こ、これは大奥様! 失礼致しました。こちらの部屋で少々お待ち下さい」
比奈音様とお会いするのは初めてです。
拙の聖剣は比奈乃様を生涯守るために振るうものであるとお義母様は仰った。
比奈乃様の母君であらせられる比奈音様に認められるよう拙は頑張らなければならない。
……拙の聖剣も見せたほうが良いのかな?
比奈乃様を守るための聖剣……比奈音様に一刻も早く信頼を得るためには拙の扱う武器を見せたほうが良いと思いました。
「お義母さん、お待たせしました。あら、あらあらあら? もしかして、この子が?」
「そ、そうだ。比奈乃に相応しい夫となるよう俺が育てた……ほら、挨拶」
拙は何のことか理解できないまま、比奈音様に頭を下げ挨拶をしました。
同時に下着も下げて聖剣を見せたほうが……いいえ、まだ早いと思います。
聖剣の話が出た時に見せるべきだと考え今は耐えることにしました。
「カペラと申すでありんす……」
「んまぁ、可愛い娘! でも、お義母さん。いくら比奈乃が女の子好きだからって夫まで女性にしなくてもいいのよ?」
「くくっ、大丈夫だ。こいつはな……男の娘! 俺の最高傑作だ!」
「ええっ? この姿で……男……の……子?」
拙は2人の話の意味が理解できません。
ですが、比奈音様の視線で気付きました。
拙の聖剣の方を見ている……これは今すぐに下着をずらし拙の聖剣をお見せするチャンスであると!
拙は着物の裾を持ち一気にたくし上げました。
「きゃっ……」
「ちょっ……カペラ!」
「今、拙の聖剣をお見せするでありんす!」
「えっ、せ……聖剣?」
そして、下着をずらし柄を握ります。
大丈夫、今なら抜ける……何故か分からないけど柄の部分も熱くなり大きくなっています。
拙の心臓音も早い……これは拙が興奮している?
いいえ、興奮などで片付けられる言葉では表現出来ない……そう、これは聖剣が拙という鞘から出たいと願っているサインなのだと気が付きました。
「はい、今こそ抜いてみせるでありんす!」
「だから、ヌかなくていいからぁぁぁ!」
「まぁ……な、なんて……おっきぃ♡」
くっ、またお義母様に止められてしまった。
ですが、比奈音様は拙の聖剣を食い入るように見つめます。
流石は比奈乃様のお母様です。
柄の部分を見ただけでこの聖剣の威力が理解できたのでしょう。
拙は下着を穿き着物の裾を降ろしました。
「こ……こほん……えっと、その……」
「こほん……まぁ……はい……」
その後、暫くの間沈黙が走りました。
お義母様と比奈音様は顔を真っ赤にして言葉を詰まらせているようです。
拙は何かしてはいけないことをしたのではないかと心配し比奈音様に訪ねました。
「比奈音様、拙は合格でありんすか?」
比奈音様は拙の目を見つめ話します。
「カペラ、貴方……比奈乃のことは好き?」
比奈音様の質問に拙は間を開けること無く答えます。
「はい、比奈乃様は拙が一生をかけるに値する御方! どんなに困難な戦争が起きようと拙は命を賭して比奈乃様を全力全身でお護りする所存でありんす!」
「ふふっ、素晴らしい。カペラ、お前もずっとその気だったのだな。比奈音、この子なら必ず比奈乃を幸せにしてくれるだろう」
「分かりました。ですが、最後に決めるのは比奈乃自身。あの子に本当に相応しい相手なのか、ここでじっくりと見極めさせていただきます」
「ああ、初めからそのつもりだ」
その後、拙はタキシードという服を比奈音様の従者の者に着せられました。
そこでパッド入りブラも没収されましたが、ここには星々の庭園の仲間は居ないということなので少し安心しました。
ただ、問題点はスラックスです。
拙が聖器を持つ者であることがバレやすそうで怖いです。
「あら、本当に貴方格好良いじゃない。うんうん、やっぱりTPOをわきまえた服装をしないとね」
TPO?
拙は考えました。
これは英語の頭文字を取ったものであることは確実です。
テメノス・ファントム・オプレント……。
「なるほど絢爛たる幻想の聖域……でありんすね?」
「??? そうね、お客様にとって聖域になってもらえると良いわね」
比奈音様も認めてくださったことで拙は確信を得ました。
ここは拙にとって制裁戦争から回避できる唯一の聖域であると。
お義母様は初めから拙の聖剣を誰かに奪われることなど無いと確信していた理由がやっと判明しました。
「カペラくん、貴方には来店されたお客様の対応を任せます。店の品格を落とさぬよう決して失礼のないように……」
なるほど、聖域であるのはこの建物の中だけ。
拙は襲撃に来た者を各個撃破する技術をここで養えと……。
しかも、この聖域を一切汚さずに行えと……比奈音様の任務は非常に高難度であることが予想されます。
「んじゃ、俺は京都へ帰る。カペラ、しっかりやれよ」
「お義母さん、カペラくんはしっかりと面倒見るから気にしないで下さいね」
お義母様が去る間際、拙の肩に手を当て小声で話しました。
「カペラ、比奈乃を自分のものとするためにその母である比奈音をまずは落としてみせろ。大丈夫だ、お前ならやれる」
そう言い放ち、お義母様は窓から飛び出し一瞬で見えなくなってしまいました。
それよりも何のことでしょう?
比奈音様を落とす?
……ま、まさか!?
拙は比奈音様のおっぱいを見ました。
お……大きい……これは確実に核融合炉を搭載しているに違いありません。
もしかして、比奈音様を実験台にすれば乳トロンジャマーを完成できる!?
そういうことだったのですね、お義母様!