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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
118/263

カペラ⑥

 制裁戦争について拙は大きな勘違いをしていました。

 聖器を持つ人間は拙だけ、そう思い込んでいたことです。

 ですが、実際には違った。

 ムジカちゃんのおっぱいも聖器……。

 なるほど、拙の胸が一向に膨らんでこない理由はすでに別の聖器を持っているため。

 そう思うと拙は少しだけ安心できました。


「ふふっ、僕達はまだ第二次性徴期の真っ最中。気にすることはないさ。僕はもちろん誰よりも大きく育つことは確定しているからね、はっはっは」


 うん?

 誰もよりも大きく……?


「ああっ!」


 拙はまた大きな勘違いをしていたことに気が付きました。

 そうだ、ムジカちゃんだって最初から大きかったわけではない。

 幼い頃はぺたんこだった。

 彼女は成長が皆より早く、おっぱいが完成しただけに過ぎない。

 リゲルちゃんやシリウスちゃんもいずれ成長しておっぱいが完成するとなると……いや、聖器がいくつも存在するなんてことはあり得ないはず。

 ということは……おっぱいは聖器では無い!?


「なんていうことでありんす! 拙は……拙は……大きな過ちを犯していたでありんす!」


「ふふっ、理解できたようだね。そうさ、君の胸もいずれ成長し、ミサイル並みに育つ。そう信じていれば必ず報われるよ」


 ミサ……イル……!?

 リゲルの口から叡智の書に書かれている最恐兵器の名が何故出てきたのか、拙は理解に苦しみました。


「ミサイルって……もしかして……核!?」


「かく? ……はっはっは! カペラ、君の傲慢さも中々だねぇ! 核ミサイル並みの胸に育ちたいって!? ふふっ、頑張れば誰だって核ミサイルをも圧倒するほどに育つはずさ! もちろん、僕の胸だって核ミサイル以上に育つのは確定しているけどねっ!」


「核ミサイル以上……そ、そんな!?」


 なんということでしょう。

 どうやら、脂肪だけと思っていたおっぱいの内部には核融合炉が搭載されているようです。

 よく考えると確かに日々の稽古や生活がどんなに過激でもムジカちゃんが疲れているところを見たことがありません。

 核融合炉はほぼ無限にエネルギーを発生し続ける。

 拙は核融合炉をその体内に宿す者達を相手にしなければいけなくなる未来に恐怖しました。

 ですが、ここでただ震えているだけでは何も始まりません。

 

「核についてもっと識らないと……」


 拙はその日、徹夜で核について図書館で分かることはすべて網羅しました。

 ですが、核について書かれている書物は叡智の書のみ。

 それも当然、明治の世で核を識る者はお義母様だけだからです。

 しかも、叡智の書に書かれている核も悲惨な結末になるものが多く識れば識るほど絶望へと変わっていきます。


「核融合炉を前に武力を持っての攻撃は周辺に放射能を撒き散らす危険性が高い……拙は襲ってくる相手に為す術もなく蹂躙されろと!?」


 核に対抗できる確実な手段を拙は何も発見できませんでした。

 唯一の可能性は叡智の書に書かれていた核運動を妨げるニュートロンジャマー。

 おっぱい内部に核融合炉を持つ相手を前に言えば、乳トロンジャマーといったところでしょうか?

 それを陰陽術で可能にする……拙だけでは無理です。

 お義母様のお力添えがなければ自身で新たな陰陽術を開発することなど不可能。

 それにお義母様ならおっぱいに対抗できる手段について何かご存知かも知れません。

 次の日の夜、拙はお義母様の私室へとお邪魔しました。

 

「ごほっごほん! あ、ああ、カペラか。どうした?」


「お義母様、風邪が酷く……」


「ごほっごほっ……なぁに、たかが体温が45度6分なだけだ。それよりも私になにか用事があって来たのではないか? お前が真剣な眼差しで私に話す時は余程追い込まれた時だけだからな。遠慮せずに話すが良い」

 

 お義母様の御慈悲にはいつも助けられます。

 拙は早速、おっぱいについて訪ねました。


「ふふっ、カペラもそういうことに興味を持つようになったか。男の娘の最大の悩みは胸を晒せないこと……だが、大丈夫だ。おっぱいは装備できる!」


「装備……でき……る!?」


 拙は高圧電流に撃たれたかのような衝撃が全身に走りました。

 核融合炉を拙も装備すれば無限のエネルギーで襲い来る者達に負けることはない。

 拙は絶望しか無い制裁戦争で唯一の希望を見出すことができたのです。


「お義母様、その装備できるおっぱいの作成方法をお教え下さい!」


「ごほっごほっ……くくっ、そう焦ることはない。突然、巨乳になったら皆の注目の的になってしまう。まずは少しずつ大きくしていくことだ」


「えっ、でも……そんなに何度もサイズを変えていては作成する労力が増えるだけでは?」


「ふふっ、安心しろ」


 お義母様は私室の棚からとある物を取り出しました。


「お……お義母様……それは?」


「くくっ、パッドだ。これでBカップ程度なら皆の目を誤魔化せる」


 お義母様がブラジャーという下着にパッドをはめて拙の身体に装着してくれました。

 見た目は格好悪いですが、なんということでしょう。

 着物を再び着てみると胸がリゲルちゃんより少し大きい程度に出て見えます。


「おおっ、良い! 良いぞ! カペラの可愛い見た目がさらにアップした!」


 拙も何だか嬉しくなりましたが、これは単なる目眩ましに過ぎません。

 核融合炉を拙も装備しなくては制裁戦争で一方的に蹂躙されるだけ。

 拙の股間にある聖剣を皮ごと引き抜かれ絶命する運命です。


「お義母様、でも拙は核融合炉を……」


「ごほっごほっごほん! えっ? あ、ああ……シリコンバストなら俺が作っておいてやろう。今日はもう遅いから寝なさい」


 お義母様が核融合炉を内蔵したおっぱいを作ってくれるようなので、拙はそれを楽しみに今夜は眠ることにしました。

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