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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
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カペラ④

 あの日から4年……拙は目立たぬよう行動することを常に意識しました。

 お義母様が言うには聖剣をその身に宿していない人間は群れを作るようです。

 そのコミュニティの中で自身の立ち位置を認識し生活することに生き甲斐を感じるとも聞きました。

 拙は初めの頃は群れずに1人で居たほうが目立たなくて良いかと思いましたが、どうやらそれは甘い考えだったようです。

 スターズの中ではシリウス派とスピカ派に別れ、1人で居てもどちらの味方をするのかでいつも争いに巻き込まれたからです。

 青年期が近付くほど聖剣を持たぬ人は集団の意識を強くするようです。

 隠密性を考えるならシリウス達は穏健派で拙が目立つ機会も減ると思い、拙はシリウス派の中で常に出来ない子を演じ続けました。


「ふふっ、カペラ。昨晩、叡智の書第15巻を読破したようだね。どうだい? お義母様の叡智に触れた気分は……」


「拙には難解でありんした。時間が許す時にリゲルから直々に指導を賜りたいでありんすえ」


「ふっ、やはり君には早すぎたようだね。良いだろう、僕がマスターの叡智を直々に教えてやろう」


 目立たぬようにするには周りと一定の距離感を保ち自然と溶け込むのが良い。

 拙は1年ほどで今の自身の立ち位置に辿り着けました。

 更にスターズのみんなと同じ女子として、輪に溶け込みやすいよう言葉遣いも変えました。


「ほらほら、そんな振り方では隙が大きいわよ!」


「シリウス、拙はもう限界でありんす」


「仕方ないわね。次!」


 出来ない子を演じることで稽古の時も早々に見捨てられやすいです。

 スターズ内の稽古は実力主義がものをいうので落ちこぼれを演じると目立たない。

 後は訓練場の端で1人になり素振りの稽古をする。

 拙が目立てていないことを自分でも理解できる至高の一時です。


「今夜の潜入先は奉行所。冤罪で捕まった平助という人を誰にも発見されず関所まで連れて行くこと」


「中々の高難度ミッションでござるな」


「ふふっ、カペラ。君には重荷になりそうだし後方から皆の援護を頼むよ」


「了解でありんすえ」


「カペラ、待っててね。わちがすぐに終わらせて帰ってくるから」


 拙は奉行所から離れた場所で皆の様子をただ眺めるだけ。

 実践任務も出来ない子を演じ続けたおかげで最高に目立っていない時間を味わうことが出来ました。


「カペラ、今夜も訓練場に来なさい」


「はい、マスター」


 出来ない子を演じ続けましたが、実は夜中にお義母様から直々に稽古を賜り、拙は制裁戦争で自身の聖器を守ることができるほどの強さを得ていました。

 昼間に行われる稽古がどれも退屈に感じるほど力を付けていることに気付いたのはつい最近です。

 ある日の夜、訓練場ではなくお義母様の私室に呼ばれました。

 今日は数年ぶりにお義母様直々の健康診断なのだと思います。


「ふむ、良い筋肉の付きをしている。五臓六腑も健康そのものだ。ふむ……そろそろ第二次性徴期が始まる頃合いか」


 浴衣を脱ぎ拙の身体を観察するお義母様が気になる言葉を放ちました。


「第二次……成長期!? 拙はまだ強くなれるでありんすか!?」


「くくっ、エクスカリバーを放つためのシードもそのスフィアにかなり蓄積されたはずだ。当然だろう」


 人間は常に成長し続けられる生物だと思っていましたが、お義母様の言葉で色々と合点がいきました。

 成長し続けられても誰にでも限界がくる。

 その限界を簡単に超えられる人生で二度目のフィーバータイム……それが第二次成長期!

 拙は絶好の機会を得たのだと歓喜しました。


「で、では……抜いてみても良いでありんす?」


「ふぁっ!? ヌくって……いやいや、それはまだ無理だろう」


 お義母様が何故、赤面するのか理解できません。

 いつも、お風呂で拙の裸を見ているから恥ずかしさでは無いと思います。

 それよりもエクスカリバーの刃を見てみたい気持ちが先走り、拙は下着をずらし聖剣の柄を握りました。


「いいえ、今の拙なら絶対にいけると思うでありんす」


「イ……イクって!? イかなくていいからぁ! カペラ、中腰になってそこを握るの止めなさい!」


 どうやら、そう簡単にエクスカリバーを抜き出すことを許可して貰えそうにありません。

 簡単に抜いてはならないほど危険な代物だろうと拙は改めて心に強く刻みつけました。

 それにお義母様はスターズの仲間同士で拙の聖剣を奪い合う制裁戦争を起こしたくないのだろうと思います。

 拙は自身に宿る聖剣を気にしつつも下着を着て浴衣を身に纏いました。

 その後、お義母様に特別な陰陽術を教えてもらいました。

 その術とは……。


「第二次性徴期に迎え覚えておく必要があるだろう。精子を操ることができる技をな……くくっ、いわゆる自慰というやつだ」


「生死を……操る……そんなことがっ!?」


 拙は驚きました。

 生死を操ることなど、もはや神々の領域だったからです。

 お義母様は拙の驚愕に無反応で続けて話します。


「青年期になるとそのスフィアに蓄積されたシードが臨界点を迎え暴発することがある……眠っている時にな。喜ばしいことなのだが……その……朝、下着をこっそり洗いに行くとか恥ずかしいだろ? 俺も転生前に恥ずかしい思いをしたものだ。特に洗濯機へ汚れたブリーフを入れる瞬間を母ちゃんに見られた時のあの表情は今でも悪夢として蘇る……」


 お義母様が何やら呟いていましたが拙はよく聞こえませんでした。

 唯一、聞こえた暴発の原因は納得できます。

 叡智の書によるとエクスカリバーは聖なる剣。

 エクスカリバーそのものが意志を持って勝手に鞘である拙の身体から抜けることもあるのだと拙は理解しました。

 心配なのはエクスカリバーの攻撃力が未知数なこと。

 下着が汚れるどころか拙の部屋が消えてなくなるほどの威力だったら確かに大変です。

 怪我人どころか死人も出てしまうと思います。

 同室のムジカちゃんやカノープスちゃんを巻き込んでしまうことになると思うと怖いです。

 そのための生死を操る陰陽術。

 もしも、拙の聖剣が暴発しムジカちゃんやカノープスちゃんを死なせた場合は拙がその生命を復活させる……。

 拙の聖剣が暴発した際の責任は拙が取らなくてはならないのは当然のことです。


「はいっ、マスター! 拙はなんとしてもその陰陽術を極めて見せます!」

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