カペラ③
1つの説にたどり着きました。
おそらく、今見えている部分はエクスカリバーの一部。
あくまで予測ですが柄の部分なのだろうと思います。
そして、剣の部分は体内に宿っている……拙の身体は聖剣を守るための鞘。
これが拙の考え抜いた結果です。
早速、拙は自分の手で柄の部分を握り引っ張ってみました。
「おわっ! カペラ、何をやっている!?」
「えっ? えっと……抜こうかなと思って……」
「ヌく……だとっ!? い、いや……流石に早すぎないか!? お前はまだ6歳なんだぞ?」
お義母様は何故か顔を赤くしながら、慌てて拙の手を柄から離させようとします。
お義母様の忠告で拙は理解しました。
まだ6歳の拙では聖剣エクスカリバーを抜くことはできない。
でも、自分の身体の中にある刃を知っておきたい。
拙はお風呂に浸かりながらお義母様に聞くことにしました。
「お義母様、エクスカリバーを抜いたらどうなるの?」
お義母様はどう説明するのか考えていたのだと思います。
暫くの沈黙の後、話してくださいました。
「ふふっ、どうしてもヌきたいようだな? せっかちな奴め。だが、今のお前では絶対に無理だ。まだ黄金のスフィアに生命のシードが蓄積されていないからな」
なるほど、どうやら聖剣を使うためにはエネルギーを充填する必要があるようです。
拙は聖剣の下に付いている玉が2つあることで納得できました。
おそらくですがこの玉にエネルギーが満タンになった時、拙は抜くことができるのでしょう。
「でも、拙は知りたいのです。抜いたらどうなるのですか?」
「ふむ……よく考えてみると比奈乃がどこの馬の骨とも分からん野郎に娶られるのは俺としては反対だ。カペラは現時点でも見た目は美しく将来はイケメンとして育つのは確実。何より男の娘。スターズ隊員は全員女性が絶対条件。カペラは見た目が女性的だったため、皆の中に入れたら面白くなりそうで入隊させたが……将来的に考えるならカペラをハーレムもの主人公と設定し育てるのも面白そうだ。もちろん、正妻は比奈乃だが側室としてシリウスやスピカなんかも……くくっ、これは良い設定だ。よしっ、カペラを徹底的に教育し比奈乃に相応しい相手となるよう鍛えよう。げっへへへ、こいつは盲点だったぜ」
お義母様が小声でボソボソと呟いています。
おそらくですが天界にいる神様達と交信しているのだろうと思います。
そして、お義母様が拙と目を合わせ真剣な眼差しで答えてくださいました。
「お前のエクスカリバーは比奈乃のためにある。比奈乃を正妻とし新たな生命を創造することをお前の生涯をかけての任務とする。お前にしかできぬ大役だ、いいな?」
「拙の聖剣を……比奈乃様の為に……」
拙の将来が決まった瞬間です。
拙は比奈乃様のために一生を捧げることを決心しました。
「くくっ、比奈乃が正妻か……羨ましい奴め!」
「えっ……制裁? 制裁って?」
拙は耳を疑いました。
誰を制裁するのか?
おそらく比奈乃様に近付く不敬な者だと思いますが……。
「正妻を知らんのか? 大人になるとお前のエクスカリバーを欲しがる者が群がってくるはずだ。だが、正妻戦争で勝つのは比奈乃だ。何が何でも童貞を奪われてはならぬぞ」
胴体!?
もしかして、聖剣の鞘である拙の身体ごと奪おうとする者がこの世に存在するのでしょうか?
「拙の胴体を奪おうとする者が群がって!? それを守るための制裁戦争なんですね」
拙1人に対し多人数で起こされる制裁戦争。
あまりにも理不尽で拙が不利な戦争です。
「くくっ、そうだ。仲間だと思って油断するな。デネブは今でも性欲で悶々としているのは目で見るだけで分かる。シリウスなんかも将来、性欲が強くなりそうだ。今はまだ安心できるが、あと10年もすると分からんぞ」
「聖……欲……!?」
拙は再び困惑しました。
聖なる欲とは何のことだろうと……。
しかし、それも制裁戦争が起きる理由を想定すると簡単に答えは出ました。
「それって拙の聖なる剣を欲しくなる欲望?」
「もちろん、カペラにもあるぞ。だが、お前は私の言うことを忠実に守れる良い子だ。どうしても欲しくなった場合は1人でヌけるな? いいや、1人でヌけ!」
なんということでしょう。
シリウスちゃんやリゲルちゃん、隊員の皆にも聖欲というものがあるそうです。
その欲が拙にもある……拙はすでにエクスカリバーを持っているため、おそらく他人に奪われぬよう聖剣を守る防衛本能なのだろうと拙はすぐに理解することができました。
人の欲は決して抑えられることが無い。
拙は生きるために村の人を食べるという禁忌を犯したためよく分かります。
欲望には抗えない。
おそらく、聖欲も聖器を持っていない人間からしたら拙を殺してでも奪い取りたい欲望なのでしょう。
そして、拙自身も己の聖欲によってエクスカリバーを守るため相手を傷つけることに躊躇いが無くなると思います。
そして、制裁戦争を終わらせるためには……拙の聖器を奪おうと襲ってきた者を返り討ちにし、2度と愚かな聖欲を持たぬよう分からせることなのだろうと拙は推測しました。
そう思うと拙は怖くなりました。
大人になったら友達のシリウスちゃん達が聖欲の衝動に突き動かされ、血眼になって拙の聖剣を奪いに襲ってくるかも知れない……。
シリウスちゃんだけでなく今にでも誰かが聖剣を奪いに拙に襲いかかるかも知れません。
拙はまだ聖欲を持っていないので必死になって聖剣を守ろうとは思えません。
でも、渡すために鞘である拙の身体から抜こうとしても抜けない。
拙は不安になりお義母様にどうすれば聖剣を守れるのか訪ねました。
「くくっ、簡単なことだ。お前は自分の正体がバレぬよう徹底的に陰に潜み目立たぬこと! 目立てば食われる……そのことを常に意識し自身の性剣を守り抜くが良い!」
拙は決心しました。
エクスカリバーを奪いに来る者を返り討ちにできるほどの実力をつけようと。
そして、今から拙は目立たぬよう雑魚キャラに徹しようと思います。
シリウスちゃん達が聖欲を持つのはもっと大きくなってからの話です。
エクスカリバーを抜けないのも拙がまだ子どもだから……理由としては十分なので、拙はこれ以上お義母様を困らせることはせずお風呂から上がりました。
お義母様も一緒に上がり拙の髪を陰陽術で乾かしてくれます。
久しぶりにお義母様と一緒にお風呂に入れて嬉しかったですが、この日を境に拙の運命は変わることとなったのです。