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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
113/263

カペラ①

 拙が京都にやってきて3年が過ぎました。

 寄宿舎で仲間との共同生活にも慣れ、毎日を楽しく送っています。

 

「うふっ、うふふふ。ほらほらぁ―――!」


「くっ!」


 起床後は仲間と道場にて剣術の朝稽古。

 6歳の拙にとって竹刀はまだ重く上手く操れません。

 それでも問答無用で拙に仕掛ける2つ上のデネブ先輩。

 正直、この人のことはよく分かりません。

 時折、顔がニヤけ赤面しているのが不気味だからです。

 拙はいつも防御するだけで精一杯です。


「所詮、この世は焼肉定食。上手ければ食い不味ければ捨てる。ふふっ、なるほど……そういうことかい」


 朝稽古が終わると食堂で朝食。

 席は決まっており、隣はいつも叡智の書を読みながら食事をするリゲルちゃんです。

 彼女の独り言が毎回気になりつつも彼女が叡智の書を独占しているので、まだ拙は読めていません。

 お義母様が記されたという叡智の書、どんな内容が書いているのかなぁ?


「洗濯、洗濯楽しいな―――。ここもあっちもピッカピカ」


 朝食の後はいつも寄宿舎の掃除と洗濯です。

 みんな綺麗好きでやり過ぎてしまうくらいです。

 今日の拙の当番はデネボラちゃんと一緒にみんなの汚れた服の洗濯です。

 村に居た頃は洗濯板とタライを用意してゴシゴシ擦っていたけど、ここでは違います。

 タライに貯めた水を陰陽術で操作し水流を発生させるだけです。

 拙はまだまだ陰陽術が苦手でデネボラちゃんがご機嫌にかき回し続けます。

 

「あ、何枚か破れちった……テヘペロ」


 破れた服は拙が針と糸を用意し縫直しました。

 デネボラちゃんはお調子者なところがありますが見ていて楽しいです。

 

「ぶぇぇぇん! ごめんなさぁぁぁい!」


 庭に洗濯物を干した後、寄宿舎へ戻ると粉々になったテーブルを横に泣いているベガちゃんがいました。

 彼女の腕力は5歳とは思えないくらい凄く強いです。

 いつも掃除場所の何処かを破壊してしまいます。

 

「ベガちゃん、拙と一緒に片付けよ」


「カペラちゃぁぁぁん!」


 皆はベガちゃんを恐れ、あまり近付きたくないようです。

 彼女の稽古の相手をした子は力加減が出来ていない強力な一撃で、いつも病院送りになってしまうためだと思います。

 でも、拙はそんな強いベガちゃんが大好きです。

 掃除の後は勉学の時間です。

 お義母様の執事である信濃条さんが拙達の勉強を見てくれます。


「レグルスちゃん、そこ違うよ。2玉あげると繰り上がるから……」

 

「そ、そんなの分かってましたわ! たまたま間違っただけですのよ! たまたま!」


 そろばんは楽しいです。

 レグルスちゃんは負けず嫌いだから、思わず口を出してしまうといつも怒らせてしまいます。


「ふふっ、僕はすでに全問解いてしまったよ。君達が僕の領域へたどり着けるのはまだまだ先になりそうだねぇ」


「リゲル、全問間違っているわよ?」


「んなぁっ!」


 リゲルちゃんはいつも色んな子をそそのかすのが悪い癖です。

 でも、最後には自分が恥ずかしい思いをしてしまうことまでお約束になっています。

 勉学の後は再び稽古です。

 日が暮れるまで続くのでとても疲れます。

 でも、お義母様が言うには限界を越えるためには限界を迎えることが必須条件だと言っていました。

 拙もそう思うので特に苦ではありませんでした。

 最初は京都御所周辺を20周。


「みんな、列が乱れているわよ! 意識して!」


「お前の指図など受けてたまるか!」


 先頭はいつもシリウスちゃんとスピカちゃんが競っています。

 シリウスちゃんはリーダー的存在でみんなが頼りにしています。

 彼女は能力的にどれも普通ですが、人を惹き付ける何かがあるように思います。

 拙もいつか誰かに頼られる日が来るのかなぁ?

 スピカちゃんはシリウスちゃんをいつもライバル視しており、言う事を聞かず周りに迷惑をかけています。

 でも、スピカちゃんの周りにも集まってくる子がいるので孤独では無いみたいです。

 2人は同じ村の出身らしいけれど人を惹き付ける力と何か関係があるのかな?


「せい! でやっ! うりゃぁぁぁ!」


「みんな、マスターに言われたことを思い出して」


 走り込みの後は鴨川の河川敷で春夏秋冬流の型の練習です。

 春夏秋冬流はお義母様が開祖の流派です。

 一子相伝だとお義母様はキメ顔で言っていたけれど、皆に広めているのは何故なのだろう?


「でやぁぁぁ!」


「遅い!」


 春夏秋冬邸に戻った後は自身の得意な武器を使った稽古です。

 みんなが入り乱れて戦う乱戦が特徴的です。

 お義母様が張った超回復陰陽陣がある訓練所で殺り合います。

 傷が出来てもすぐに治る不思議な部屋なので、真剣を使い安心して急所を狙えます。

 でも、隙を作るとそこを突いて誰かが襲いかかってくるので注意が必要です。

 この前の拙は背後からシリウスちゃんに首を斬られ、一瞬ですがあの世を見たような気がします。


「ふふっ、みんな僕の存在を忘れているようだね。喰らえ、必殺必中会心の矢! ……くそっ、なんてことだ! 僕が外すなん……ぐえっ!」


 ……リゲルちゃんは矢が得意ですが、余計な一言で注意を引いていることに気付かないようです。

 最後の稽古はスニーキングミッションです。

 すでに日が暮れ街の人々が帰路に着いた頃に始まります。

 今夜のターゲットは悪徳問屋の帳簿。

 皆がお義母様の用意された特製のボディースーツを身に纏います。

 着る時はブカブカなのに腕にあるスイッチを押すと自動で身体に密着します。

 どういう作りをしているのか分解して調べてみたいです。


「1つ、誰にも見つかってはいけない」


「1つ、殺しは絶対に無し」


「1つ、常に実践だと意識をして行動」


「……みんな、気を引き締めて行くわよ」


「「ラジャー」」


 春夏秋冬邸の屋上から飛び降り京の街へ駆け出すところから始まります。

 お義母様が言うには何事も設定に沿った行動をするべきだそうです。

 拙にはまだ早いのか意味が分かりませんでした。

 潜入は思ったより簡単です。

 何人かは見張りに捕まりましたが、いつも夕食中に春夏秋冬邸に帰ってきます。

 お義母様が奉行所に話をつけて解放してもらうとのことです。

 幕府も手を出せないお義母様は本当に素晴らしい天女様です。


「今日もにゃろが1番だったにゃ!」


「くそっ、今日も先を越された!」


「ふふっ、僕を抜くなんてやるじゃないか。次は僕が勝つけどね」


 カノープスちゃんが誰よりも速く帳簿を盗みだし今日の潜入訓練も終わりました。

 カノープスちゃんより速く盗み出す要素が今のところ見当たりません。

 もっとスニーキングミッションについて勉強しないと……。

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