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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
107/263

寺屋敷にて(其の壱)

 一方、その頃シリウス達は破壊された壁の下まで戻ってきていた。


「また修理しなくちゃいけないね」


「拙者がやるでござるよ」


「プロキオンさん、わたくしも手伝うでございますです」


「あー、お姉ちゃん達だ」


「おかえり―――」


「皆様方、おかえりなさえまそ」


 牧場から走ってくるのはエゲレス陸軍に射殺されたはずの子ども達と語尾が偶に変になるフーユェー。

 シリウスはその子達の下に走り寄り大きく抱きしめる。


「あ、ああ……貴女達ぃぃぃ。良かった……本当に良かったぁぁぁ」


「ふふっ、シリウス。このような奇跡を起こせる方は1人しか居ない。きっと、お義母様が助けてくださったんだ。僕の想定通りだね」


「うん、絶対にそう! 女神であらせられるマスターは出来ないことなど無いのだからね!」


「マスターは女神でござるからな!」


「まだ出会ったことのないマスター……素晴らしい慈愛に満ちたお方でございますね」


 彼女達は知らない。

 蘇生がカペラのおかげだということを。

 その結果、美心への忠誠心が爆上がりすることとなった。


「みんなして何をしているでありんすか?」


「カペラ! マスターが……お義母様がこの子達を生き返らせてくださったんだよ!」


「さすがはマスターでありんす」


 当然ながら、カペラもまたこの事を話すつもりなど無い。

 能ある鷹は爪を隠す、大賢は愚なるが如し……それは仲間であろうと手の内は見せないこと。

 カペラは美心から教わったその言葉を徹底し守っていた。

 何故、自分の力を隠さなければならないのか。

 美心にとって、生死を操れるカペラの潜在能力は中二心をくすぐる設定だった。

 隠すことで、自身が陰に回ることで何となく、理由は付かないが兎に角格好良い!

 その自己満足的な考えをカペラに押し付けていた。

 カペラは深く美心にその理由を聞かず、どのような場面でも己の力を隠すことに徹底していたのだ。


 シリウス達がニック大佐らの強襲に遭っていた時も同じである。

 彼女は森の中で罠の準備をし、視界を悪くするため陰陽術「迷霧」を放つ。

 その後は壁上に戻り、ただただ蹂躙されていくシリウス達を見ていた。

 すべては美心の言葉が絶対であるため。

 シリウス達はヒーラーとしてのカペラしか知らない。

 その力もデネボラに遠く勝らない超低級のヒーラーとしてしか認知していない。

 ほぼモブキャラに近い存在にまで力を隠してカペラは現在に至る。


「さ、みんな。まずは片付けをしましょう」


「潜入調査の結果報告は明日でござるな」


「今晩は僕がご飯を作るよ」


「わちも手伝う。えへへ、今夜は久々の再開だから豪勢にしようよぉ」


「ああ、もちろんそのつもりだ。僕の計算通りに動いてくれよ」


 リゲルとベガは寺の中に子ども達を連れていき夕飯の準備を始める。

 シリウス達は寺から聞こえる仲間の楽しい声を聞きながら壁の修理を続けた。

 そして、夕食後……カペラから全員に話すことがあると言われ食堂に集まる。


「何が始まるのかしら?」


「ふふっ、カペラの力は僕どころか新メンバーにも遠く及ばない。僕の予想では今から彼女のステータスについて説明があるのだろうね」


「そうか……彼女は完璧なヒーラー。戦闘行為などまったく出来ない子だったものね」


「まぁ、ここで鍛えるつもりでマスターも送ったのでござろう?」


「ここは寄宿舎みたいに色んな物が充実してないもんね。鍛えるにはいい場所かも」


 コッコッコッコッ


 食堂に奇妙な形をした機械を持ち運ぶカペラ。

 そして、皆の前で軽くお辞儀をし口を開く。


「拙の名はカペラ。今日からここでお世話になるでありんす。よろしく……」


「ねぇねぇ、カペラちゃんはどんな武器を使うのぉ?」


 カペラを知らないアンセルや子ども達が興味津々に質問をしてくる。

 

「私達も5年以上会っていないし話してくれる? みんなも聞きたいことがたくさんあると思うから」


「で、では……えっと……得意な武器は……無い……でありんす」


 もちろん、これも能ある鷹は爪を隠すを実行しているだけである。

 本来のカペラはどの武器でも自分の手足のように操れる。

 森の中で兵士を100人以上殺ったのも彼女の実力である。

 だが、それを知られてはならない。

 ここでの回答をすぐに導き出したカペラは美心譲りの演技能力で皆を騙す。

 何も出来ないことを照れ隠すかのように身体をくねらせ、よりリアルに周囲に認識させる。


「ふふっ、訓練生時代からカペラはありとあらゆる武器の適正値がD判定だったからね。少しくらいは成長していると思っていたけれど……僕の計算が外れるなんて、さすが無能才女だ」


「では、どうやって悪魔と戦うですでございますか?」


「えっと……拙は基本、後方担当で……その……戦ったことはないでありんす」


 ざわざわざわ


「戦ったことないって……」


「そんなので悪魔とどうやって?」


「まさか、無能ってそういう?」


 日本人牧場出身者がこぞって話し始める。

 その時、皆を心配させたくないプロキオンが口を開いた。


「彼女はヒーラーでござるよ」


「ヒーラーってなぁに?」


「ロールって言ってね、その人の得意な役職に就いて戦闘に参加することなんだよ」


「例えば、シリウスやベガはアタッカー。ああ、アンセルもそうでござるな。拙者はタンクとアタッカーを担っているでござる」


「ふふっ、僕はサポーターだからね。後方から攻撃をするロールなんだ」


「まだ、その辺りはあやふやにしていたけれどヒーラーとしてカペラが来てくれたし、この機会にロールを与えてみるのも良いかも知れないわね」


「私はアタッカーをしたいです!」


「「私も!」」


「ふふっ、元気があって良いね。でも、さすがにアタッカーばかりは困るよ」


「あははは……」


 その後もカペラへの質問タイムが少しの間続く。

 雑談も進み皆が楽しい時間を過ごした。

 そして1時間後、カペラが持ってきた機械を起動させる。

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