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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
103/263

強襲にて(其の弐)

 ゴゴゴゴ……


「全隊、前へ進め!」


 ザッザッザッザッ


 鋼鉄に覆われたキャタピラで動く蒸気機関式戦車と共に、その背後には約200名ほどの軍服を来た兵士が煙の中から姿を現す。


「なんとも硬そうな絡繰りでござるな」


「この煙の臭い……まずい! 瘴気を放つ車だわ!」


「リゲルさん、奴らがすべて悪魔でございますですか!?」


「そ……そんな……有り得ない……」


 リゲルの表情は疑問に満ちた顔をし、左手で顎を支えながら考える。

 200名ほどの軍人、それは紛れもないエゲレス陸軍のものだったためだ。

 リゲルの頭の中で1つの線が浮かび上がり自慢気に皆に話す。


「皆はなぜ、ここに正規の軍人がやって来たのか? そう思っているだろう」


「なっ、彼奴ら正規軍人でござったか!?」


「悪魔では無いのでございますです!?」


「まぁ、聞いてくれ。僕の予想は当たっていた。以前、尼僧が言っていただろう? エゲレス軍と協力し賢者の石を作り出したと……ここの場所を知っていても可笑しくない。彼らは紛れもないエゲレス陸軍だ。真相を知っている僕達を消しに来たんだ……」


「エゲレスの正規軍……そんなの……単なる人間相手に戦えるわけがないじゃない!? 私達は人殺しをするためにここに居るのでは無い! 私達は悪魔を滅ぼすためだけにここに居るのよ!」


 シリウスの声を聞いて隊員達の士気が下がる。

 根尾や尼僧……悪魔と思って退治した者が実は人間であったことを彼女達は知らない。

 さらに殺意を持って襲い来る人間達を撃退するほどの勇気を持ち合わせているほど彼女達は心が成長していなかった。


「そういえば、ベガの姿をずっと見かけなんだが……何処に行ったでござる?」


「彼女なら今朝から森の中で狩りに……まさか!」


 蒸気機関式戦車の上に乗りあがる軍人の1人。

 彼だけは他の軍人達と違い服装が若干、異なっていた。

 

「我が名はニック・D・カーン。階級は大佐である。ここに居る日本人少女達に告げる。貴様達は不法入国者である。直ちにお縄につきなさい。何も悪いことはせんと誓おう。日本へと強制送還するだけである」


 隊員のみんながシリウスとリゲルを見る。

 日本へ帰れるならと望んでいるものも少なからず居ることは分かり切っていた。

 だが、2人は即断などできるはずがない。

 そもそも、強行突入してきた者が話すことすべてが真実だとは思えない。

 返答に迷うシリウスとリゲル。

 若干の時間を置いて再びニック大佐が声を高々と上げる。


「ここに1人の少女が居る。この子は愚かにも我らに立ち向かってきたため返り討ちにさせてもらった。まだ息はある。この子のようになりたくなければ、大人しくお縄につきなさい。これは警告である」


「「ベガ!」」


「ベガちゃん!」


 大いに痛めつけられたのか顔は腫れ身体の至る所に銃痕が見られた。


「大佐、その少女を見せてしまっては……彼女達が更に警戒してしまいますよ?」


「くくっ、警戒してもらわねば困る。この作戦はジャップストーンの実戦テストを兼ねているからな。それに日本人はすべて異様な術を使う化け物であり我らと同じ人間ではない。モンスター相手に話し合う余地を与えているだけまだ譲歩しているのだがね……」


「りょ、了解……」


 ニック大佐の横にいた軍人と耳元で何やら話している。

 時折、不敵な笑みを浮かべシリウス達と目が合う。

 彼女達は大切な仲間を傷つけられたことで士気が上がり戦闘準備をする。


「ベガを……その子を返してください!」


「大人しくお縄につけば返そう」


「その話は受け入れられません。そもそも、不法入国者の取り締まりなど正規軍のする仕事では無いでしょう!」


「ほう? では、我らに手を出すと?」


「その子を返していただけないのであれば……」


「くくっ……くーくっくっ! そうか、我らの要求に答えられないか! がーっはっはっはっ! 極上な回答だ。それでこそ、ジャップモンスター! 全隊、攻撃……」


 カチャ


 戦車の背後に身を潜めていた軍人達が横一列に並び手に持ったライフルをシリウス達に対し構える。


「来るわよっ! 皆、銃撃に備えて!」


「開始!」


 ダダダダダ……


「きゃぁぁぁ!」


「うわぁぁぁ!」


 陸軍の無慈悲な攻撃に悲鳴を上げる隊員達。

 シリウスは華麗に銃弾を躱し続けるだけで精一杯で援軍に回ることが出来ない。


「止め―――い!」


 銃撃が収まると、すぐにシリウスは周囲を確認する。


「えっ……」


 目に映るのは銃弾で蜂の巣にされた隊員達。

 リゲルやプロキオン、アンセルまでもがその身に何発かの銃弾を受けてしまっていた。

 さらに不思議なことに銃痕部分が燃え悲鳴を上げている隊員や、身体が凍り小刻みに震えている隊員、まるでかまいたちで断ち切られたかのように酷い切り傷の負傷者も居た。


「みんな……どうして……?」


 シリウスは理解が追いつかなかった。

 銃弾を躱すことなど星々の庭園メンバーであれば朝飯前である。

 プロキオンほどの腕前ならば全弾叩き落とすことすら可能だったであろう。

 だが、そのプロキオンでさえも銃撃をその身に受けていた。


「おやおや、流石はジャップモンスターですな? 何匹か生きているではないか」


「大佐! 対日本人4ミリ弾、残り1300! 貴重な銃弾なのですよ!」


 軍人の声に反応するかのように周辺に落ちている銃弾を探すシリウス。

 手に取ったその銃弾は赤い金属で覆われており普通の銃弾と異なっていることに気付く。


「ま、まさか……」


 ニチャア


 ニック大佐は不気味な笑みを浮かべシリウスに対し話しかける。


「貴様達、日本人しか使えぬ魔法……いや、陰陽術だったか? それを我々はついに克服した。この銃弾はランダムなエレメンタルを纏い、相手の身を貫くと同時に様々な付加攻撃を与える……くくっ……がーっはっはっ! 見たか、これが科学! 今まで何者でさえ抗えなかった日本人を圧倒する力の片鱗の結果が今の貴様達の姿なのだ!」

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