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テンプレ勇者にあこがれて  作者: 昼神誠
結社崩壊編Ⅰ
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サバイバルにて(其の弐)

「にゃふぅぅぅ……よく寝たにゃ。ムジカはまだ眠っているにゃ? 涎を垂らしてお馬鹿さん丸出しだにゃ」


 ムジカを起こすカノープス。

 目覚めの悪いカノープスと違い、ムジカはすぐに目を開けカノープスと挨拶を交わす。


「朝食を取ったら島民に会いに行くにゃ」


「ムジカも一緒に行くの」


「当然にゃ。ムジカはもう……にゃろと……は、離れたら駄目だにゃ」


「えっ? 今、なんて言ったの?」


「うるさいにゃ! 早く食べるにゃ!」


 楽しく朝食を取る2人。

 お馬鹿さんなムジカは熟睡したことにより昨晩の重大な出来事など完全に忘れ、カノープスに報告することはなかった。


「さ、船を貸してもらえないか聞きに行くにゃ」


「レッツゴーなの!」


 2人は森の中を歩き進み漁村のある方向へ向かう。

 そして、村に近付いた時だった。


(にゃにゃ? 煙臭い……魚を焼いている臭いでは無いにゃ。木が焼ける臭い? 違うにゃ、他のも混ざっているにゃ? それにこの鉄の生臭さ……嗅いだことのある臭いにゃ)


 鼻の利くカノープスは村が見える直前で空気中を漂う煙の臭いに気付く。

 つい最近、同じ臭いを感じたばかりであったため判別は簡単だった。


「血の臭いにゃ! それに家屋が燃える臭い! もしかして……」


 カノープスの言葉で忘れていた記憶が蘇るムジカ。

 

「ああっ、そうだったの! 昨日の夜中に村の方向が赤く輝いて悲鳴が聞こえていたの!」


 カノープスはその言葉を聞き呆れを通り越し怒りに変わる。


「どうして、すぐに言わなかったにゃ! どうみても悪魔教の襲撃があったにゃ!」


「だって、カノちゃん全然起きなかったの。ムジカは必死に起こそうとしたの! なのに、なのに、カノちゃんいつも起きてくれないの!」


 自分の目覚めが悪いことを自覚していないカノープスにとって、この言葉は単なる言い訳にしか聞こえなかった。

 だが、冷静にここでムジカと喧嘩をしている場合ではないことも頭の隅に置いていた彼女は、ムジカの頭の上で猫の姿に化け言葉を放つ。


「む、ムジカに乗った方が早いにゃ。村まで急いで行くにゃ。あと……少し言い過ぎたにゃ」


 目を合わさず照れ臭そうに話しかけるカノープス。

 その言葉だけで仲の良いムジカは気付く。


「了解したの!」


 猫に化けたカノープスを両腕で抱きしめ、木々の枝を飛び渡るムジカ。

 しばらくして漁村が見えた。

 予想通り村は焼き払われ死体はどれも男性ばかり。

 村の女性はすでに連れ去られた後なのだとカノープスは理解する。

 海岸には小型艇が2隻停泊していた。

 付近の茂みから顔を覗かせる2人。

 甲板で襲ってきた悪魔教信徒達14人が何かを探すように周囲を歩いている。


「カノちゃん、どうするの?」


「にゃろの猫姿はまだ見られていないにゃ。皆の注意をにゃろに集めるからムジカは背後から即座に制圧してくれにゃ。できるかにゃ?」


「14人は流石に多いの。半分くらいならいけそうなの」


 ムジカの言葉で再度、作戦を練るカノープス。

 悪魔教信徒が手に持っている武器は個人によって異なり、斧やなた、鎌などの刃物を持つ者が10人。

 残りの4人はドンドル銃やリボルバーなど拳銃を所持していた。


(刃物より拳銃を持った奴らが一番厄介だにゃ。まずはあの4人を取り押さえることを重視し、接近してくる相手を各個撃破……駄目にゃ。ムジカに2つ以上の指示を与えても出来ないのはすでにわかっているにゃ。困ったにゃ)


 ガサッ


「誰だ!」


 バァンバァンバァン


 物音のした茂みへ何の躊躇いもなく拳銃を放つ悪魔教信徒4人。

 その後、刃物を持った3人が茂みの周囲を探し始める。


「どうだ?」


「単なる野ウサギだ。奴らじゃない」


 カノープスはその会話だけで悪魔教信徒の動きを読む。

 星々の庭園に接近しての攻撃では敵わないと相手が想定していること、そのため相手に近付かせることなく倒す方法を信徒達なりに考えたのであろうと。

 拳銃を持つ悪魔信徒は小型艇の近くから一向に動こうとしないことからも明らかであった。

 

「ムジカ、作戦を変えるにゃ。にゃろが猫の姿で奴らの注意を引き付けても拳銃で撃たれる可能性が高いにゃ。ムジカはそこの磯場から水中を泳ぎ拳銃を持った4人を背後から攻撃……できるかにゃ?」


「え、ええっと……拳銃をもった海賊を殺ればいいの? 4人だけならすぐに終わるの」


「水中からにゃ!」


「水中から……水中から……うん、分かったの」


 悪魔教信徒らに見つからないよう音を立てずに海中へ潜るムジカ。

 それを見守った後、カノープスのすべきことは1つ。

 森の方向で音を立て少しでも悪魔教信徒の注意を引き付けることである。


 ガサッ

 バァンバァンバァン


 刃物を持った信徒が物音のした方向へ近付く。


「誰も居ない」


 ガサッ

 バァンバァンバァン


「こっちも居ない」


 同じようなことを何度も起こすカノープス。

 

(ムジカ、早くするにゃ。この方法で誤魔化せるのにも数に限りがあるにゃ)


「なんか、さっきからおかしくないか?」


「ああ、音はするども姿は見えず……怪しいね?」


「森に火を放つ! お前ら、火を用意しろ!」


 その言葉を聞きカノープスは我が目を疑った。

 

(にゃにゃ!? 不審に思っただけでそこまでするのかにゃ! やっぱり、悪魔教は異常者ばかりの集まりだにゃ!)


 カノープスは火に巻き込まれないよう村の外れから海岸へ出る。

 距離はそれなりにあり悪魔教信徒に気付かれることはなかった。

 だが、同時にムジカからも離れたことで万が一の時、助けに入ることも出来ない。


「ムジカ、いくらなんでも遅すぎるにゃ。海中を泳ぎ進み奴らの背後を取って攻撃する簡単なお仕事のはずにゃ……にゃにゃ?」


 カノープスは気付いてしまった。

 ムジカは1つの行動しか覚えられないお馬鹿さんであることを。

 そして、先程の自分の言葉を思い出す。


「水中を泳ぎ拳銃を持った4人を背後から攻撃……やってしまったにゃぁぁぁ!」


 そう、この言葉にはすでに2つの動作が入っている。

 水中を泳ぐことと、4人を攻撃するこ。

 特に強調した水中を移動することをカノープスが強調しムジカに伝えたことでムジカの脳内では楽しく水中を泳いでいなさいと捉えられたのである。


(あはは―――、楽しいの。綺麗なお魚さんがいっぱいいるの)

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