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悪役令息の秘密の嗜み~今日も密かに悪役令嬢を愛でています~  作者: 夕綾 るか
第2章

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82. 計略の全貌

 


 ヴェガードはステラがいた七日間、一日に朝昼晩と最低三回は訪れた。多い時には、五回。


 ステラの側で食事を摂る。

 そして、彼女に魔力を流し、浄化魔法をかけて、帰っていく。


(その間、何が出来たというの? 王城で宮廷法官の仕事もしていたはず……)


 ステラがアステリア家に戻ってしまった。ずっと側にいてもらうつもりだったのに。


(ヴェガードは、どこまで調べたのか? どこまで知っている?)


 こちらが七日間で出来たこと。

 それは、兄ラサラスと共に、メリッサをシアンに近づけること。そして、我がグラフィアス家に負い目のあるプレアデス家当主シェアトに、メリッサとシアンの婚約を打診すること。


 どちらにしてもシェアトはアステリア家に対してシアンの釣書を一度、取り下げているのだ。再度、プレアデスから打診することは、考えにくい。そのように仕向ければ、案外、すんなりと前向きに検討された。


 このままシェアトが、シアンとメリッサの婚約を進めてしまえば。シアンさえいなければ、自分が一番手だ。


 ステラの傷付けられた心をゆっくりと、そして、一番近くで癒していければいい。ステラがシアンをどんなに想っていても構わない。ずっと彼女の側にいるのが自分であれば。


 しかし、あの日。ヴェガードに言われた。


『ステラの幸せを、当たり前だと言った。その君がしたことは――何かな?』


『ステラの幸せより君の幸せを優先させただろう? ――違うかい? メラク』


 背筋が凍った。

 恐怖で動けなかった。あの怒りに満ちた瞳。逃げ出したいと思うのに、それさえも許されない。

 改めて自分が敵に回してはいけない人を怒らせたのだと気が付いた。


 ステラがアステリア家に帰った後、父の執務室に呼ばれた。ヴェガードとあった出来事は、ほぼ知られていた。

 父は直接、プレアデスと関わりたくない。だから子どもたちにやらせる。それでも、気にはしているのだ。それが、父なりの愛し方なのだろう。

 ――だいぶ、歪んではいるが。


 母に対してもそうだった。歪んだ愛し方しか出来ない。あんなに愛しているのに。いつも、父は苦しそうだった。素直な愛を伝えられないのが、とても苦しそうだった。


 何があったのか、詳しくは知らない。

 兄ラサラスより上に、姉がいたということ。その姉がプレアデスの敷地内で死んだことが原因だ、と聞かされているが――それだけではない気がしていた。


 僕ら双子の魔力に異変が起きているのはそのせいだとも聞いている。僕がアクイラから魔力を分けて貰わないと保てない状態である、と。


 父は知らない。本当のことを。


 僕がアクイラに魔力をもらっているのではない。僕の増え過ぎる魔力を安定させるために、僕がアクイラに魔力を流しているのだ。このことは兄も知らない。アクイラと僕だけの秘密だ。


 しかし、アクイラが王家に嫁げば、そう簡単に、接触出来なくなる。僕らの問題は、そこにあった。魔力を流せる相手を見つけなければならない。問題なく僕の魔力を受け入れられる相手が、妻になってくれたなら。




 あの王城でのガーデンパーティーの日。


 アクイラと入れ替わり、アリサ嬢の魅了魔法にあてられ、対抗して増幅する自身の魔力で具合が悪くなった時。

 僕らの入れ替わりを見破り、増えた魔力をそっと流しても気付かないほど相性がいい人を見つけた。


 ――それが、ステラだった。


 彼女に魔力を流し込んで、具合が落ち着いた。

 双子の片割れであるアクイラよりも、ずっと気分が落ち着き、安定していた。今までに感じたことのない、高揚感だった。


 手放すことなど、出来るはずがない。

 一度、味わってしまったあの高揚感は忘れることの出来ない甘美な経験だった。どうしても手に入れたい。


 もうそれしか、考えられなかった。



 ◇◇◇◇



 ヴェガードはシアンから聞いていた。

 学園で執拗にメリッサを仕掛けてくるラサラスと、そして、父シェアトからトゥレイス家に婚約の打診を考えていると伝えられたことを。


 ステラの婚約者を決める上で、相手を調査しなければならない。いずれは、グラフィアス家やプレアデス家も詳しく調査するつもりだった。


 まさか、こんなに早く、短期間ですることになるとは。そして、ステラの婚約とは関係のないことで調査するとは思わなかった。


 両家の確執は知っている。

 幼かったが、彼女が――ルフィーナが亡くなった時、自分もその場にいたのだから。


 ルフィーナは可愛らしい少女だった。皆から愛されていた。

 僕ら全員がきっと彼女を好きだった。誰が彼女の婚約者になるか、競うくらいに。


 確執は、もっと根深かったのだ。そして、悲しい勘違いであった。


『売られた喧嘩は買おうと思うよ?』


 グラフィアス家当主宛に手紙を送った。





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