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悪役令息の秘密の嗜み~今日も密かに悪役令嬢を愛でています~  作者: 夕綾 るか
第2章

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67. 彼女の行方

 

 ◇◇◇◇



 学園へ向かう馬車の中。

 お互いにずっと無言で、静かだった。


 セイラのヴェガードへの『想い』に気付いてから『時間』が解決してくれると考えられるようになった。いつかセイラがその『想い』を自分に向けてくれたら。――どうすれば、自分に向けられるのか。そんなことをぼんやりと考えていた。


 不意にセイラが視線を向けた。それを感じ取り、彼女に視線を合わせる。


「セイラは、主人公(ヒロイン)になればよかったのにな」

「――え?」


 気が付けば、そんな言葉が口をついて出ていた。彼女は不思議そうに首を傾げ、俺をじっと見た。


「そうであればヴェガードを選択出来ただろう?」

「はい?」


 まさか自分がこれほどまでに、気にしてしまっているとは。それは……きっとセイラだからだろう。この感情はセイラに対してしか起こらない。


 黒い血液が胸の奥に渦巻く。


「ヴェガードが一番よかったのだろう?」

「え?」

「そう言っていただろ? 前にもヴェガードを恋愛対象として見てしまいそうだと言っていた」

「ああ……」


 納得したようにセイラは肯定した。やはり、彼女はヴェガードを恋愛対象として、想っているということか。


「ぷっ」


 俯き加減だった顔を上げると、頬が緩んだセイラの顔があった。その顔に俺は目を見張る。その様子にセイラは慌てて口を結んだ。


(何故、セイラは笑ったのだろう?)


 わけもわからず首を傾げる俺に、セイラは視線を窓の外に向けた。


 風景が流れていく。晴れ渡った青空には、所々に白い雲が点々と浮かんでいる。


 しばらく静かでゆったりした時間が流れる。このまま、ずっとこうしていられたらいいのに。

 窓枠に肘をかけ、頬杖をついてセイラを眺める。


 ずっと、愛でていたい。

 これは俺の密かな嗜みだ。セイラとの関係が今後どうなろうとも、それはこれからも変わらない。


 「――は?」


 突然、セイラが目の前から姿を消した。何の前触れもなく。――俺の目の前で。


(――何なんだ? 一体、何が起こっている?)


 学園に着くと、エラトスもエリスもまだ来ていなかった。とても嫌な予感がする。

 俺は早退届を提出すると、転移魔法で王城の近くまで移動した。ほぼ間違いなく、セイラはエリス王女の――ステラの所へ転移したはずだ。


 近衛騎士の兄アトラスを探す。

 兄が側にいれば、城内は動きやすい。兄にザニアかヴェガードの元に導いてもらえばよい。


 近くの近衛騎士に声をかければ、すぐに兄が駆けつけてきた。普段なら呼び出すことのない弟が兄を名指し、訪ねて来たことに異常さを感じ取ったのだろう。

 しかも、今は学園に行っているはずの時間帯だ。


「どうした? シアン。何があった?」

「ステラが目の前で消えた」

「はぁ? 何だ、それ?」

「転移させられた。多分、王城(ここ)にいる」

「何? 何故?」


 城内を足早に歩きながら、今までの話を簡単に説明する。途中、質問を挟みながら、基本的には全て聞いてくれた。


「そういうことか……わかった。それでザニアなら第一王子エウロス殿下のところだよ。――ここだ」


 兄が扉前の騎士に挨拶する。コンコンと、ノックすると中から用件を聞かれる。


「第一近衛騎士団アトラス・プレアデスでごさいます。弟シアン・プレアデスから、ザニア殿に重要なお話がございます。いらっしゃいますでしょうか」


 ガチャリと扉が開き、ザニアが中から出てくる。


「何かあったのか、シアン」

「セイラが消えた」

「何?」

「転移させられた。多分、エリス王女殿下の元に」

「案内する。アトラスは配置に戻れ」

「承知」


 足早にザニアが歩き出す。それについていく。

 エリス王女の私室の前まで来ると扉は開いたままだったが中の様子は聞こえてこない。恐らく、音声遮断魔法がかけられている。


 俺とザニアは上がった息を整える間も無く、扉の中へと入った。








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