61. 聖女の魔法
翌日。
アステリア家にはシアン、ヴェガード、ザニア、そして二人が連れてきたアリサの姿があった。
「セイラさん! お久しぶりです」
「アリサさん、お元気でしたか?」
「はい! でも、また大変なことになってますね」
顔を歪めるアリサにセイラは苦笑いする。近くのソファに腰掛けると続けて話した。
「今、この世界では物語と違っているところが三つあります。あの……セイラさんは、どこまでゲームやりました?」
「え? どこまでって……?」
お互いに目を瞬かせると、アリサはビックリしたように言った。
「も、もしかして……セイラさん、続編を知らないんですか!?」
「え? ええーっ! 続編?!」
確かにそんな計画があると話題にはなっていたがセイラが生きていた時に続編はなかったはずだ。
アリサは『はぁ』と天井を見上げた。
「セイラさん、あまりゲームにはまってなかったんですね?」
セイラは再度、苦笑いすると『まぁ……』と呟いた。アリサは眉尻を下げると、
「ごめんなさい。私のせいだわ」
と呟いた。セイラが首を傾げる。
「きっと私が隠しルートに行ったから、続編が解放されてしまったんだわ」
「そうなの?」
「ええ、多分。まず、この世界と続編の世界の違いは三つ。一つ目は、悪役令嬢ステラ・アステリアが処刑されずに生きていること」
指を一つ立てるとシアンとヴェガードがアリサを睨み付ける。アリサがビクッと肩を震わせる。
「そっ、そういう物語だったのですよ! そんなに怖い顔で睨まないでください!」
セイラが二人を睨むと、ヴェガードは『わかったよ……話を続けて?』と肩を竦めた。シアンは表情を変えずに、ずっとアリサを睨んでいた。
「二つ目は、エリス王女が生きていること」
これにはザニアがピクリと反応する。それに気が付いたアリサとセイラは大きく息を吐いた。
「そして、最後に……私が聖女として、今、ここにいること」
全員の視線がアリサに集まる。アリサはシアンに視線を向けた。
「シアン様は――」
「君にその呼び方を――」
「許したことはないんでしたよね、プレアデス様」
「シアン……」
アリサがはぁとため息を吐くと、セイラがシアンをギロリと睨む。その様子にヴェガードとザニアはふっと笑った。
「プレアデス様は、時を司る神クロノス様から何か聞いていますか?」
「君の光魔法が必要だということは聞いた」
「わかりました。では皆さんと別れた後、私に何があったのかを簡単に説明しますね」
冥府の神ハデスと共に光の中に消えたアリサは、時を司る神クロノスによって、西にある古びた教会で聖女として光魔法を磨くように伝えられた。
本来、彼女にはアフロディーテの守護があったはずなのだ。彼女の力を受け入れるために、充分な力を身につける必要があった。
一方、ハデスはアリサの魂に守護を与えていたため、アリサの魂がアリサの身体を受け入れた時点で星花の力によって在るべき場所に戻ったのだ。あの『伝説』の通りに。迎えに来たアリサと恋に落ちるために、神ではなく、人となった。
「今まで少しではありますが、光魔法を磨いてきました。多分、レイラ様の魂が浄化されて、闇も消えたので、今までよりもずっと光魔法が身に付きやすくなったのです」
アリサはにっこりと笑った。闇を纏わない、心からの可愛らしい笑顔だった。
その笑顔もすぐに消える。
「でも今は急がないと最悪な結果になってしまうというのは皆さん、おわかりですよね?」
アリサの言葉に、セイラとシアンが顔を歪める。その様子にヴェガードとザニアは息を呑んだ。
「悪役令嬢ステラ・アステリアの最期は処刑」
セイラが呟いた。
その言葉にヴェガードが、くわっと目を見開く。
「まさか……悪魔を召喚するというのか?」
アリサとセイラは静かに頷いた。
「多分、ステラの身体を取り戻そうと願う。そうよね? アリサさん」
「ええ」
「そんな……」
ヴェガードは信じられないと首を振る。
「そうなったら……セイラの魂は? エリス王女の身体は? どうなる?」
「エリス王女の身体は亡くなり、私の魂は……消えてなくなる、でしょうね」
シアンは俯き、ヴェガードは肩を震わす。ザニアは未だに話を理解することができず、呆然としていた。
「救う方法は、私の光魔法です」
アリサが口を開いた。
「プレアデス様は、クロノス様から聞いておりますよね?」
「……ああ。君の光魔法でステラの魂を浄化すれば大地の神クロノスが守護を与えられる。その上で、ステラがエリス王女の記憶を受け入れることができれば、彼女はエリス王女として生きられる」
セイラは眉間に皺を寄せた。
あの時、クロノスはシアンとこの話をしていたのだと気が付いた。多分、他にも話しているだろうということも。
シアンの言葉に大きく頷いたアリサは、
「そうです―――ただ!」
手を腰に当てると、ピシッと指を立てた。
「彼女はあの『悪役令嬢ステラ・アステリア』なのですよ!」
「「「は?」」」
三人は何を言っているのかわからないというように首を傾ける。セイラだけは意味がわかり、はぁと短く息を吐いた。
「魂が浄化されたとしても、どうやってエリス王女の記憶を受け入れるように仕向けるかが問題だ、ということですわ」
補足すると三人は納得したように頷いた。
「そこは、ステラの兄である僕に任せてもらおうかな?」
そういって、ヴェガードが不敵に口角を上げた。セイラはその笑顔にぶるりと身体を震わせた。
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