表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令息の秘密の嗜み~今日も密かに悪役令嬢を愛でています~  作者: 夕綾 るか
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/146

54. 隠密と王女

 

 ◇◇◇◇



 王家とトゥレイス家には他の公爵家とまた違った関係があった。

 それは王家の隠密である、ということだ。


 物心つく頃から()()()()()()を受けてきた。

 他の貴族が決して受けないであろう、教育を。


 血の滲む様な訓練を受けた。

 泣いている暇さえ、与えられなかった。


 能力を隠しながら同じ歳の第一王子エウロス殿下よりも秀でていなければならなかった。

 何より、それを求められていた。




 ザニアが5歳になった年。

 護る者が出来た。王家に王女が生まれたのだ。


 最初に与えられた任務は、エリス王女を護ることであった。彼女を護るため、ザニアはさらに訓練や勉学に力を入れた。


 彼女自身もザニアといることが当たり前になっていた。彼女にとって二人の兄よりも近いザニアが、いつの間にか大切な存在になった。


 それはザニアにとっても同じだった。

 しかし、王女の気持ちを受け入れることは許されなかった。想いを伝え合えば、もう側にいることは出来なくなる。幼いながらに理解していた。


 ザニアが学園に通い始め、王女から離れる機会が増えた。

 その頃から王女は病弱になり、体調を崩すことが多くなっていた。それはもちろん外部に漏れることはなく、学園に通うザニアにさえ、伝えられることはなかった。


 彼女が意識不明になったのはザニアが学園を卒業した頃だった。これから本格的に隠密としての仕事を始め、エリス王女の側にいて、彼女を護ることが出来ると思っていた矢先の出来事だった。


 ザニアの世界は色を失った。

 魔法の力だけで生き長らえている、眠ったままの愛しい人。彼女が目覚めることだけを願いながら、日々を過ごす。彼は毎日、彼女に会いに行った。




 あの日。

 あの『伝説』の出来事があったあの日の翌朝。

 王城が騒がしかった。彼女に何かあったのかもしれない。ただ――嫌な空気ではなかった。


 彼女の部屋に近付く。入室の規制がされていた。それはザニアも例外ではなかった。

 彼女は目覚めたというのに、ザニアに会うことを拒否した。


 彼には理解出来なかった。

 何故、彼女が自分を避けるのか。


 それを理解したのは彼女が学園に通い始めてからのことだった。彼女の婚約者選定が始まったのだ。


(――そういうことか)


 ザニアは理解した。

 会ってしまったら、選定に支障をきたす。もしかしたら、彼女なりの配慮だったのだと。そう考えていた。




 そんな中、王家との結び付きに難色を示していたトゥレイス家当主が、王家から来たエラトス殿下の婚約者に妹メリッサを、という打診を前向きに受け始めた。


 ザニアには、アステリア家への婚約者候補として釣書を送ったと伝えられた。それからすぐにヴェガードから呼び出しがかかる。


(間違いなく、ステラへの釣書の件だろうな)


 学園で学友となり、何でも話せる親友となった。彼には苦しい時を支えて貰った。

 今もし彼が苦しい立場であるなら、何よりも助けたいと思っていた。

 ただ彼の方がザニアの置かれた状況も感情も本人よりずっと理解していた。


(まったく……彼には敵わない)


 学園に入って、唯一、敵わない相手が出来た。

 今まで敵わない相手がいなかったザニアにとってヴェガードは唯一無二の存在となった。




『ザニア』


 大地の女神レアがふわりと姿を現す。


『おかしなことが起こっているの』

「何?」

『クロノスの気配を感じるのよ』

「え? でも彼は元の場所に戻ったのだろう?」

『それが……お城から感じるの』

「?」

『ザニアが職務で王城に行くでしょう? その時にとても強く感じるのよ』

「え……? どういうこと?」

『うーん。私にもそこがわからないのよ……直接、会えるって感じでもないの。まるで何かに包まれているように、ぼんやりとしているの』

「今度、登城した時に気配を追ってみよう」

『ええ。そうして欲しいわ』


 レアはふわりと姿を消した。

 ――この胸のざわめきは、何だろう?


 ザニアは締め付けられる胸をぎゅっと押さえた。



 ~・~・~



 今日は王城での職務のため、登城していた。


 レアがザニアに『近くにクロノスがいる』と耳元で囁いた。


『あの子の中よ?』


 レアが指した人物に、ザニアは目を見張った。


(召喚の儀式は三年で行うはず。彼女は――まだ、一年だ。儀式はしていない。なのに……何故?)


 様子を見ていると、簡単な魔法を遣っていた。

 その姿に違和感を覚えた。


 彼女は魔法具を使わないで魔法を発動することは()()()()()()なのだ。


(これは一体、どういうことだ?)


 あの時、『在るべき所』に戻ったとしたら。

 それが、『彼女の所』だったとしたら。


 考えられるのは、ただ一つ。

 彼女の中にルーカスの魂がある、ということだ。


 彼女は二年前に倒れた時から最近までずっと意識がなかった。魔法の力で生き長らえていただけだ。


 それが突然、目覚めたのだ。

 それもあの出来事があった直後に。


 そう考えれば、辻褄が合う。ただ――何故、彼女の中にルーカスの魂があるのか?


 それだけは理解出来ない。


(ルーカスの魂が戻ったから、目覚めたのか?)


 ルーカスが関係しているとすれば、アステリア家に聞くしかない。


(ヴェガ……一体、何が起こっている……?)


 なるべく急ぎでヴェガードに会う必要があると、ザニアは感じていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ